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蟲ふるう夜に×GOMESS 人を救うために歌うのか?償いのためか?

蟲ふるう夜に×GOMESS 人を救うために歌うのか?償いのためか?

インタビュー・テキスト
武田俊
撮影:田中一人

2007年の結成以来、生きることの悲しみと喜びをまるごと引き連れていくような歌詞世界と、特定のジャンルに依存しないキャッチーな楽曲に注目が集まっているバンド、蟲ふるう夜に。ギターの慎乃介が、昨年末に難病であるフィッシャー症候群に罹患した困難を乗り越え、4月にリリースしたミニアルバム『スターシーカー』は、様々な試みを行いながらもバンドの原点に立ち返るような仕上がりとなっている。同作の収録曲“同じ空を見上げてた”には、自閉症を抱えながらポエトリーリーディングとラップを織り交ぜ活動しているラッパー・GOMESSが参加。実弟がひきこもってしまった経験のある、蟲ふるう夜にのボーカル・蟻との感性の響きあいから生まれた交流が、バンドにとっても転機となる新たな楽曲を生み出した。

本人の意志に関係なく与えられてしまった環境や条件に対して、彼らの感性はどう磨かれていったのか。そしてそんな二人は音楽を通して、今、世界をどのように見ているのか。ただの「リスペクトしあう関係」を越え、「仲間」となった二人に話を聞いた。

蟲ふるう夜には、ポエトリーリーディングをツールとして活かすことで、ロックバンドがロックというジャンルを超えている感覚があったんですよ。(GOMESS)

―そもそも、お二人はどういう経緯で出会ったんですか?

GOMESS:2014年10月に、ある会社のパーティーでフリースタイルをやらせてもらったんですけど、その時に蟻さんが声をかけてくれたんです。

:すごく熱のこもったフリースタイルがおもしろくて、その場で、年末の私たちの結成7周年イベント『MUSHIFEST』に出てもらえないかお願いしたんです。

GOMESS:実はそれまで蟲ふるう夜にのことは知らなくて、オファー後に“青の中の一つ”を聴いたんですが、いまだにずっとあの曲を聴いてます。『MUSHIFEST』で共演して、「ああ、この人たちいいな」って再実感して、いつか一緒に曲やりたいなって思ってたんです。

―具体的にはどういう部分に「いいな」と感じたんですか?

GOMESS:ポエトリーリーディングをとても上手く取り入れている部分。ポエトリーをバンドでやることはあまりないし、やったとしても基本的に痛い仕上がりになってることが多いんですよね。エモさを狙ったあげく、ただ感情の暴走になってしまうというか。蟲ふるう夜には、そこをいいバランスでやっていて驚きました。演奏があって、ポエトリーがあって、歌があって、全てが上手く溶けこんでいて特定のジャンルに寄っていない。

:いい意味でジャンルが曖昧だとはよく言われますね。「どこの棚に置けばいいんだよ」って、タワレコとかの店員さんは困ってます(笑)。

GOMESS:ポエトリーをツールとして活かすことで、ロックバンドがロックというジャンルを超えている感覚があったんですよ。例えば七尾旅人さんとか、ポップス寄りのアーティストでポエトリーをとても効果的に使っている人は何人かいると思います。でも、バンドだとそこまで成功している人は少なくって。

:自覚的にやっているわけではないんです。「ポエトリーリーディング」って言葉は、GOMESSくんに教えてもらったくらいですから(笑)。私、昔から音楽は歌詞しか聴いてないんですよ。GOMESSくんの音楽が好きなのも、やっぱりリリックの部分。最初に彼のフリースタイルを見たあとに、YouTubeで“人間失格”のPVを見て、「こんな風に歌詞が書ける人って周りにいない」って思ったんですよね。

―歌詞を書く時、切実な言葉だとしても痛々しくなりがちなことがあると思います。それを人に届く形にするために、意識していることはありますか?

:他の人もやってることだとは思いますけど、まず一晩寝かします。人間って毎日新しく生まれ変わってるから、明日の自分が昨日の自分の言葉を冷静に読み返してくれる。私の書く歌詞の中には痛々しい部分がいっぱいあると思うんですけど、冷静に見たら、それがいい痛さかどうかがわかるんですよね。

GOMESS:僕の場合は1度も書き直さないです。書いたらその場でレコーディングして完成させるから、次の日に悔やむこともあります。でもそれはその日にベストを尽くせなかった自分が悪いから、次の日にまた別の曲で100点をとれる歌詞を作ろうって思う。蟻さんが言った、人間は毎日新しく生まれ変わるっていうのはすごくわかります。僕の場合、昨日の自分は他人だから、そいつの面倒は見ない。似てるけど、違う部分ですね。

左から:蟻、GOMESS
左から:蟻、GOMESS

GOMESSくんが調子を落としてた時に助けになったのが彼のお姉さんだったという話を聞いて、すごく理解ができて。私の場合は、弟がひきこもっていて、私がなんとかしようとしてたんです。(蟻)

―歌詞の作り方以外にも、それぞれの家庭環境についても共感できる部分があったと聞いています。

:GOMESSくんが調子を落としてた時に助けになったのが彼のお姉さんだったという話を聞いて、なんだかすごく理解ができて。私の場合は、弟がひきこもっていて、私がなんとかしようとしてたんです。「北風と太陽」に例えると、私は穏やかに包む太陽でいたいなと思ってたんですけど、無理で北風になっちゃった(苦笑)。いてもたってもいられなくて、ひきこもっていた弟を無理やり東京に呼び寄せて一緒に暮らしてみたんですよ。そうしたら彼は段々と変わっていった。その経験をいつか歌にしたいと感じていて、今回GOMESSくんと共演できたことで実現できました。

GOMESS:共感っちゃ共感ですけど、立場が逆だから面白いですよね。僕のお姉ちゃんは完全に「太陽」タイプで、家族全員にとってそうなんです。そもそもうちは、家族同士仲はよくて相談とかするんですけど、本当に大事な部分は全員誰にも上手く言えない感じがあって。仲がいいはずなのに、リビングに沈んだ空気が流れてたりしたんです。でもお姉ちゃんは愛情深い人で、家がどんよりしてもいつも持ち直せたのは、彼女が発する空気のおかげだった。お姉ちゃんが笑ってたら平和、みたいな感じだったんです。

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イベント情報

『蟲ふるう夜に ワンマンLIVE 2015 “スターシーカー”』

2015年6月4日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
料金:3,000円(ドリンク別)

リリース情報

蟲ふるう夜に 『スターシーカー』(CD)
蟲ふるう夜に
『スターシーカー』(CD)

2015年4月1日(水)発売
価格:1,000円(税込)
SFCD-10006

1. 君という光、僕の走る道
2. スターシーカー
3. それでも鳴らす
4. 二十歳の朝
5. 同じ空を見上げてた featuring GOMESS

GOMESS 『し』(CD)
GOMESS
『し』(CD)

2015年3月18日(水)発売
価格:2,000円(税込)
LOW HIGH WHO? PRODUCTION / LHWCD-0029

1. LIFE
2. 笑わないで with いな(QQIQ)
3. 海月半角 with 木村仁美
4. keep with 姫乃たま
5. 盲目の秋
6. THE MOON
7. Alien
8. カーテンのない部屋
9. 終焉
10. ゆうかい with BOKUGO
11. し
12. 時間
13. 箱庭

プロフィール

蟲ふるう夜に(むしふるうよるに)

2007年、蟻(当時はBa,Vo)、慎乃介、郁己で結成。2012年に春輝(ex. THE冠)が加入。2012年、「ご主人が動かない もう5日になります」という歌い出しで、飼い主に先立たれた犬の気持ちを歌った“犬”が話題に。2013年にはBiSや中川翔子で知られる松隈ケンタをサウンドプロデューサーに迎えたアルバム『蟲の声』をレンタル&配信限定でリリース。各種音楽系メディアで取り上げられ、注目を集め始める。2014年6月4日、蟲の日にミニAL『わたしが愛すべきわたしへ』をリリース。同年年末にGt.慎乃介が難病・フィッシャー症候群に罹患し一時休養。バンドは困難の中、活動を止めないことで希望を見いだし、2015年4月1日に最新ミニアルバム『スターシーカー』をリリース。夜の光=星を希望に見立て、希望を探す人たちへの5曲を収録。タイトル曲「スターシーカー」のMVは公開12日で10万回再生を突破。6月4日の蟲の日には、2年ぶりとなるワンマンLIVEを渋谷CLUB QUATTROで開催する。

GOMESS(ごめす)

1994年生まれ、静岡出身。『BAZOOKA!!! 高校生ラップ選手権第2回大会』に出場し準優勝を勝ち取る。以降、自閉症と共に生きるラッパーとして注目され、YouTubeにアップされた楽曲“人間失格”で脚光を浴びる。2014年、1stアルバム『あい』を発表。フリースタイルで生み出す独自の作詞方法や、彼が手にする題材や手法は聞く人の心を捕らえていく。また自身のドキュメンタリー映画『遊びのあと』(太田達成監督)やNHK番組に出演、アイドルのミスiDに作詞提供、中原中也『盲目の秋』を朗読カバーするなどヒップホップの土壌を超えて幅広く活動している。2015年3月18日、最新アルバム『し』をリリース。

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