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「渋谷系」に入りたかった?小島麻由美のウィットに富んだ音楽愛

「渋谷系」に入りたかった?小島麻由美のウィットに富んだ音楽愛

小島麻由美『Cover Songs』
インタビュー・テキスト
土佐有明
撮影:永峰拓也

批評家・佐々木敦の著作『ニッポンの音楽』でも指摘されていたことだが、はっぴいえんどから渋谷系、小室哲哉、中田ヤスタカに至るまで、日本のポップ音楽史を先導してきたのは、リスナー体質のミュージシャンだった。膨大で多様な聴取体験=インプットを武器に、彼らは元ネタを独自に解釈して質の高い音楽を作り上げてきたわけだ。しかし、知識がなくともいいと思った音楽を感覚で拾い上げて、直感的に良質な音楽を作っているミュージシャンもいる。例えば、その代表格として小島麻由美を挙げることもできるのではないか。インタビューを終えて真っ先に思ったのは、そんなことだった。

今年デビュー20周年を迎えた彼女の最新作は、カバー曲を集めた『Cover Songs』だが、自分の曲でも人の曲でも、分け隔てなく楽しんで歌える彼女のスタンスがここで顕在化している。越路吹雪の名唱でお馴染みの“ろくでなし”で幕を開け、スピッツ“夏の魔物”、松田聖子“SWEET MEMORIES”などを収録。アメリカのオールディーズからイタリア歌曲、イスラエル民謡のカバーも含み、ワールドワイドな視点を感じさせるところも面白い。さらには、未発表だった尾崎豊の“I LOVE YOU”と“シェリー”が収められているのも特筆すべきだろう。

リスナー体質ではないけれど、音楽への愛情や情熱は人一倍強い。音楽が好きで、レコーディングが好きで、歌うのが好きでたまらないから、20年続けることができた。小島麻由美はそんな「音楽愛」の人ではないかと思う。

おじいちゃんがぼんやりテレビを見て、チャンネルを回しているような感覚で音楽を聴いてます。

―改めてお伺いしますが、小島さんの音楽的なルーツってどの辺なんですか?

小島:影響が大きいのは1950年代くらいのオールディーズですね。「オールディーズ100選」みたいなCDで、ポール・アンカ(1941年生まれ、カナダ出身のシンガーソングライター)とか、ベタなものを聴いてました。でも、最近はそれだけだと物足りなくってきて、もうちょっと今の感覚で膨らませてあるものが好きです。エルヴィス・プレスリーが大好きだったんですけど、今聴いても昔みたいにシビれない。最近だとAlabama ShakesとかALLAH-LASがいいですね。やっぱりちょっとレトロフレイバーが混ざっているものが好み。あと、テクノロジーを使いすぎているものは苦手ですね。生っぽいものがいい。

―確かに小島さんの音楽にはビンデージでアナログな質感がありますよね。今回、尾崎豊の“I LOVE YOU”と“シェリー”のカバーが収録されてますが、原曲はハイファイでつるっとした音質だったのが、小島さんがやるとざらついた感触になっている。

小島:そうですね、やっぱりそういうものが好きなんです。でも、あれはアレンジしすぎて、尾崎豊ファンが怒るんじゃないかって心配してます(笑)。“シェリー”はおもちゃっぽい感じだし、“I LOVE YOU”はちょっとホラー調でしょう? アレンジャーの佐藤(清喜)さんに「Portishead風にしてくれ」って発注をしたら、面白く遊んでくれたんです。

小島麻由美"
小島麻由美

―尾崎豊はお好きだったんですか?

小島:大好きでしたよ。結構意外って言われますけど、リアルタイムで聴いていた10代の頃のアイドルですね。亡くなった時もショックだったし。“I LOVE YOU”と“シェリー”は、尾崎トリビュート盤のために録音したんですけど、その発売が中止になってしまって、未発表のままになっていたんですよ。

―当時尾崎豊ってカリスマとして神格化されているところもありましたけど、小島さんもそういうのめりこみ方をされていましたか?

小島:当時は子供だったから聴き方が浅かったです。「この曲とあの曲が好き」って騒いでる感じで、全然掘り下げてはいないんですよ。デビューするまでは、尾崎に限らず、ヒットチャートに入っているような流行りの音楽を結構聴いてました。レベッカもドリカムも好きだったし、ブルーハーツも聴いていたし。

―僕が小島さんの音楽を最初に聴いた時に思い出したのは、(フェデリコ・フェリーニ監督の映画音楽などで知られる)ニーノ・ロータとか、(『三文オペラ』で有名な)クルト・ワイルだったんですよ。その辺は聴いてましたか?

小島:聴いていたと思うんですけど、アルファベットの名前をあんまり覚えてないんですよね(笑)。

―体系立てて特定のジャンルを掘り下げていくというより、感覚的にいいと思うものを拾っていくような聴き方をされている?

小島:そうそう! おじいちゃんがぼんやりテレビを見て、チャンネルを回しているような感覚です(笑)。その中に好きなものはあるんですけど、掘り下げず、いいなーって思ってるだけ。

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リリース情報

小島麻由美『Cover Songs』
小島麻由美
『Cover Songs』(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:2,800円(税込)
DDCB-12080

1. ろくでなし / 越路吹雪
2. ミルク・ティー / 遠藤賢司
3. 夜明けのスキャット(Live) / 由紀さおり
4. 夏の魔物 / スピッツ
5. ニーナ
6. SWEET MEMORIES / 松田聖子
7. この世の果てまで / スキータ・デイヴィス
8. 恋のウーアイドゥ / リンジー・ディ・ポール
9. 愛の喜び
10. 朝寝坊 / 大滝詠一
11. I LOVE YOU / 尾崎豊
12. シェリー / 尾崎豊
13. 月影のナポリ / ミーナ、森山加代子
14. 夕陽が泣いている / ザ・スパイダース
15. Hava Nagila
16. 君の瞳に恋してる / フランキー・ヴァリ

イベント情報

kojima mayumi 2-man series 2016
『クアトロ相談所』

2016年5月19日(木)OPEN 18:15 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO
出演:
小島麻由美
and more

2016年7月15日(金)OPEN 18:15 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 CLUB QUATTRO
出演:
小島麻由美
and more
料金:各公演 前売4,500円(ドリンク別)

プロフィール

小島麻由美
小島麻由美(こじま まゆみ)

1995年、シングル『相談結婚所』でデビュー。ジャズ、ジンタ、歌謡曲などの影響と少女的感性が結びついた「古くて新しい」音楽として注目を集める。「スウィングする日本語の唄」を軸に、数多くの冒険的、圧倒的な作品を発表。独自のコンボサウンドとともに立ち上がる唯一無二の世界が音楽リスナーたちを魅了しつづけている。現在までに9枚のアルバムを発表。ジャケットにも多く使用される自筆イラストがトレードマークで、NHK『みんなのうた』への提供曲“ふうせん”ではアニメ原画も提供。イラスト&散文集『KOJIMA MAYUMI'S PAPERBACK』もある。2014年、約5年の沈黙を破り、ミニアルバム『渚にて / On the Beach』、アルバム『路上 / On the Road』のリリースとともに活動を再開。本年はデビュー20周年イヤーを記念し、初のボックスセット『セシルの季節 La saison de Cécile 1995-1999』、テルアビブの地中海サーフロックバンドBOOM PAMとのコラボアルバム『WITH BOOM PAM』をリリース。BOOM PAMの来日と合わせてのコラボツアーも開催、各地のフェスやイベントへの参加も多く、精力的な活動を続けている。

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