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特撮の申し子・樋口真嗣監督に訊く、『サンダーバード』の衝撃

特撮の申し子・樋口真嗣監督に訊く、『サンダーバード』の衝撃

『サンダーバード音楽集 ~オリジナル・スコアによる』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望

今日に至る特撮の原点のひとつでもある、イギリスが生んだスーパー・マリオネットSF番組『サンダーバード』。現在もCM音楽やブラスバンドのレパートリーなどで、きっと多くの人にとって耳馴染みがある“オープニング・テーマ”を含む『サンダーバード音楽集』が、『サンダーバード』日本上陸50周年を記念して、リリースされることになった。

それにしても、放送から50年の時を経た今もなお、多くの人々に愛され続ける『サンダーバード』の魅力とは、一体どこにあるのだろうか。そして、その音楽が今の時代によみがえる意義とは、果たして何なのか。そこで今回、庵野秀明が総監督を務める『シン・ゴジラ』(7月29日公開)や、実写版映画『進撃の巨人』の監督であり、『サンダーバード』好きとしても知られている樋口真嗣監督にご登場願い、自身の原点のひとつでもあるという『サンダーバード』の魅力と、その音楽が持つ効能について、大いに語ってもらうことにした。

(『サンダーバード』が)自分のなかにある破壊願望を満たしてくれるみたいなところがあったわけですよ。毎回必ず何かが爆発するので。

―まずは、樋口さんと『サンダーバード』の出会いから教えていただけますか?

樋口:私は今やマニアですが、初めて見たときは子どもの頃で、普通に好きで見ていたんですよね。当時はみんな当たり前のように見ていたんです。

樋口真嗣
樋口真嗣

―樋口さんは1965年生まれですが、当時の子どもたちは、みんな『サンダーバード』を見ていたと。

樋口:そうです。『サンダーバード』が日本で放送を開始した1966年って、『ウルトラマン』が始まった年でもあるんです。で、そこから毎年のようにウルトラマンシリーズが作られて、その後、仮面ライダーや戦隊ものが始まって……今の子ども向けのテレビ番組のひな形みたいなものが全部出そろったのが、ちょうどその頃だったんですよね。

―『サンダーバード』は、当時どこが衝撃的だったのでしょう?

樋口:そもそも、この規模の物語を全部人形でやるっていうこと自体、後にも先にもなかったわけですよね。NHKの子ども向け人形劇はありましたけど、お金の掛け方が全然違ったし、NHKの人形劇は浄瑠璃に近くて、様式美的なものが強かったんです。

Thunderbirds ™ and © ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2016. Licensed by ITV Ventures Limited.  All rights reserved.
Thunderbirds ™ and © ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2016. Licensed by ITV Ventures Limited. All rights reserved.

―『サンダーバード』とは別物だったわけですね。

樋口:『サンダーバード』は、リアル志向で、現実に近づけようという努力のたまものみたいところがありました。『サンダーバード』を作っているのは、イギリスのセンチュリー21プロダクションなんですけど、そこはずっと人形劇を作っている会社だったんです。で、以前はもっと頭がでかい人形だったのが、技術の進歩と共にどんどん小さくなって、『サンダーバード』を経たその後の作品ではほとんど人間と同じ頭身になるんですね。そして最終的には、実際に人間で撮っちゃうようになって(笑)。

―リアル志向じゃなくて、リアルになっちゃったと(笑)。ちなみに樋口少年は、『サンダーバード』の何に一番惹かれていたのでしょう?

樋口:やっぱりメカですよね。と言っても、主役の彼らが乗っているメカよりも、それ以外のメカが好きでした。『サンダーバード』は「国際救助隊」の話なので、いろんなメカが出てくるし、毎回必ず事故が起こるんです。例えば、新型の飛行機が出てきて、それが墜落しそうになったり、高層ビルを動かすために、でかい車両みたいなものを作って、それでビルを動かそうとするんだけど、途中で壊れてビルが傾いてしまったり。あと、アマゾンの森林を伐採する六足歩行のロボットが事故を起こしたり……基本的に、話の流れは全部一緒なんですよ(笑)。で、彼らを助けるためにサンダーバードが来てくれるんだけど、毎回最後は爆発で終わるんです。

―爆発ですか?

樋口:そう。サンダーバードの活躍によって、人命は救助されるんだけど、飛行機そのものは墜落したり、ビルは傾いたりして、最後は大爆発で終わる。それはそれで大被害じゃないかと思うんだけど、そこは一切目を向けようとしないんですよね(笑)。人が助かったからよかったね、みたいな。でも、それが結局、幼児期の破壊願望を満たしてくれるみたいなところがあったわけですよ。毎回必ず何かが爆発するので。

樋口真嗣

―そういうものって、当時は結構珍しかったのでは?

樋口:そうですね。人形劇なんだから、別に爆発しなくてもいいわけじゃないですか。爆発してまわりを火の海にしたら、お金も手間もかかるわけで。だから、子ども心に、「爆発しなくてもいいじゃんもったいない」とか思ったりはしていたんですけど、やっぱり作っている人たちが、そうしないと納得しなかったんでしょうね。ということが、大人になって、自分で作るようになってだんだんわかってきました(笑)。ただ、それを言ったら、『西部警察』とかもそうですよね。あれも最後は、なぜか大爆発で終わっていたので。

―(笑)。

樋口:あと、僕らの子どもの頃は、同じようなものがもうひとつあって。『サンダーバード』と『西部警察』のあいだに、木曜スペシャル『引田天功大脱出』っていう日テレのバラエティー番組があったんです。そこでも奇術師の初代・引田天功が、チェーンでグルグル巻きにされたまま箱のなかに閉じ込められて、その箱が大爆発するっていう。だけど、引田天功はちゃんと脱出しているんですよ(笑)。

―確かに、どれも構造は一緒ですよね(笑)。

樋口:そう、一緒なんですよ。そういうものがすごい多かったというか、それが当時の娯楽だったんですよね。爆発と言っても、単に煙があがるだけじゃなく、ブワーッと火柱があがるっていう(笑)。

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リリース情報

『サンダーバード音楽集 ~オリジナル・スコアによる』
『サンダーバード音楽集 ~オリジナル・スコアによる』(CD)

2016年4月13日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCQ-85289

1. オープニング・テーマ
2. フッドとファイアーフラッシュ号(SOS原子旅客機・組曲)
3. ファイアーフラッシュ号着陸(SOS原子旅客機・組曲)
4. ペネロープ号の追跡(SOS原子旅客機・組曲)
5. トレーシー・ラウンジ・ピアノ(SOS原子旅客機・組曲)
6. サンダーバード・マーチ
7. ロケット“太陽号”の危機
8. 火星ロケット輸送車
9. 独占スクープ失敗(ニューヨークの恐怖・組曲)
10. エンパイア・ステート・ビルの移動(ニューヨークの恐怖・組曲)
11. ネッドの救出(ニューヨークの恐怖・組曲)
12. サンダーバード6号~メイン・テーマ
13. トレーシー島
14. ゼロX号のテーマ
15. スポーク・シティ・ジャズ
16. ゴングの命運(ジェット“モグラ号”の活躍・組曲)
17. 危険な穴(ジェット“モグラ号”の活躍・組曲)
18. 救助!(ジェット“モグラ号”の活躍・組曲)
19. イージーリスニング・ラジオ・ミュージック
20. 東南アジア道路でのドラマ(死の谷・組曲)
21. 絶望的な挑戦(死の谷・組曲)
22. 救助に向かうサンダーバード(死の谷・組曲)
23. エンディング・テーマ
24. 日本版「サンダーバード」主題歌

イベント情報

『サンダーバード&ファンタジー・フィルム・スペクタキュラー・コンサート』

2016年4月16日(土)OPEN 12:30 / START 13:00
会場:東京都 新宿文化センター 大ホール
指揮:榊真由
演奏:東京ガーデン・オーケストラ
料金:指定席3,500円 一般自由席2,500円 学生席1,500円

プロフィール

樋口真嗣(ひぐち しんじ)

1965年生まれ、東京都出身。平成ガメラシリーズでは特技監督を務め、日本アカデミー賞特別賞を受賞。監督作品に『ローレライ』、『日本沈没』、『のぼうの城』、実写版『進撃の巨人』など。2016年公開予定の『シン・ゴジラ』では監督と特技監督を務める。

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