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野田秀樹が自らの反省を経て未来を描く『東京キャラバン』とは?

野田秀樹が自らの反省を経て未来を描く『東京キャラバン』とは?

東京キャラバン
インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

オリンピックはスポーツだけでなく「文化の祭典」でもあり、開催地の選定には、その都市の文化的ビジョンが大きく関わっているという。いま、2020年に向けて東京の文化政策は急ピッチで進んでいるが、そんななかで、いち早く動き出していたのが『東京キャラバン』だ。

2015年、東京・駒沢公園での『東京キャラバン~プロローグ~』と題された公開ワークショップを皮切りに、2016年には当時オリンピック開催中のリオ・デ・ジャネイロを訪れ、その後は仙台と相馬に赴き、同年10月には最終地点の六本木ヒルズで、名和晃平の美術を置いた広場でのパフォーマンスを行った。

旅先でその土地の人たちと作品を作って現地で発表し、そのアーティストたちを新しい仲間にして次の土地に行くことを繰り返す。そんな『東京キャラバン』の企画者であり総監修を務めるのは、1970年代から日本演劇界を牽引し、常に新しい挑戦を続けてきた野田秀樹。「東京」は出発点で、さまざまな場所を巡りながら、人やジャンルを「混流」させようというこの「文化サーカス」の試みについて、その想いを訊いた。

文化は交通なんです。クロスしたところにいつも新しい文化が生まれるはずで、そういう契機になればおもしろいんじゃないか。

―『東京キャラバン』は2015年にプロローグからスタートし、昨年、今年と活動が続いています。そもそもの企画の立ち上がりはどのような経緯だったのでしょうか?

野田:東京都の芸術文化評議会という組織があって、僕は委員のひとりなんです。そこでオリンピック関連の文化事業を検討するなかで自分がイメージしたのは、劇場のように来てもらうのではなくて、こちらから出向いていく形のものでした。それも、いろいろなジャンルのアーティストが一緒になっていくようなものです。

パソコンやスマホの前からなかなか動かない人たちもいるし、パフォーマンスアートに触れる機会自体が少ない場所に住んでいる人もいる。そういうところにも出かけて行って、やって見せて、興味を引く。パフォーマンスアートは、良さを一度実感すると、その後は全然違うじゃないですか。そのきっかけになればいいなと思っています。

―そのきっかけを作るためには、自ら観客の場所まで行く必要がある、と。

野田:もちろん演劇にしろ音楽にしろ、観客のいるところに飛び込んでいくスタイルは昔からありますよね。でもほとんどは単独で、いろんなジャンルがワッと一緒になってやって来るようなものは少ない。そういった一種、夢のような体験ができれば、そのときすぐには理解できなくても、たとえばそれを見た子供があとから、パフォーマンスで使われていた楽器など、なにかのきっかけで、「これはあのときの……」と興味を持つこともあると思うんです。

野田秀樹
野田秀樹

『東京キャラバン in 東北』(2016年)日本全国津々浦々にキャラバンし文化サーカスを開催するため、2016年には仙台や相馬に赴き、新たな表現を創作するワークショップを行った
『東京キャラバン in 東北』(2016年)日本全国津々浦々にキャラバンし文化サーカスを開催するため、2016年には仙台や相馬に赴き、新たな表現を創作するワークショップを行った

―東京2020オリンピック・パラリンピックの『東京キャラバン』でありながら、東京一極集中型ではない。さまざまな土地に移動することがコンセプトなのがおもしろいですね。

野田:ことさら東京を強調したいわけではなくて、どこでやっても「東京キャラバンin ◯◯」なんです。文化という同じ言葉でくくられていても、アーティスト同士、なかなか接点を持たない人たちがたくさんいますよね。民俗芸能と現代美術とダンスとか、さまざまなアーティスト同士が交われる場があればいいと考えました。

―交わる場所を積極的に作っていくということですね。

野田:つまり文化は交通なんです。文化の「文」と交通の「交」の字は似ていますけど、クロスしたところにいつも新しい文化が生まれるはずで、そういう契機になればおもしろいんじゃないかというのが『東京キャラバン』のはじまりです。

本当はみんな「点」になることが嫌なんじゃないかな。

―とにかく混じり合うことを意識した、ということですね。

野田:その意味でもうひとつ、出来上がった作品だけを見せるんじゃなくて、せっかくだから創作過程もオープンにして、相撲部屋の稽古のように見せちゃえと。通りかかった人が誰でものぞけるようにしているんです。

我々はいつも結果としての作品しか目にしませんけど、実はものを作ることのおもしろさは過程にもたくさん含まれている。特に『東京キャラバン』にはそれぞれの分野で一流の人が集まってくれているので、うまくいったりいかなかったりという途中も、ひとつの表現として興味深く見てもらえるんじゃないかな。

―野田さんが最初の構想として発表した文章に、「文化サーカス」「アート旅団」と書かれていましたが、まさにそんなイメージですね。

野田:そうです。文化交流じゃなくて文化「混流」だと言っています(笑)。

野田秀樹

―ということは、参加アーティストの好奇心やフレキシビリティ、フットワークなどがかなり問われそうです。

野田:だと思います。でもこれまでの例でいうと、リオ・デ・ジャネイロの現地のダンサーやカポエラのパフォーマーたちと、東北のすずめ踊りやスカパラと混ぜようとしたときに、まるっきり違う世界だからどうかなと最初は心配していたんですけど、やってみたら、リズムさえ刻めれば彼らの音楽は繋げられるとわかった。音楽系は、リズムさえ押さえれば、コラボレーションするのはどこでも大丈夫だという自信になりました。一番良い、交わった例ですね。

『東京キャラバン in RIO』(2016年)リオ・デ・ジャネイロ在住のアーティスト、アート・リンゼイの呼びかけによりブラジルの多種多様なアーティストが集い、オリンピックの熱狂に湧く2016年のリオ・デ・ジャネイロでワークショップが行われた
『東京キャラバン in RIO』(2016年)リオ・デ・ジャネイロ在住のアーティスト、アート・リンゼイの呼びかけによりブラジルの多種多様なアーティストが集い、オリンピックの熱狂に湧く2016年のリオ・デ・ジャネイロでワークショップが行われた

野田:本当はみんな「点」になることが嫌なんじゃないかな。今日もいろんな場所でいろんな催しものが行われていて、それなりに人が集まって「これ、おもしろいね」という話が出ているはずですけど、それが「点」であることに変わりはない。

1960年から80年代前半あたりまでの文化状況というのは、日本もそうだったし、世界中でさまざまな分野のアートが混じりあって、新しいものが次々と生まれていたんですよね。でも少しずつ世界全体が閉じていって、それぞれが「点」になり過ぎた。そのことに気付いて、違う場所にいる人たちともっとクロスしていくとおもしろい状況が生まれるのに、と思っているアーティストは多いと思います。

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イベント情報

『東京キャラバン in 京都・亀岡(公開ワークショップ)』
『東京キャラバン in 京都・亀岡(公開ワークショップ)』

2017年8月19日(土)、8月20日(日)
会場:京都府 亀岡 生涯学習施設・道の駅ガレリアかめおか コンベンションホール

参加アーティスト:
野田秀樹
松たか子(女優)
諏訪綾子/フードクリエイション(アーティスト)
佳つ菊(祇園甲部芸妓)
豆千佳(祇園甲部舞妓)
祇園祭鷹山保存会 囃子方
村田製作所チアリーディング部(球乗り型ロボット)
青柳美扇(書道家)
津軽三味線「小山会」
和太鼓「Atoa.」
井手茂太(振付家・ダンサー)
“東京キャラバン”アンサンブル(パフォーマー)
ほか
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
京都文化力プロジェクト実行委員会(京都府、京都市、京都商工会議所など)
協力:亀岡市

『東京キャラバン in 京都・二条城(パフォーマンス)』

2017年9月2日(土)、9月3日(日)
会場:京都府 二条城 二の丸御殿前 特設ステージ

参加アーティスト:
野田秀樹
松たか子(女優)
中納良恵/EGO-WRAPPIN’(ミュージシャン)
津村禮次郎(能楽師)
諏訪綾子/フードクリエイション(アーティスト)
佳つ菊(祇園甲部芸妓)
豆千佳(祇園甲部舞妓)
祇園祭鷹山保存会 囃子方
村田製作所チアリーディング部(球乗り型ロボット)
青柳美扇(書道家)
津軽三味線「小山会」(小山豊、小山浩秀、小山貢将)
和太鼓「Atoa.」(高橋勅雄、高橋亮)
大谷祥子(箏曲家)
勝井粧子(箏曲家)
揚見日南子(ヴァイオリニスト)
喜連麻衣(ヴァイオリニスト)
山本みなみ(ヴァイオリニスト)
太田かなえ(ヴィオリスト)
石豊久(チェリスト)
巳崎響介(コントラバス奏者)
“東京キャラバン”アンサンブル
ほか
参加クリエイター:
名和晃平(美術・空間構成)
SANDWICH | 木村舜(美術)
服部基(照明)
ひびのこづえ(衣装)
原摩利彦(音楽)
大曽根浩範(編曲)
赤松絵利(ヘアメイク)
井手茂太(振付)
青木兼治(映像)
井上嘉和(写真・ダンボールお面)
協力:
ULTRA SANDWICH PROJECT#13(美術制作)
WLK(和小物)
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
京都文化力プロジェクト実行委員会(京都府、京都市、京都商工会議所など)
※観覧申込は終了しました。キャンセル待ち及び当日券の発行はありません。 ※9月3日(日)19:00~ インターネットライブ中継を実施します。詳しくはこちら

『東京キャラバン in 八王子』

公開ワークショップ
2017年9月9日(土)

参加型パフォーマンス
2017年9月10日(日)

会場:東京都 八王子駅周辺特設会場(旧東京都産業技術研究所八王子支所)

参加アーティスト:
野田秀樹
近藤良平
琉球舞踊(嘉数道彦、佐辺良和、平良大)
仙台すずめ踊り・高橋組
ハイヤ踊り(熊本県立天草拓心高等学校郷土芸能部)
八王子芸妓衆
原宿 ストレンジャーズ(R&R.ロカビリーダンスパフォーマンスチーム)
岡本優(TABATHA)&パラパラダンサーズ
東京キャラバン“アンサンブル”
八王子にぎやかし隊
ほか
ジャンル:
仙台の踊り
沖縄の踊り
熊本の踊り
50年代~現代までの踊り(ロカビリー、パラパラ、ジュリアナ)
参加クリエイター:
日比野克彦(やぐらデザイン)
SANDWICH | 木村舜(美術)
ひびのこづえ(衣装)
青木兼治(映像・ドローン)
井上嘉和(写真・ダンボールお面)
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力:
八王子市
公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団
※『伝承のたまてばこ~多摩伝統文化フェスティバル2017~』と同日開催

『東京キャラバン in 熊本』

ワークショップ
2017年10月9日(月・祝)~10月13日(金)予定
会場:熊本県内数ヶ所

公開リハーサル・パフォーマンス
2017年10月15日(日)10:00~15:00予定
会場:熊本県 熊本市内

パフォーマンス
2017年10月15日(日)15:00~17:00予定
会場:熊本県 熊本城 二の丸広場

参加アーティスト:
近藤良平
ほか
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
熊本県
熊本市
公益財団法人熊本県立劇場
熊本市現代美術館(公益財団法人熊本市美術文化振興財団)

プロフィール

野田秀樹(のだ ひでき)

1955年長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。2009年より、東京芸術劇場芸術監督に就任。多摩美術大学教授。東京大学在学中に劇団夢の遊眠社を結成。解散後、ロンドンに留学。帰国後、NODA・MAPを設立し、『キル』『オイル』『THE BEE』『エッグ』『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』などを発表し高い評価を得る。海外での創作活動や、歌舞伎を手掛ける。2015年より『東京キャラバン』の総監修を務め、「人と人が交わるところに文化が生まれる」をコンセプトとした文化サーカスを日本各地で展開。コンセプトに賛同する多種多様な表現者らと、文化「混流」による独自のパフォーマンスを創作、発表し多くの観客を魅了した。2017年、八月納涼歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』を上演。表現のジャンル、国境を超え、精力的に創作活動を行う。

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