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野田秀樹が自らの反省を経て未来を描く『東京キャラバン』とは?

野田秀樹が自らの反省を経て未来を描く『東京キャラバン』とは?

東京キャラバン
インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:豊島望 編集:宮原朋之

伝統芸能の方たちに勇気を振り絞ってお願いしていますが、ほとんどの場合、まず怖い顔になりますね(笑)。

―野田さんが感じていらっしゃる、「もっとクロスしていくとおもしろくなる」という感触を、各地の伝統芸能の方たちが共有し、積極的に創作に関わっているのが興味深いです。

野田:そこは毎回、出たとこ勝負で、本当にドキドキです。大体、どこに行っても「私たちはなにをすればいいんですかね?」と最初に聞かれます。そもそも僕自身、それがよくわからないというのが正直なところで(笑)。まずは一回見せてもらって、そこから全体をどういう流れにすれば、おもしろいかを考えていきます。

―全体の構成を整えていくという意味では演出だと思いますが、稽古場で俳優につけていく作業とは明らかに違いますよね。

野田:伝統芸能って、時間的に長いものが多いんです。ひとつの流れに添った意味のある長さで、だからこそ伝統なんですけど、その演目だけを見せることが『東京キャラバン』の主旨ではない。

なので申し訳ないけれども短縮して、凝縮してやってもらえませんかということを、勇気を振り絞ってお願いしています。なかには柔軟な人もいて、「わかりました、できますよ」と言ってくださることもありますが、ほとんどの場合、相手の方はまず怖い顔になりますね(笑)。

でも少しずつ作業を進めたり、説明したりしていると「じゃあ、こういうやり方でやってみましょうか」となっていきます。結果としては、短くしたことでかえって流れがはっきりすることもあって、おもしろくなっていく。

 野田秀樹

活動してきた場所からもう少し外に出たいと考えている人たちにとって『東京キャラバン』は、格好の新しい表現の場だと思います。

―昨年の六本木ヒルズでのステージを見ましたが、多種多様な出演者がそれぞれ異なる存在感を放ちつつ、全体が生きた一匹の竜のように見えました。ラストは全員が足の裏に絵の具をつけて踊り、色とりどりの花びらのような足跡が増えていくのも美しくて、祝祭性がありました。その構成とストーリー性は、やはり野田さんが意識された点ではないかと思います。

野田:毎回、参加してくれる人たちのイメージのもとになる詩や物語を書いています。駒沢公園のプロローグでは『旅立つ前夜~1964年の子ら』というタイトルの詩を書きました。僕は1964年の東京オリンピックを9歳で経験しているんですが、オリンピックの2、3年後、小学校の教室にみんなで泊まったことがあって、その私的な思い出を膨らませて書きました。

『東京キャラバン ~プロローグ~』(2015年)撮影:井上嘉和 2015年駒沢オリンピック公園での公開ワークショップの様子。現代アートや音楽、ファッションから伝統文化、能楽までが交わるコラボレーションを約1200名の観客に披露した
『東京キャラバン ~プロローグ~』(2015年)撮影:井上嘉和 2015年駒沢オリンピック公園での公開ワークショップの様子。現代アートや音楽、ファッションから伝統文化、能楽までが交わるコラボレーションを約1200名の観客に披露した

―クリエイションの前に、そうした野田さんの言葉によるイメージの共有が必ず行われる、と。10月の熊本公演はディレクターが近藤良平さん(振付家、ダンサー、コンドルズ主宰)ですが、野田さんとはNODA・MAP作品で複数回、共同作業をされていますし、そうしたベースになる詩、物語があれば、世界観の共有はしやすいですね。

野田:近藤さんともどんな形にしようかという話はしています。そこになにかプラスして、彼ならではの『東京キャラバン』があってもいいですしね。

―今後はおそらく、ミュージシャンだったり美術家だったり、さまざまな方にディレクションを任せるケースも出てきますよね。

野田:『東京キャラバン』はこういうもの、というはっきりとした形はありませんから、その人の感覚によって方向性が全然違うと思うし、それぞれあっていいですよね。ただ、幅広い観客に見せて楽しんでもらうことと、全体のリズムを失わないことはすごく大事だと思っています。

『東京キャラバン in 六本木』(2016年) 撮影:篠山紀信 2016年10月、東京・六本木ヒルズアリーナにて上演された『東京キャラバン in 六本木』では彫刻家の名和晃平のオブジェを背景に、東京スカパラダイスオーケストラの生演奏や宮沢りえの朗読が華を添えた
『東京キャラバン in 六本木』(2016年) 撮影:篠山紀信 2016年10月、東京・六本木ヒルズアリーナにて上演された『東京キャラバン in 六本木』では彫刻家の名和晃平のオブジェを背景に、東京スカパラダイスオーケストラの生演奏や宮沢りえの朗読が華を添えた

―参加アーティストはどう決まっていくのでしょうか?

野田:アーティストに関しては、僕がこういうことやっていると話すと、多くの人が「おもしろそうですね」と前向きに興味を示してくれるんです。やっぱりさっきもお話ししたように、みんな混じりたがっているのは事実なんですよね。

ライブ会場だとかギャラリーとか劇場とか、これまで活動してきた場所からもう少し外に出たい、これまで交わったことのない人たちと一緒になにかやりたいという感覚は確かにある。そういうことを考えている人たちにとって『東京キャラバン』は、格好の新しい表現の場だと思います。

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イベント情報

『東京キャラバン in 京都・亀岡(公開ワークショップ)』
『東京キャラバン in 京都・亀岡(公開ワークショップ)』

2017年8月19日(土)、8月20日(日)
会場:京都府 亀岡 生涯学習施設・道の駅ガレリアかめおか コンベンションホール

参加アーティスト:
野田秀樹
松たか子(女優)
諏訪綾子/フードクリエイション(アーティスト)
佳つ菊(祇園甲部芸妓)
豆千佳(祇園甲部舞妓)
祇園祭鷹山保存会 囃子方
村田製作所チアリーディング部(球乗り型ロボット)
青柳美扇(書道家)
津軽三味線「小山会」
和太鼓「Atoa.」
井手茂太(振付家・ダンサー)
“東京キャラバン”アンサンブル(パフォーマー)
ほか
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
京都文化力プロジェクト実行委員会(京都府、京都市、京都商工会議所など)
協力:亀岡市

『東京キャラバン in 京都・二条城(パフォーマンス)』

2017年9月2日(土)、9月3日(日)
会場:京都府 二条城 二の丸御殿前 特設ステージ

参加アーティスト:
野田秀樹
松たか子(女優)
中納良恵/EGO-WRAPPIN’(ミュージシャン)
津村禮次郎(能楽師)
諏訪綾子/フードクリエイション(アーティスト)
佳つ菊(祇園甲部芸妓)
豆千佳(祇園甲部舞妓)
祇園祭鷹山保存会 囃子方
村田製作所チアリーディング部(球乗り型ロボット)
青柳美扇(書道家)
津軽三味線「小山会」(小山豊、小山浩秀、小山貢将)
和太鼓「Atoa.」(高橋勅雄、高橋亮)
大谷祥子(箏曲家)
勝井粧子(箏曲家)
揚見日南子(ヴァイオリニスト)
喜連麻衣(ヴァイオリニスト)
山本みなみ(ヴァイオリニスト)
太田かなえ(ヴィオリスト)
石豊久(チェリスト)
巳崎響介(コントラバス奏者)
“東京キャラバン”アンサンブル
ほか
参加クリエイター:
名和晃平(美術・空間構成)
SANDWICH | 木村舜(美術)
服部基(照明)
ひびのこづえ(衣装)
原摩利彦(音楽)
大曽根浩範(編曲)
赤松絵利(ヘアメイク)
井手茂太(振付)
青木兼治(映像)
井上嘉和(写真・ダンボールお面)
協力:
ULTRA SANDWICH PROJECT#13(美術制作)
WLK(和小物)
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
京都文化力プロジェクト実行委員会(京都府、京都市、京都商工会議所など)
※観覧申込は終了しました。キャンセル待ち及び当日券の発行はありません。 ※9月3日(日)19:00~ インターネットライブ中継を実施します。詳しくはこちら

『東京キャラバン in 八王子』

公開ワークショップ
2017年9月9日(土)

参加型パフォーマンス
2017年9月10日(日)

会場:東京都 八王子駅周辺特設会場(旧東京都産業技術研究所八王子支所)

参加アーティスト:
野田秀樹
近藤良平
琉球舞踊(嘉数道彦、佐辺良和、平良大)
仙台すずめ踊り・高橋組
ハイヤ踊り(熊本県立天草拓心高等学校郷土芸能部)
八王子芸妓衆
原宿 ストレンジャーズ(R&R.ロカビリーダンスパフォーマンスチーム)
岡本優(TABATHA)&パラパラダンサーズ
東京キャラバン“アンサンブル”
八王子にぎやかし隊
ほか
ジャンル:
仙台の踊り
沖縄の踊り
熊本の踊り
50年代~現代までの踊り(ロカビリー、パラパラ、ジュリアナ)
参加クリエイター:
日比野克彦(やぐらデザイン)
SANDWICH | 木村舜(美術)
ひびのこづえ(衣装)
青木兼治(映像・ドローン)
井上嘉和(写真・ダンボールお面)
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
協力:
八王子市
公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団
※『伝承のたまてばこ~多摩伝統文化フェスティバル2017~』と同日開催

『東京キャラバン in 熊本』

ワークショップ
2017年10月9日(月・祝)~10月13日(金)予定
会場:熊本県内数ヶ所

公開リハーサル・パフォーマンス
2017年10月15日(日)10:00~15:00予定
会場:熊本県 熊本市内

パフォーマンス
2017年10月15日(日)15:00~17:00予定
会場:熊本県 熊本城 二の丸広場

参加アーティスト:
近藤良平
ほか
主催:
東京都
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
熊本県
熊本市
公益財団法人熊本県立劇場
熊本市現代美術館(公益財団法人熊本市美術文化振興財団)

プロフィール

野田秀樹(のだ ひでき)

1955年長崎県生まれ。劇作家・演出家・役者。2009年より、東京芸術劇場芸術監督に就任。多摩美術大学教授。東京大学在学中に劇団夢の遊眠社を結成。解散後、ロンドンに留学。帰国後、NODA・MAPを設立し、『キル』『オイル』『THE BEE』『エッグ』『足跡姫~時代錯誤冬幽霊~』などを発表し高い評価を得る。海外での創作活動や、歌舞伎を手掛ける。2015年より『東京キャラバン』の総監修を務め、「人と人が交わるところに文化が生まれる」をコンセプトとした文化サーカスを日本各地で展開。コンセプトに賛同する多種多様な表現者らと、文化「混流」による独自のパフォーマンスを創作、発表し多くの観客を魅了した。2017年、八月納涼歌舞伎『野田版 桜の森の満開の下』を上演。表現のジャンル、国境を超え、精力的に創作活動を行う。

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