特集 PR

カクバリズムの新鋭・mei eharaが明かす、デビューまでの葛藤

カクバリズムの新鋭・mei eharaが明かす、デビューまでの葛藤

mei ehara『Sway』
インタビュー・テキスト
小熊俊哉
撮影:馬込将充 編集:山元翔一
2017/11/14

この懐かしさは、どこからやってくるのだろう? かつて「may.e」と名乗り、インディーシーンで支持を集めてきたmei eharaは、数奇な縁から「カクバリズム」と巡り合い、シンガーソングライターとしての名義を一新。キセルの長男こと辻村豪文をプロデューサーに迎え、初のアルバム『Sway』を完成させた。詩情に満ちたメロディー、柔らかくも芯の通った歌声、まろやかな日本語の響きに、凛としたフォルム――1970年代の荒井由実を彷彿させるインターネット世代のニューミュージックは、ノスタルジーと新鮮な響きが豊かにブレンドされている。

写真やデザイン制作を行い、文芸誌『園』の主宰も務めるなど多方面で活動する彼女だが、今回のアルバム制作前にミュージシャンとしての危機に直面していた。ひとりぼっちの宅録から、立体的なバンドアンサンブルへの移行は『Sway』における大きなトピックだが、清々しい新境地に辿り着くまでには、いくつもの葛藤があったようだ。ユニークな感性が育まれた過程と、実り多きターニングポイントについて語ってもらった。

小学生のときは「歌手になりたい」と思っていたんです。だけど、現実的に考えたら無理だなって。

―「may.e」名義による最初のEP『Mattiola』が発表されたのが2013年。今回のタイミングで本格デビューということですが、早くからネット上で注目されていた印象があります。

mei:パソコンもインターネットも小さい頃から身近な存在だったので、最初から自分の作品をネットで公開するのも当たり前という感覚だったのは大きいかもしれませんね。1枚目のEPは、自分の誕生花(マッティオラ)から名づけました。

mei ehara
mei ehara / 『Mattiola』を試聴する(bandcampで聴く

―その『Mattiola』では英語で歌っていましたが、同年リリースの『私生活』では日本語詞にシフトしましたよね。この作品を今振り返ってみていかがでしょう?

mei:うーん……。あの頃はミュージシャンになろうとは思っていなかったんです。だから『私生活』は手探りな部分もあったし、1日そこらの短い期間で作った曲が多くて詰めも甘いし。レコーディング環境もよくなかったから、音も悪いと思います。そういうのも今となっては思い出深いですけど(笑)。

―でも、この時期からYogee New Wavesやミツメ、シャムキャッツをはじめ、アーティスト写真を撮影しているTaiko Super Kicksといったバンドとの交流が生まれて、周囲のリアクションも大きくなったんじゃないですか?

mei:そうですね。でも、当時のことを振り返って思うのは、「みんな、褒めてくれるけど、本当かな」と首を傾げるような曲もあったことで。私の音源はやっぱり粗削りなところもあるし、「本当にいいのかな?」という気持ちのほうが強かったです。

mei ehara
『私生活』を試聴する(bandcampで聴く

mei:ライブ活動に関してもそうで、アーティストとしてお誘いをもらって、出演料をいただいたとしても、当時の私は、本腰を入れて音楽をやろうというスタンスになれていなくて。周りの人たちに対して、それがすごく申し訳ないと思っていました。

―「申し訳ない」という気持ちがあった。

mei:きっと、自信がなかったんだと思います。将来どう生きていくのかも考えられていなかったし、自分の立ち位置が不安定だったというか。それにやっぱり……女性は難しい。子供のころ、一時期「歌手になりたい」と思っていたこともあったんです。だけど、大人になって現実的に考えてしまって、無理だなと思ったんです。

―それはどうして?

mei:女性シンガーの場合、容姿が美しかったり、恋愛のようなわかりやすいテーマを表現がすることが多いじゃないですか。そういうものが女性として求められているのもわかる。でもだからこそ、私が同じことをして音楽活動を立派に成し遂げるのはとても難しいなと感じていたんです。

『私生活』には恋愛の歌が多いんですけど、そこまでわかりやすいものでもないし。そういう私の作品が、たくさんの人に認められるとは思えなかった。音楽活動になかなか本腰を入れられなかったことには、そんな理由もありました。

Page 1
次へ

リリース情報

mei ehara『Sway』
mei ehara
『Sway』(CD)

2017年11月8日(水)発売
価格:2,700円(税込)
DDCK-1053

1. 戻らない
2. 狂った手
3. サイン
4. 蓋なしの彼
5. 頬杖
6. 道路
7. 地味な色
8. 毎朝
9. 街の様子
10. 冴える

イベント情報

『mei ehara「Sway」リリースパーティー』

2017年11月11日(土)
会場:東京都 原宿 VACANT
出演:mei ehara(support by キセル)

2017年11月23日(木・祝)
会場:京都府 京都UrBANGUILD
出演:
mei ehara
夏目知幸(シャムキャッツ)
guruGURU(And Summer Club)

2017年11月26日(日)
会場:愛知県 名古屋Live & Lounge Vio
出演:
mei ehara
王舟
菅原慎一(シャムキャッツ)

料金:各公演 前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)

プロフィール

mei ehara
mei ehara(めい えはら)

1991年、愛知県生まれ。学生時代、自主映画のBGM制作のため宅録を始める。その後、歌唱を入れた音楽制作に移行し、may.eという名義で、これまでに計5作の自主制作作品を発表。Yogee New Waves、nakayaan(ミツメ)などのアルバムにゲストコーラスで参加。音楽活動のほか、文藝誌『園』主宰、写真やデザインなどの制作活動も行う。活動名をmei eharaと改め、2017年11月、カクバリズムより本格デビュー。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

ヒトリエ“青”

ヒトリエのニューアルバム『HOWLS』の収録曲“青”のMVが公開。淡い色彩の中で力強くこだまするバンド演奏と、男女2人の刹那的で美しいシーンが織りなす世界観が、切ない歌詞とリンクしながらさらに加速していくようだ。MV中も印象的に使われている「青」が、楽曲を鮮やかに彩り、余韻を残している。デビュー5周年を迎えたヒトリエを牽引するにふさわしい、儚くも力強いバラード楽曲。(野々村)

  1. 香取慎吾の日本初個展『BOUM! BOUM! BOUM!』レポ 「僕の全部を見て」 1

    香取慎吾の日本初個展『BOUM! BOUM! BOUM!』レポ 「僕の全部を見て」

  2. 星野源のNHK特番、『POP VIRUS』&ドームツアー回顧&最新ライブ映像も 2

    星野源のNHK特番、『POP VIRUS』&ドームツアー回顧&最新ライブ映像も

  3. 小山田圭吾×大野由美子対談 「音に触れる」空間音響がすごい 3

    小山田圭吾×大野由美子対談 「音に触れる」空間音響がすごい

  4. 箕輪厚介×國光宏尚対談 終わりが見える「SNS社会」の次を語る 4

    箕輪厚介×國光宏尚対談 終わりが見える「SNS社会」の次を語る

  5. 平手友梨奈が真紅のCDGを纏う&市川染五郎と“黒い羊”語る雑誌『SWITCH』 5

    平手友梨奈が真紅のCDGを纏う&市川染五郎と“黒い羊”語る雑誌『SWITCH』

  6. なぜ今ライブハウスを? 吉祥寺NEPOが語るこれからの場所作り 6

    なぜ今ライブハウスを? 吉祥寺NEPOが語るこれからの場所作り

  7. 知英がセクシーな喰種・イトリ役 窪田正孝主演『東京喰種2』に出演 7

    知英がセクシーな喰種・イトリ役 窪田正孝主演『東京喰種2』に出演

  8. フィッシュマンズの歴史が更新された夜。ceroとの時を超えた邂逅 8

    フィッシュマンズの歴史が更新された夜。ceroとの時を超えた邂逅

  9. 上白石萌音が杉野遥亮&横浜流星の間で心揺れる 『L♡DK』新映像3種公開 9

    上白石萌音が杉野遥亮&横浜流星の間で心揺れる 『L♡DK』新映像3種公開

  10. 映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る 10

    映像作家・山田智和の時代を切り取る眼差し。映像と表現を語る