インタビュー

SIDE COREが語る、ストリートカルチャーと現代美術を繋げる実践

SIDE COREが語る、ストリートカルチャーと現代美術を繋げる実践

インタビュー・テキスト
中島晴矢
撮影・編集:宮原朋之

『SIDECORE -rode work- 』展示風景よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』
『SIDECORE -rode work- 』展示風景よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』(2017年) ©Reborn-Art Festival 2017

俺たちに根ざしてるストリートカルチャーって、ボーダーがないから文脈がその場所と自然と繋がるんだよ。

―『Reborn-Art Festival 2017』での展示『RODE WORK』がとても刺激的でした。会場となった場所は元々どんな場所だったのでしょう。

松下:元々石巻の港町にある水産加工会社の冷凍加工工場だったんだけど、2011年の東日本大震災で4m近い津波が来て壊れちゃった。そこを「震災の歴史を遺す場所にしたい」って考えて、地元のスケートボーダーに貸し出した。そこで運営されてたのがOneparkっていうスケートパークだったんだよね。だから震災のドサクサによってできた場所。

スケートパークOnepark内部の様子
スケートパークOnepark内部の様子

『SIDECORE -rode work- 』よりBABU『untitled』(2017年) / スケートパークOnepark裏側の展示風景。右上にBABUの絵が展示されている
『SIDECORE -rode work- 』よりBABU『untitled』(2017年) / スケートパークOnepark裏側の展示風景。右上にBABUの絵が展示されている ©Reborn-Art Festival 2017

松下:今回のポイントは消防法の問題だった。震災後に行政的な区画整理が進んで、消防のチェックが街全体に入ったことで、震災の跡を残した建築が当たり前のことながらやり玉に挙がったんだよ。

そのひとつがOneparkだった。それまでは消防署のチェックが入っても「震災後」っていう時間感覚があったからおとがめ無しだったんだけど、行政的にはその時間感覚は終わってきてるってことを知らせたいと思ってるし、商業地だから魚市場を中心に再開が早くて、工場はもうほとんど稼働してる状況だった。

巨大な防潮堤を建設中のOneparkの真横にある日和大橋からの風景
巨大な防潮堤を建設中のOneparkの真横にある日和大橋からの風景

―そのOneparkがスケートパークとして運営できなくなる、というなかで展示を行ったんですね。

松下:そう。その経緯自体が興味深かったんだよね。やったことは、アートプロジェクトとして展示や作品がその場所とどう結びつくかっていう問いに対して、俺たちが根ざしてるストリートカルチャーを題材にしていくっていうこと。

グラフィティやラップもそうだけど、ストリートカルチャーってボーダーがないから文脈自体は自然とその場所と繋がるんだよね。それがよかったんじゃないかな。無理矢理アートを持ってくるわけでもなく、その場所のコンテクストに寄り添いすぎるわけでもない。

ストリートカルチャーによって繋がることはもちろん、自分たちが石巻で一からはじめて、あの場所に根を張ることが重要だった。

―文脈なくフラットに繋がることができるストリートカルチャーの要素が上手く機能したんですね。展示空間や作家、作品はどのようにキュレーションされたのですか?

松下:構成としては、中心にスケートパークがあって、その周辺に作品を展開していくというもの。作家は、スケーターでアーティストでもある人とか、スケートボードの文脈に繋がりがあるアーティストを中心に選んでいった。

例えばグラフィティライターでスケーター、和彫り師でもある北九州の異端児としか言いようのないBABUさんや、日本の代表的なスケーターである森田貴宏さん。森田さんはアブストラクトな表現のめちゃくちゃカッコいいスケートビデオを撮る映像作家としても有名で、今回も映像作品を作ってくれた。

Oneparkで話すBABU、森田貴宏
Oneparkで話すBABU、森田貴宏


BABU『oneenergyBlue』 / Oneparkのオープン当初に誰かが衝動的に作ろうとして挫折したランプの残骸を引き継ぎ、壁面に残る津波の跡の高さまでブロックを積み上げた。このスケートランプに登ろうとしている船は、元々は津波によって破損し処分されようとしていた漁船
BABU『oneenergyBlue』 / Oneparkのオープン当初に誰かが衝動的に作ろうとして挫折したランプの残骸を引き継ぎ、壁面に残る津波の跡の高さまでブロックを積み上げた。このスケートランプに登ろうとしている船は、元々は津波によって破損し処分されようとしていた漁船 ©Reborn-Art Festival 2017

森田貴宏がこの展示のために映像を制作した

松下:さっき言ったようにOneparkのなかでスケートができなくなったから、建物の回りの隙間に細長いスケートコースを作ったんだよ。津波がモチーフで波のようにボコボコしてる道なんだけど、実際に滑れるし、スケーターだったら「ナニコレ滑りてぇ!」みたいになる。「あんなに細長いランプになってる場所ないな」って。

『SIDECORE - rode work』より、森田貴宏『line wave』展示風景 / 建物の回りの隙間にまっすぐ伸びる細長いスケートコース
『SIDECORE - rode work』より、森田貴宏『line wave』展示風景 / 建物の回りの隙間にまっすぐ伸びる細長いスケートコース ©Reborn-Art Festival 2017

松下:あとはSTANGっていう大阪のグラフィティライターに、東北を回って集めたZINEの移動式ショップを開いてもらった。グラフィティって、「オールシティ」って言っていろんな街を回ってく「旅」がひとつの重要なファクターとしてあるのね。そのなかで彼は旅をしながらZINEを通して各地で情報交換をしていく。普段からモノを拾い集めて写真やオブジェを作ってる赤木楠平ってアーティストには、石巻にある素材で自分の部屋のような空間を作ってもらった。

『SIDECORE - rode work』よりSTANG『ZINE SWAP MEET CAMP』(2017年)展示風景
『SIDECORE - rode work』よりSTANG『ZINE SWAP MEET CAMP』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017

『SIDECORE - rode work』よりNampei Akaki『OUT END PEOPLE』(2017年)展示風景
『SIDECORE - rode work』よりNampei Akaki『OUT END PEOPLE』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017

―EVERYDAY HOLIDAY SQUADによる工事現場の作業着姿でスケートボードをする映像と、会場に吊るされていた工事器具で作られたシャンデリアも非常に印象的でした。

松下:まずOneparkが使えなくなったから、外にスケートボードをやりにいくっていうのがベースの物語としてあったのね。そこで、震災後の石巻に広がってたのは工事現場だった。

あの建設機材は全て「仙台銘板」っていう会社から借りているんだけど、震災後に日本中で工事が増えたから、「仙台銘板」が会社として大きくなって、いまや東日本全域はほとんどこの会社の機材を使うようになったわけ。東京もそう。だから、震災からはじまって起きたことが、こっちの日常まで届いてる。工事現場(=『RODE WORK』)によって日本中が繋がっていくのが面白いと思ったんだ。

東京・渋谷の工事現場
東京・渋谷の工事現場

『SIDECORE - rode work』よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017 / 工事現場の作業着姿でスケートボードをする映像
『SIDECORE - rode work』よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017 / 工事現場の作業着姿でスケートボードをする映像

『SIDECORE - rode work』よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017 / 建設機材で作られたシャンデリア
『SIDECORE - rode work』よりEVERYDAY HOLIDAY SQUAD『RODE WORK』(2017年)展示風景 ©Reborn-Art Festival 2017 / 建設機材で作られたシャンデリア

松下:特に面白いのがシャンデリアに使われていたこの工事灯。電波時計と似た仕組みが内蔵されていて、東日本と西日本に分かれて全てライトの点滅のカウント数が合わせられているの。つまり今この目の前に見える光の点滅は、石巻や他の地域にあるそれと同期して点滅しているということ。

実際にシャンデリアに使われていた工事灯
実際にシャンデリアに使われていた工事灯

―石巻と他の地域との繋がりもディレクションのなかで大きかったんですね。

松下:ストリートカルチャーによって繋がることはもちろん、自分たちが石巻で一からはじめて、あの場所に根付くことが重要だった。だから今回、地域とのコミュニケーションも含めて上手くいったのは、場との関わり方を作ったからかな。基本的には東京の路上が自分たちの場なんだけど、それを移動していったときに、どう関わるかを定義できたんだ。

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イベント情報

『開閉しろ都市』Part.1
EVERYDAY HOLIDAY SQUAD『渋谷の部屋』

2017年11月17日(金)~12月22日(金)
会場:東京都 西麻布 SNOW Contemporary
時間:13:00~19:00(水曜は21:00まで)
休廊日:日曜、月曜、火曜、祝日

『開閉しろ都市』Part.2
SIDE COREディレクター・松下徹『常磐の部屋』

2018年1月12日(金)~
会場:東京都 西麻布 SNOW Contemporary
時間:13:00~19:00(水曜は21:00まで)
休廊日:日曜、月曜、火曜、祝日

『リボーン・アートフェスティバル 東京展』

2017年10月20日(金)~12月30日(土)
会場:東京都 外苑前 ワタリウム美術館
時間:11:00~19:00(水曜は21:00まで)
休館日:月曜(12月4日は開館)
料金:大人1,000円 学生800円 大人2人券1,600円 学生2人券1,200円 小中学生500円 70歳以上700円

『カオス*ラウンジ新芸術祭2017 市街劇「百五〇年の孤独」』

2017年12月28日(木)~2018年1月28日(日)※1月からは金土日祝のみ
会場:福島県 いわき市 zittiほか、泉駅周辺の複数会場
時間:10:00~18:00
観覧料:1000円(高校生以下は無料)

プロフィール

SIDE CORE(さいどこあ)

2012年、高須咲恵と松下徹が発足し活動を開始。「都市空間における表現の拡張」をテーマに、展覧会を多数開催。近年では、街全体を使った不定形の展覧会『MIDNIGHT WALK tour』を開催。アーティストとゲリラ的な作品を街に点在させ、既存の建築や壁画、グラフィティや街を巡る。また、都内のスタジオ兼多目的スペースの運営をおこなっている。これらの活動は、公共空間のルールを紐解き、その隙間に介入し、そして新しい行動を生み出していくための実践である。

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