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ネット文化発のfhánaが今、「他者に出会う」と繰り返し語る理由

ネット文化発のfhánaが今、「他者に出会う」と繰り返し語る理由

fhána『World Atlas』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:Kana Tarumi 編集:山元翔一
2018/04/24

fhánaの3rdアルバム『World Atlas』は、もしかしたら、これまでの彼らのアルバムのなかで最も「小さなアルバム」と言うことができるかもしれない。

ここで言う「小ささ」とは、もちろん作品の音楽的な質や、描かれている物語の濃度を指すのではない。では、なにが「小さい」のか? それは、「君と僕」という、この作品に通底して流れる視点そのものが「小さい」のだ。

このアルバムに描かれる「僕」と「私」というふたつの主体は、それぞれがそれぞれの地図を持ち、それぞれの記憶と、約束と、願いと、人生を抱きしめながら、ただ、彷徨い続ける。このアルバムで確かなものは、「音楽」だけだ。だからこそ、このアルバムは素晴らしい。本作を聴き終えてから、ふとした瞬間に考えてしまう。「僕」と「私」は出会えたのだろうか? と。わからない。でも、ひとつ断言できることがある。「わからない」とは、希望なのだ。

音楽って遥か昔から、なにかとなにかを繋ぎ合わせたり、なにかとなにかの間を流れるものだったと思うんです。(佐藤)

—僕がアルバム『World Atlas』を聴いて思ったことは、前作『What a Wonderful World Line』(2016年)の「次」が明確に描かれている作品だな、ということでした。「World Line=世界線」というものがある。じゃあ、ひとつの世界線とひとつの世界線をどのように交わらせていこうか? という問いかけが、このアルバムの基盤になっているのかな、と。アルバムの全体像は、いつ頃から見えはじめたのでしょうか?

佐藤(Key,Cho):まず、“青空のラプソディ”(2017年1月リリース)を作ったあたりから3rdアルバムのことをイメージしはじめて、その段階で『World Atlas』っていうタイトルも出てきました。なので、前回のツアーは『Looking for the World Atlas Tour 2017』……つまり、「世界地図を見つけにいく旅」というタイトルにして。

僕らはデビュー前から「世界線」という言葉を使ってきましたけど、そこには「平行世界」という意味合い含め、いろんな可能性を込めているんです。たとえば、僕ら自身の場合、アニメのタイアップもたくさんやっているけど、それぞれのアニメの物語も、「fhánaという大きな物語のひとつなんだ」という意識があって。

左から:佐藤純一、towana
左から:佐藤純一、towana

—fhánaのこれまでのアルバムは、「アニソン」という個々のアニメの物語を背負った楽曲が寄り集まることで、より大きな物語が生み出されている、という印象がありました。もちろん、それは本作でも言えることだと思うんですけど。

佐藤:最初にタイトルをつけたときは、『World Atlas』はこれまでの活動の集大成であり、到達点という意味合いだったんです。遂に完成した世界地図、みたいな。でも、アルバムが完成した2018年の今となっては、タイトルの意味合いは自分たちのなかでもだいぶ変わってきたんです。むしろ今は、これから「本当の旅」に出るために必要な地図、というイメージで。

—当初、目的地だと思っていた場所が、実は出発点だった、ということですか?

佐藤:そうなんです。旅に出るときって、手ぶらでは行かないじゃないですか。たいていは、Googleマップとかガイドブックを見たりして、イメージを膨らませながら旅をするもので。このアルバムは、そういう旅に出る人の背中を押す地図になってほしいなと。慣れ親しんだ場所から離れて、普段行かない場所に行く――つまりは「他者に出会う」、そのために必要な地図という感覚が、このアルバムにはあるんです。

—それだけfhánaというバンド自体が、「他者に出会いたい」というモードになってきた、ということでしょうか?

佐藤:そうですね……でも、「他者に出会う」って、2ndアルバムのときも言っていたんですよ。ただ、この1年ぐらいで、それが観念的なものではなくて、具体的なものになっている感じがしていて。それまでの僕らがいた場所って、言ってしまえば「箱庭」的な場所だったのかもしれないなって思うんですよ。「自分たちが思う『いい曲』を作りました。どうぞ、ご査収ください」みたいな(笑)。

—(笑)。

佐藤:箱庭って、隅から隅まで見れるじゃないですか。これまでの僕らには、自分たちで見えない部分や、わからない部分がなかったんです。

—全てが計算できていたし、想定の範囲内だった。

佐藤:そう。でも、「ほんとう」の世界は影になっていて見えない闇の部分や、矛盾がたくさんあって。そういう闇や矛盾があるからこそ、光の当たる部分が美しく輝くんじゃないかって。それに、“青空のラプソディ”が大きかったんですよね。あの曲はYouTubeの再生回数も今までで一番多かったし(2018年4月時点で1900万再生)、自分たちが知らない、全くイメージしていなかった人たちが聴いてくれていたりして。あの曲以降、海外でのライブもたくさんやらせてもらったし、日本でも、いろんなクラブイベントでかかっていたみたいで。「fhánaの曲でみんなが踊っていたよ」なんていう話を聞くと、「へぇ、そうなんだ」って……。

佐藤純一

—自分たちの作った曲が、自分たちが想像もしていなかった世界を見せてくれたんですね。“青空のラプソディ”は、みなさんが踊っているミュージックビデオも印象的でした。「クラブでかかっていた」ということですけど、やっぱり「踊る」という身体的な行為を他者と共有することは、大きな力を生むんですよね。精神的な繋がりとは全く違う。

佐藤:そうですね。人と人が考えや感情をわかり合うのは、端から無理なので。だからこそ、体験を共有することは希望になるなって思います。同じ体験を共有した人同士は、その瞬間は気持ちがリンクしたりするものじゃないですか。それに、音楽って遥か昔から、なにかとなにかを繋ぎ合わせたり、なにかとなにかの間を流れるものだったと思うんですよ。コミュニケーションのツールとなって人と人とを繋いだり、それこそアニソンなら物語と映像と人とを繋げたり、なにか神聖な儀式とかだったら、あちら側の世界とこちら側の世界を繋げたり。その力に対しては、僕自身、疑ったりしたことはないんです。

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リリース情報

fhána『World Atlas』初回限定盤
fhána
『World Atlas』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2018年3月28日(水)発売
価格:4,780円(税込)
LACA-35713

[CD]
1. World Atlas
2. 青空のラプソディ
3. 君の住む街
4. Do you realize?
5. わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~ <ALBUM Ver.>
6. reaching for the cities
7. ユーレカ
8. アネモネの花
9. star chart
10. Rebuilt world
11. ムーンリバー
12. Hello!My World!!
13. calling
14. It's a Popular Song
[Blu-ray]
1. “World Atlas”PV
2. “わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~”PV
3. “Hello!My World!!”PV
4. “ムーンリバー”PV
5. “青空のラプソディ”PV
6. “calling”PV

『-fhána Looking for the World Atlas Tour 2017 at Zepp DiverCity-』
1. Rebuilt world
2. little secret magic
3. Antivirus
4. ムーンリバー
5. 青空のラプソディ
6. 君という特異点 [singular you]
7. 光舞う冬の日に

fhána『World Atlas』通常盤
fhána
『World Atlas』通常盤(CD)

価格:3,240円(税込)
LACA-15713

1. World Atlas
2. 青空のラプソディ
3. 君の住む街
4. Do you realize?
5. わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~ <ALBUM Ver.>
6. reaching for the cities
7. ユーレカ
8. アネモネの花
9. star chart
10. Rebuilt world
11. ムーンリバー
12. Hello!My World!!
13. calling
14. It's a Popular Song

イベント情報

『fhána World Atlas Tour 2018』

2018年5月27日(日)
会場:北海道 札幌KRAPS HALL

2018年6月9日(土)
会場:愛知県 名古屋ボトムライン

2018年6月17日(日)
会場:大阪府 Zepp Namba

2018年6月24日(日)
会場:東京都 Zepp DiverCity

プロフィール

fhána
fhána(ふぁな)

佐藤純一(FLEET)+yuxuki waga(s10rw)+kevin mitsunaga(Leggysalad)のインターネット3世代によるサウンドプロデューサーと、ボーカリストのtowanaによるユニット。2013年夏、TVアニメ『有頂天家族』のED主題歌『ケセラセラ』でメジャーデビュー。「わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~」に至るまで、13作品ものアニメで主題歌を担当し、タイアップ曲では作品の世界観に寄り添いながらも、アニソン/J-POP/J-ROCK/日本/海外などの垣根を超えた軽やかなスタンスで、音楽への挑戦を続けている。2018年3月28日、3rdアルバム『World Atlas』をリリース。

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