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市原えつこが考える、テクノロジーを用いた新しい「弔い」の形

市原えつこが考える、テクノロジーを用いた新しい「弔い」の形

スパイラル『Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:佐藤麻優子 編集:宮原朋之

作品という枠を超えて、現実社会のなかで事件的なものとして受け取ってもらえるほうが面白い。

—市原さんは、まもなく始まるグループ展『Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる』に、同世代の女性アーティストと並んで参加予定です。このタイトルである「まつり、まつる」には、祭り、奉り、祀り、政り、纏りなど多層的な意味が込められているとか。

市原:参加アーティストのみなさんも、立体、写真、陶芸とアプローチはさまざまで、扱うテーマも偶像崇拝、異文化間の差異と共通項など、多彩ですね。同世代の女性作家さんたちということで、ご一緒できるのはすごく楽しみです。

(左上)久保寛子『土頭(つちあたま)』(右上)市原えつこ『デジタルシャーマン・プロジェクト(左下2点) スクリプカリウ落合安奈『KOTOHOGI』(右下)桝本佳子『橘/皿』
『Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる』(サイトを見る
(左上)久保寛子『土頭(つちあたま)』(右上)市原えつこ『デジタルシャーマン・プロジェクト(左下2点) スクリプカリウ落合安奈『KOTOHOGI』(右下)桝本佳子『橘/皿』

—今こうした展覧会が企画される背景について、市原さんはどう捉えていますか?

市原:最近は、文化人類学的なアプローチに関心を持つアーティストが多い気がしています。それは最先端のものへの関心の集中から少し離れて、より長い射程を持つものに関心が向いているのかなと感じます。関連して、レイヤーや切り口こそ様々ですが、特に私の世代周辺では「不可視なもの」への関心はすごく高いと感じますね。私は『デジタルシャーマン』『都市のナマハゲ』に加えて、3Dプリントで作った縄文土器を前にロボットが祝詞(のりと)を唱える新作を発表します。

—市原さんは「まつり」も含む儀式や慣習を再考する際に、なぜテクノロジーを媒介にえらぶのでしょうか?

市原:ここまでのお話に加えてひとつ言うなら、テクノロジーを介することで、それが現実世界で作動した時に強いニュース性が出てくるからです。私は『虚構新聞』や、絵本の『はれときどきぶた』(著者:矢玉四郎、発行:岩崎書店)のような荒唐無稽なものが大好きなんですが、作品においても「もしありえないことが実際に目の前で起こったら?」ということに関心があります。

—全くのフィクションではなく、現実に食い込むということですね。

市原:たとえば『デジタルシャーマン』のコンセプトを映画のように撮ることもできるとは思います。でも、すでに存在するロボットを使い、サービス化の可能性があるものとして世に出すと、『日経新聞』の夕刊一面でドンと大きく紹介してもらえたり、それゆえのリアルな反応があるんです。そうやって作品という枠を超えて、現実社会のなかで事件的なものとして受け取ってもらえるほうが面白いなと。

それと、私はちょっと商売人気質もあるので、サービス化を目指す意欲のひとつに営利目的の動機もなくはないですが。クリエーターにとってお金は自分のセンスや発想を形にするために、必要不可欠な燃料のようなものなので、もっとスケールの大きいプロジェクトを具現化するためにも、ライセンスビジネスなどの不労所得には憧れます(笑)。こう言ってよいのかわかりませんが、神聖なものと俗っぽいもの、両方好きなのでしょうね。

市原えつこ

—新しい儀式をやってみたいというのも、やはり展示を超えた社会の反応への希求が強いからでしょうか?

市原:そうですね。メディアアートとの出会いを振り返ると、私が最初に「いいな」と感じたものは、アーティストが研究機関や企業と風通しよく協働しているものが多かったように思います。そういうオープンな環境で作られたものは、誰でも直感的に面白いと思えるものが成立しやすくて、私の目指すものと親和性が高いですね。

—ユニークな立ち位置ながら、ご本人はメディアアートの先人たちにリスペクトを抱いて活動していらっしゃるのですね。冒頭の話題に戻ると、『アルスエレクトロニカ』での栄誉賞の受賞にはどんな想いがありますか。

市原:『アルス』はずっとひとつの目標だったので、すごく嬉しいです。「アーティストもどき」として会社員の傍らで活動し始めた2011年から7年少し経ち、ようやくそれなりになれたのだとしたら「みなさんここまで育ててくださって本当にありがとうございます」という気持ちです。

—するとやっぱり、その想いを伝える謝恩の「儀式」も?

市原:オーストリアでの『アルスエレクトロニカ・フェスティバル』から帰ってきたころに、ぜひ開催できたらと思います!

市原えつこ

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イベント情報

『Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる』

『Ascending Art Annual Vol.2 まつり、まつる』

会期:2018年7月19日~8月5日(日)
会場:東京都 表参道 スパイラルガーデン(スパイラル1F)

画像:(左上)久保寛子『土頭(つちあたま)』(右上)市原えつこ『デジタルシャーマン・プロジェクト(左下2点) スクリプカリウ落合安奈『KOTOHOGI』(右下)桝本佳子『橘/皿』

久保寛子 作品公開制作

日時:2018年7月18日(水)11:00~20:00
会場:東京都 表参道スパイラルガーデン(スパイラル1F)
申込不要、観覧無料

市原えつこ トーク「日本の弔い、祭、儀式のリデザイン」&「顔面3Dスキャン体験」

日時:2018年7月28日(土)14:00~15:30
会場:東京都 表参道 スパイラルガーデン(スパイラル1F)
申込不要、参加無料

参加型盆踊りパフォーマンス『OBAKE音頭』

日時:2018年7月22日(日)14:30~(1時間程度を予定)
会場:東京都 表参道 スパイラルガーデン(スパイラル1F)
出演:快快-FAIFAI-
音楽:山中カメラ
申込不要、参加無料

プロフィール

市原えつこ(いちはら えつこ)

メディアアーティスト、妄想インベンター。1988年、愛知県生まれ。早稲田大学文化構想学部表象メディア論系卒業。日本的な文化・習慣・信仰を独自の観点で読み解き、テクノロジーを用いて新しい切り口を示す作品を制作する。アートの文脈を知らない人も広く楽しめる作品性から、国内の新聞・テレビ・Web媒体、海外雑誌等、多様なメディアに取り上げられている。主な作品に、大根が艶かしく喘ぐデバイス『セクハラ・インターフェース』、虚構の美女と触れ合えるシステム『妄想と現実を代替するシステムSRxSI』、家庭用ロボットに死者の痕跡を宿らせ49日間共生できる『デジタルシャーマン・プロジェクト』等がある。第20回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞を受賞、総務省異能vation(独創的な人特別枠)採択。2018年に世界的なメディアアート賞であるアルスエレクトロニカInteractive Art+部門でHonorary Mention(栄誉賞)を受賞。

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