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King Gnu常田大希の野望と目論み 次の時代を見据える男の脳内

King Gnu常田大希の野望と目論み 次の時代を見据える男の脳内

King Gnu『Flash!!!』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:YAMA 山添雄彦 編集:山元翔一

俺、Oasisの“Live Forever”が超好きなんですけど。

—King Gnuのバンドロゴには、「JAPAN MADE」という言葉が刻まれていますよね。それに『Tokyo Rendez-Vous』も、タイトルが示すように、「東京」を連想させるモチーフが散りばめられたアルバムだった。「日本」や「東京」というモチーフがKing Gnuにとって重要となっているのは、なぜなのでしょうか?

常田:まず、俺らはインターネット世代なので、いくらでも海外のものに触れられるじゃないですか。俺たちにとっては、海外の文化の影響は自然と受けるし、それを自分たちの音楽に還元していくのは、あまりに自然なことで。音楽的な国境がなくなっているって、すごく感じるんですよね。J-POPシーンは少し特殊ですが。

だから、たまに「日本にも洋楽っぽいバンドが増えている」とか、「最近の日本の音楽シーンは世界基準に近づいている」みたいな話を聞いたりするんですけど、それも別に大した話ではないな、と思う。それが、いいことなのかどうなのかも疑問だし。

King Gnu『Tokyo Rendez-Vous』を聴く(Apple Musicはこちら

常田:そういう感覚をベースに持った世代として、なにをすべきか? っていうことをすごく考えるんですよね。……俺、Oasisの“Live Forever”(1994年)が超好きなんですけど。

—1992年生まれの常田さんにとって、Oasisは生まれた頃に出てきたバンドですよね。

常田:Oasisがイギリスであの曲を演奏しているときのお客さんの感じって、すごいんですよね。イギリスという国のなかから生まれたOasisというバンドが、彼らの言葉で、彼らの生い立ちを背負って演奏するからこそ、同じイギリスで暮らす若者たちが熱狂して、涙するっていう……あれを、俺らは俺らのコミュニティーで目指さなきゃいけないと思っています。King Gnuという日本で活動するポップスのグループをやっている上で目指す先は、そこだと思っていますね。

常田大希(King Gnu)

俺らの歌詞は、すごくポジティブだと思いますよ。ポジティブじゃないことは、別に歌おうとは思わない。

—音楽に国境がなくなっているいまだからこそ、土地や出自というものがリンクすることで生まれるエネルギーを求めている。では、たとえばOasisの場合、イギリスのなかでも「労働者階級」というバックグラウンドが、同じ立場にいる聴き手との精神的な繋がりを強めた、という見方もありますよね。そういう意味で、いまの日本の若者たちとKing Gnuの間には、具体的にどういった繋がりが生まれ得ると思いますか?

常田:う~ん……デモのように盛り上げるメッセージ性はKing Gnuに皆無ですけど、普通に東京で暮らしている若者が思っていることを歌ったら、共感も生めるんじゃないかと思っていますね。

たとえば「人を殺したい」なんて普通に思っているヤツは変わりものだし、そいつは共感を生めないと思うけど、相当な狂人ではない限り、自分が思っていることって、全員とは言いませんが、他の人も思っていることだったりすると思うんですよ。それにOasisだって「俺らは労働者階級だ」みたいなことをあからさまに歌うのではなく、もっと自然に自分たちが思ったことを歌っていたんだと思うんです。俺らの歌詞もそういう感じだったらいいなと。

—なるほど。たしかに『Tokyo Rendez-Vous』に収録された“McDonald Romance”などは顕著ですけど、描かれているのは、すごく等身大の心象風景ですよね。<もう財布の底は見えてしまったけど/それさえも笑い合った それさえも恋だった。>っていう……前提となっている景色や状況は決して満たされているわけではないんだけど、でも、そこには間違いなく2人だけの幸福があるっていう。

常田:まぁ……満たされてはいないですからね。金もないし、車も持っていないし。でも、それらがあれば満たされるような話ではないし。それに、満たされていなくても、不幸ではないので。その点は、いま東京で暮らす自分の、自然でリアルな言葉を歌いたいなって思います。ただ、俺らの歌詞は、すごくポジティブだと思いますよ。ポジティブじゃないことは、別に歌おうとは思わないです。

King Gnu『Tokyo Rendez-Vous』収録曲

<ただ下り坂を猛スピードで駆け抜ける>だけですね。その先どうなるかは、いまの俺にはわからない。

—改めてなんですけど、いまKing Gnuはどんどんと活動の規模を大きくしているし、King Gnuのライブを観ると、ポップミュージックとしての「いま、この瞬間の熱狂」というものが間違いなく存在していることを感じるんです。渦のなかにいる現在の心境を、最後に聞かせていただければ。

常田:……怖いことだな、とも思いますけどね。いまはまだ、アンチとかはそんなに多くはないでしょうけど、これから先、褒めるヤツも貶すヤツもいっぱい出てくるでしょうし。そういうところで生まれるエネルギーって、想像以上なんだろうなと思うんです。

大勢の人が喜んでいる姿に、俺の想像以上にクリエーションは引っ張られると思うんですよ。そういう未知の力は感じはじめていますね。規模が上がっていって、人が求めているものと自分がかっこいいと思うものが食い違ってる事を感じてしまったとき、それに対して自分はどうするんだろう? っていう怖さ……いま、それはすごくあります。

—こういう取材の場で、「どれだけ売れても周りには流されないですよ」なんてリップサービス的に言い切ってしまうこともできると思うんです。でも、そう言い切らないところを見ても、やっぱり常田さんは自分自身に対して、すごくリアルな方だなと思います。

常田:そうっすね……まぁでも、波を楽しみたいなと思います。“Flash!!!”の歌詞にもありますけど、<ただ下り坂を猛スピードで駆け抜ける>だけですね。その先どうなるかは、いまの俺にはわからないです。

常田大希(King Gnu)

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リリース情報

King Gnu
『Flash!!!』

2018年7月13日(金)配信リリース

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  • プロフィール

    King Gnu(きんぐ ぬー)

    東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター・常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt.Vo.)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo,Key)の4名体制へ。『SXSW2017』、『Japan Nite US Tour 2017』出演。2017年4月26日、バンド名をKing Gnuに改名し新たなスタートをきった。

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