広告と映画の境目にあるブランデッドムービーとは?現在地を『BRANDED SHORTS』の取り組みから知る

企業のブランデッドムービーにフォーカス『BRANDED SHORTS』とは?

今年も『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』(以下、SSFF & ASIA)が開催された。

同映画祭は、俳優の別所哲也氏が米国で出会った「ショートフィルム」を新しい映像ジャンルとして日本に紹介したいとの想いから1999年に創立され、2004年に米国アカデミー賞公認映画祭に認定された。アジア最大級の国際短編映画祭として若手クリエイターの才能発掘と育成を目的に活動している。

2025年のグランプリはフィンランドのファビアン・ムンスターヤーム監督『破れたパンティーストッキング』が受賞。ライブアクション部門(インターナショナル、アジアインターナショナル、ジャパンの各カテゴリー)およびノンフィクション部門、アニメーション部門の各優秀賞5作品が、翌年の『アカデミー賞』短編部門へのノミネート候補とされる権利を獲得しており、世界への登竜門となっている。

そんな多様な部門を展開する『SSFF & ASIA』のなかで、「ブランデッドムービー」に焦点をあてた『BRANDED SHORTS』という部門があるのをご存じだろうか。ブランデッドムービーとは、企業やブランドが顧客との信頼関係の構築や共感を生み出すことを目的として制作する、物語性の高い映像コンテンツのこと。今年で10周年を迎える同部門が設立された背景について、映画祭のプロジェクト担当は次のように語る。

「広告と映画の境目にあるブランデッドムービーが海外で登場しはじめたのは、90年代。例えば、BMWがクエンティン・タランティーノを起用して、ひとつの短い映画としてPR用のムービーを制作していました。

2015年はちょうど過渡期で、国内でも多くの企業が動画マーケティングに力を入れはじめ、ブランデッドムービーを制作する企業も増えた時期です。時代に対応するために、『SSFF & ASIA』では映画祭の視点でブランデッドムービーを賞賛する取り組みを立ち上げました」

近年は動画需要の高まりとともに『BRANDED SHORTS』の認知度も上昇傾向で、今年は海外から406本、国内から255本のエントリーがあったという。また、動画活用の広がりに合わせて、いくつかのアワードが設けられているそうだ。

「現在、インターナショナル部門、ナショナル部門、HR部門、観光映像大賞観光庁長官賞、パーソナルブランディングアワードの5部門があります。観光映像大賞は、従来のいわゆる観光プロモーション動画ではなく、その街を舞台にしたストーリ-性が感じられるショートフィルムとして発信する自治体の取り組みが増えてきたことが背景にあります」

『BRANDED SHORTS』という祭典を開催することで、赤坂という地域をブランディングする

そんな『BRANDED SHORTS』の授賞式が、7年前から赤坂インターシティコンファレンスで開催されている。その背景には、開催地を提供する日鉄興和不動産の「赤坂から文化とビジネスを発信したい」という想いがあったという。

「地域をつくる」という観点から『BRANDED SHORTS』が果たす役割について、日鉄興和不動産の代表取締役社長・三輪正浩氏は、今年のアワードのセレモニーにて以下の通り話している。

「我々はエリアの価値を上げるということを考えています。エリアの価値を上げる方法には、イベントの開催、認証の取得、スマートシティ化などさまざまです。その多様な方法をもちいてエリアの価値を上げていく努力をしているわけですが、最近はもの消費よりこと消費というトレンドがあります。音楽はそのわかりやすい例ですね。ショートフィルムは企業の発信にもなり、こと消費という流れにもあっているという観点から、エリアマネジメントのひとつの武器だと考えております」

井桁弘恵主演『I THINK』。制作のこだわりと込められた想いとは

『BRANDED SHORTS』と日鉄興和不動産の協業がスタートしてから7年になる今年、同社は初のブランデッドムービー『I THINK』を制作した。主演は日鉄興和不動産のイメージキャラクター・井桁弘恵さん、監督はMVやテレビドラマなど幅広いジャンルで活躍する森垣侑大さんが務めている。

「企業理念である『人と向き合い、街をつくる。』に少しでも共感していただけるようなフィルムにしたいと考えて制作しました」と、日鉄興和不動産広報室の担当者は、同作の制作にこめた思いについて語っている。続けて、想いをかたちにするためのこだわりについても聞いた。

「主演の井桁弘恵さんを中心に『人との向き合い』を大切に描くことを意識しました。街の人々、会社の同僚、上司、なんでも話せる親友、新人の頃の回想など。企画スタート時には、飽きずに見られるのは5分程度では、と想定していたのですが、最終的には15分33秒になりました。尺を気にするより、丁寧に描いて想いを伝えることを優先した結果ですね」

「映像的には『リアリティがあって前向きなトーン』を大切にしました。でも映像的なこだわり、素晴らしさは監督、カメラマン、ライトマンをはじめとした現場スタッフの方々のこだわりとお力だと思います」

また完成作品をみて、改めてキャスティングについても感動したと語る。

「キャスティングに関しては、脚本をもとに監督が思い描いた世界観のなかで選定いただきました。主人公の井桁さんはもちろん、どの出演者もその役柄における主役という印象で、仕上がった作品を見てあらためて素晴らしいキャスティングだったと感じています」

『I THINK』は2025年『BRANDED SHORTS』のナショナル部門にノミネートされたほか、日鉄興和不動産YouTubeチャンネルでも1万3,000回を超える再生回数を記録しているという。

より多くの企業にブランデッドムービーを。『THINK by BRANDED』始動

『BRANDED SHORTS』開催10周年をむかえる今年は、活動をさらに拡張し、セミナー&ワークショップシリーズ『THINK by BRANDED』が開催されている。日鉄興和不動産と『BRANDED SHORTS』が連携して、企業や自治体がブランデッドムービーを制作するノウハウやスキルを学ぶ、年間全5回のイベントだ。

開催の背景について、映画祭の担当者は次のように語る。

「制作のノウハウを共有しハードルを下げることで、ブランデッドショートを制作する企業が増えることを目指しています。日鉄興和不動産様に自社で得たノウハウをシェアいただくことで、赤坂エリアのテナント企業やワーカーはもちろん、より多くの企業担当者に伝えていきたいと考えています」

また『THINK by BRANDED』を企画した日鉄興和不動産の髙島一朗さんは、セミナー&ワークショップの発表イベントにて意気込みを以下の通り語った。

「考え続ける大切さを感じている。どうやったら企業のメッセージを伝えられるムービーを作れるのか、ストーリーを作っていけるか、それをどう伝えていくかというステップを、参加者と一緒に研究していきたい」 (日鉄興和不動産公式HPより)

9月30日に行われた『THINK by BRANDED』ローンチイベントを皮切りに、10月には第1回目のセミナーとして、カンヌライオンズでも審査員を務めた博報堂執行役員・木村健太郎氏を講師に迎え、「企業の"人格"を映像で伝える:広告と映画の間にあるブランデッドストーリーテリング」をテーマに講義が行われた。

12月16日には第2回「自社のサービス・ブランドが持つ"物語の種"を考える」が開催され、東レ株式会社コーポレートコミュニケーション部門ブランドコミュニケーション室室長・鈴木太樹氏が登壇した。

動画需要がますます高まりを見せる昨今。クリエイターや企業担当者にとって学びの多いセミナー&ワークショップになりそうだ。

THINK by BRANDED
第2回目:「自社のサービス・ブランドが持つ"物語の種"を考える」
申し込みURL:https://thinkbybranded1216.peatix.com/

第3回目:「企業の目的をどう映像に翻訳するかを考える」 (2026年2月開催予定)

第4回目:「ブランデッドムービーの広報・展開を考える」(2026年4月開催予定)

第5回目:「シリーズの集大成としてブランディングムービーの企画書作成を考える」(2026年6月開催予定)


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