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日本のプロデュース文化は異質? 新津由衣×保本真吾が海外と比較

日本のプロデュース文化は異質? 新津由衣×保本真吾が海外と比較

新津由衣『Neat's ワンダープラネット』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一

現代の日本の音楽シーンにおける「プロデューサー」のイメージは、一体どのようなものだろうか? 今もJ-POP黄金期の華々しい印象を持っている人もいるかもしれないし、より職人的な「サウンドプロデューサー」を連想する人もいるかもしれない。何にしろ、もしも「プロデューサーはアーティストを自らの色に染め上げてしまう」という認識だったとしたら、それはそろそろ改めるべきかもしれない。

これまでDIYな活動を展開してきたNeat'sが本名の「新津由衣」に改名し、初となるフルアルバム『Neat's ワンダープラネット』を完成させた。本作の誕生の背景として大きかったのが、SEKAI NO OWARIやゆずなどを手がけるプロデューサー・保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)との出会いだった。

近年は「分業制」という言葉に注目が集まるなど、世界的にプロデューサーの存在感が高まっている時代であり、本作もそんな時代を象徴する作品だと言うことができる。新津と保本との対話から、今の時代におけるアーティストとプロデューサーのあり方を紐解くことは、「多様性」というアルバムのテーマにも繋がっていった。

セルフプロデュースの時代からはひと回りして、「やっぱり、プロデューサーがついたほうがいいね」っていう空気を最近よく感じる。(保本)

—今は「分業制」という言葉がよく使われるように、世界的に見てもプロデューサーの役割がすごく大きな時代だと思います。まず保本さんにお伺いしたいのですが、プロデューサーの役割をどのように捉えていらっしゃいますか?

保本:海外のプロデューサーは、自分でアーティストを見つけてきて、音源を作り、自らレーベルを探したりするのがほとんどです。僕はその精神がすごく大事だと思うんですよね。確かに、今は分業制が多くて、日本の音楽シーンを見ても、「1アーティスト、1プロデューサー」って、最近はあまり見ないです。

左から:新津由衣、保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)
左から:新津由衣、保本真吾(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)

保本:プロデューサーを雇うにはお金がかかるから、「シングルだけプロデューサーを入れて、アルバム曲はバンドで」とか、あるいは、いろんなプロデューサーが介在して、1つのアルバムを作ることも多い。

—まさに、そういう作品が主流ですよね。

保本:でも、そうなるとアルバムとしての統一感は薄れるから、全体の世界観を伝えるには、僕はやっぱり「1アーティスト、1プロデューサー」が一番いいと思う。もちろん、今はアルバムの時代でもなくなってきてるし、1曲単位で特化して作るというのもわかる。ただ、新津由衣のようなアーティストの場合、1曲だとすべてを伝えられないから、アルバムを最初から最後まで聴いてもらうことが大事だと思うんです。

保本:今の時代からは逆行しているかもしれないけど、僕はもう一度「1アーティスト、1プロデューサー」の時代が来るような気がしています。セルフプロデュースの時代からはひと回りして、「やっぱり、プロデューサーがついたほうがいいね」っていう空気を最近よく感じるので、またそういう時代が来るんじゃないかなって。

2015年には、「宅録女子」っていう括りのなかで活動するのはもう嫌だなぁと思っていた(新津)

—新津さんは長らくDIYのスタイルで、宅録での楽曲制作をメインに活動していました。そんな新津さんがプロデューサーと組んで作品を作ったというのは、結果的に時代を象徴しているようにも思います。

新津:保本さんと知り合った2015年には、「宅録女子」っていう言葉がどんどん世の中に溢れてきていて、その括りのなかで活動するのはもう嫌だなぁと思っていたんですよね。もともと、海外でGrimesが話題になり、日本ではまだそういう存在がいないから面白いと思ってNeat'sをはじめたのですが、それから4~5年経って、日本でもアーティストがDIYで何でもやるっていうスタイルが主流になっていったので。保本さんと出会ったのは、そこから脱したいと思いつつも、「でも、どうしたらいいんだろう?」っていうタイミングだったんです。

新津由衣
新津由衣

—そのためのアクションのひとつが、AZUMA HITOMIさんと始めた「新世界★虎の穴」だったと思うんですけど、言ってみれば、あれも見事な分業制でしたよね(参考記事:新津由衣&AZUMA HITOMI、なぜタイガーマスク姿で活動中?)。

新津:確かに、まったく違う脳みその2人が一緒にやってたわけですからね(笑)。もともと私は自分と違うものを持ってる人と一緒に何かをするのって、苦手なタイプなんです。何でも自分で決めたがるので、他の人の意見を受け入れるのは難しいことだったんですけど、今回のアルバムを作ったことで、それができるようになりました。それはこのアルバムのテーマでもあるし、私のこれからの人生のテーマでもあると思ってるんです。

—つまり、「他者を受け入れる」ということが?

新津:全員が違う生きものなんだって理解することですね。今って時代的にも「多様性を受け入れよう」っていう流れになっていて、このアルバムを届けるべき時代だなって思うんです。一人ひとりが違うからこそ、「1+1」がもしかしたら「5」になるかもしれない。そういうことを楽しむ時代だと思う。

でも、そのためには一人ひとりがちゃんと自分であることが大事で、自分を信じられなかったら、相手のことも信じられないんですよね。歌詞を読んでもらえればわかると思うんですけど、このアルバムは他者を受け入れようと頑張ってる過程を描いた作品でもあるんです。

新津由衣
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リリース情報

新津由衣『Neat's ワンダープラネット』
新津由衣
『Neat's ワンダープラネット』(CD)

2018年7月11日(水)発売
価格:3,024円(税込)
SSSA-1001︎

1. Overture
2. FLAG
3. ワンダープラネット
4. 愛のレクイエム
5. Bye-Bye-Bee-By-Boo
6. Unite
7. フローズン・ネバーランド
8. スイム・イン・ザ・ワンダー
9. 月世界レター
10. ホップチューン
11. BIG BANG!

イベント情報

『Ethereal Pop 2018~ワンダープラネット~』

2018年10月28日(日)
会場:東京都 代官山UNIT
開場:16:00 / 開演:17:00
料金:4,500円(ドリンク代別)

プロフィール

新津由衣
新津由衣(にいつ ゆい)

1985年8月17日 神奈川県生まれ。3歳の頃、ディズニーランドに魅了され夢の世界の虜になる。以後、絵本作家&映画監督を目指して、ひたすら家で絵本作りやゴッコ遊びに励みながら女版ウォルト・ディズニーになろうと胸に秘める。2018年、SEKAI NO OWARI、ゆずなどを手掛ける音楽プロデューサーCHRYSANTHEMUM BRIDGEとタッグを組み、1stアルバム「Neat's ワンダープラネット」を完成させた。

保本真吾(やすもと しんご)

プロデュースチーム「CHRYSANTHEMUM BRIDGE」のクリエイターとして、“SEKAI NO OWARI”や“ゆず”、“SKY-HI”、“androp”、“井上陽水”、“でんぱ組.inc”等のアレンジやサウンドプロデュースを手掛ける。また、楽曲提供や劇伴、ライブ音源制作やコンサートのサウンドプロデュースなど幅広く手掛けている。

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