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betcover!!の苛立ち ロックシーンへの愛憎入り交じる想いを語る

betcover!!の苛立ち ロックシーンへの愛憎入り交じる想いを語る

『NEWTOWN 2018』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:前田立 編集:山元翔一

betcover!!ことヤナセジロウは、憤っている。この国の音楽を取り巻く現状に対して、「ひとり」を許さないこの世界の在り様に対して、そしておそらく、自分自身に対しても――彼は憤っている。そして、彼のその怒りは、2nd EP『サンダーボルトチェーンソー』において、とても美しくも歪な形で発露している。

まるでザ・クロマニヨンズのように、意図的に「意味」をはく奪したかのようなシニカルな作品タイトル。ここに収められた5つの楽曲は、聴き心地のいい穏やかな旋律やリズムを持つがゆえに、一層ヤナセ自身が抱える鬱屈とした感情や痛みを生々しくあぶり出している。本作はどこか、ヤナセも敬愛するフィッシュマンズやスピッツの初期作品を思い出させる。偉大な先達たちの若き頃と同様、このアルバムでヤナセは、繊細な眼差しをたたえながら、怒りを怒りとして表現することもなく、どこかぎこちない笑顔を私たちに向けている。

ヤナセジロウは言う、「楽しそうにしてはいけない」と。「みんなが幸せでなければいけない」なんていう暴力がまかり通るこの世界で、たったひとり、彼が貫く愛と悪意は、とても優しい。

僕が多摩を好きなのは、「色味」が残っているから。

—『high school !! ep.』のリリース時以来、約1年ぶりのインタビューです(前回の記事:betcover!!はまだ18歳 大人への恐怖と逃避の音楽は、美しく響く)。今日は多摩ニュータウンの小学校跡地に来ていますけど、“セブンティーン”のミュージックビデオの撮影場所って、このあたりですか?

ヤナセ:あれは聖蹟桜ヶ丘の多摩川なんで、ちょっと近いですね。

—前回もお話していただきましたけど、やはり地元である多摩は、ヤナセさんにとって特別な場所ですか?

ヤナセ:そうですね。僕が多摩を好きなのは、「色味」が残っているからで。多摩の街を歩きながら空を見上げると、色が若干、黄色がかっていて、建物や木の輪郭が赤い感じがするんですよ。この色味は、昔のフィルム写真の色味に似ているなって思う。

科学的なことはわからないですけど、都会は、時代が進んで、空気の色味も変わったんじゃないかと思うんですよね。写真で言うと、東京の都心部は4Kっていう感じ。だけど、多摩はフィルムなんです。懐かしい感じがする。

ヤナセジロウ(betcover!!)
ヤナセジロウ(betcover!!)

—僕、多摩ニュータウンに来たのはほとんど初めてなんですけど、都心部と空気の色味が違うというのは、よくわかります。

ヤナセ:都会は、もっとライトな感じですよね。ブライトでライトな感じ。音楽もそうじゃないですか。今、売れている音楽って、音圧が高くて、ソリッドで、わかりやすい。でも、僕が好きなのは1980年代や1990年代の人たちだから。町田町蔵(ex.INU / 現在は町田康として活動)とか、じゃがたらとか、フィッシュマンズとか。……前回の取材のとき、フィッシュマンズの話しましたよね?

—あの頃のヤナセさんは、フィッシュマンズに出会ったばかりだったんですよね。

ヤナセ:あれからアルバムは全部集めて、DVDも毎日見て、この1年間はほとんどフィッシュマンズしか聴いていなかったです。全曲大好き。もう圧倒的にキちゃいましたね。さっき名前を挙げた人たちもそうですけど、彼らはミュージシャンというより芸術家だと思うんです。今の人たちの「かっこいい」のレベルじゃない。

最初は「なんだ、これ?」ってなるんだけど、わかるとドカン! と撃ち抜かれるようなかっこよさがある。そんな人、今の日本にはひとりもいないと思う。忌野清志郎は死んじゃったし……優しい人がいなくなっちゃったなって思うんですよね。

ヤナセジロウ(betcover!!)

—ヤナセさんは、どんな人が「優しい人」だと思いますか?

ヤナセ:優しい人って、人一倍過激だったりするんですよ。忌野清志郎、マイケル・ジャクソン、佐藤伸治(フィッシュマンズ)、どんと(ローザ・ルクセンブルグ、BO GUMBOS)、江戸アケミ(じゃがたら)……みんな死んでしまったけど、人一倍優しい人たちだったんじゃないかと思う。

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リリース情報

『平和の大使 / セブンティーン』
betcover!!
『平和の大使 / セブンティーン』(7inch)

2018年11月10日(土)、11月11日(日)よりNEWTOWN先行販売
価格:1,620円(税込)
TYO7S1009

[Side A]
1. 平和の大使
[Side B]
1. セブンティーン

イベント情報

『NEWTOWNジャム・コンサート』
『NEWTOWNジャム・コンサート』

日程:2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
出演(五十音順):
[10日]
阿部芙蓉美
おとぎ話
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ
クレモンティーヌ
柴田聡子
寺尾紗穂
七尾旅人
ロロ×EMC
[11日]
カネコアヤノ
折坂悠太(合奏)
曽我部恵一
betcover!!
Homecomings
眉村ちあき
ROTH BART BARON

プロフィール

betcover!!
betcover!!(べっとかばー)

betcover!!こと1999年生まれ多摩育ちのヤナセジロウのプロジェクト。幼い頃からアースウィンドアンドファイアなどブラックミュージックを聞いて育ち小学5年生でギター、中学生のときに作曲を始め2016年夏に本格的に活動を開始。2017年12月に10曲入り1st ep「high school !! ep.」を発売。収録楽曲「COSMO」がスペースシャワーTVの「it!」に決定。2018年5月にはサニーデイ・サービスの新作リミックスアルバム<the SEA>のリミックスを1曲手掛ける。同年8月に2nd ep「サンダーボルトチェーンソー」を発売、Apple Musicが選ぶ今最も注目すべき新人アーティストを毎週1組ピックアップし紹介する企画「今週のNEW ARTIST」に選出されるなど注目を集める。

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