
劇団子供鉅人11人インタビュー。関西時代から伝え続ける普遍の愛
『NEWTOWN』- インタビュー・テキスト
- 萩原雄太
- 撮影:豊島望 編集:川浦慧
いちばん見せたいのは、役者が持っている闇とか影の部分かもしれません。(益山貴司)
—作家であり、演出家である貴司さんとしては、創作にあたってどのような部分を大切にしているんでしょうか?
貴司:演技に関して言えば、役者がイキイキとしているかどうかはいつも気になります。他の芝居を観に行くと、上手くても役者が「死んでる」芝居はいっぱいあるんですが、下手でもいいからイキイキしていてほしいという気持ちがありますね。
—それによって、役者たちが輝いているところを見せたい?
貴司:それよりもいちばん見せたいのは、役者が持っている闇とか影の部分かもしれません。うちの役者は、普段無口でシャイな人が多く、どこか影の部分を持っている人が多いんです。そんな人々を無理矢理ライトの下に放り込む。すると、本人が予期していないような闇の深さであったり、鬱屈が舞台の上に現れてくるんです。そういう状態は、とてもおもしろいですね。
—人間のドロッとしたものが見えてくる。
貴司:うまく言葉に表現できずに鬱屈していることって、世の中にたくさんあるじゃないですか。そんな言葉では言えないことを飲み込んでくれるのが演劇という表現の素晴らしいところだと思います。人間の存在によって、ビジュアルによって、音楽によって、そんな言葉に表せないものを描き出すことができるんです。
—今回、多摩で開催されるカルチャーイベント『NEWTOWN』では、『ニュータウン / パラダイス』という書き下ろしの3人芝居を上演します。やはり、テーマは会場であるニュータウンを意識したものなのでしょうか?
貴司:まず、今年の9月にパルテノン多摩で上演した『夏の夜の夢』が100人で上演する作品だったので、その反動から小さな芝居にしたいと考え、寛司、古野、億の役者とトム・カラーツというベルギー人ピアニスト1人による作品にしました。そして、「ニュータウン」のイメージが発想の起点となっています。
ニュータウンって、高度経済成長の時代に新しい町が必要になって現れた町ですよね。けれども、少子高齢化によって過疎化してしまい、今では必要とされなくなりつつある。
キキ:ニュータウンって響きが、どこか寂しい感じがするもんね。「ニュー」って付いてるのに、すでに取り残されてる感じ。
—賑やかで楽しい子供鉅人の側面よりも、愛や切なさと正面から向き合うしっとりした作品になりそうですね。
貴司:億さんはあんな派手な帽子をかぶっていますが、決してああいう芝居にはなりません(笑)。3人芝居をすること自体が子供鉅人として初めてだし、実験的な公演ですね。
—『NEWTOWN』では、演劇公演の他に、音楽ライブや美術展、映画上映、マーケットなど多彩なイベントが用意されています。そんな場所で上演するにあたり、演劇ファン以外にはどんな部分を楽しんでほしいでしょうか?
貴司:以前、原宿のVACANTでやった『ハミンンンンンング』という公演では、普通のハンガーラックに蛍光灯を装着して、その装置と照明だけで演劇をしました。ただのハンガーラックが、窓に見立てられたり、扉に見立てられながら芝居が進行していくんです。僕が思う演劇のいちばんのおもしろさは、見ていた風景が一瞬にして変わったり、時空が変わってしまうような魔法がかけられているところ。
そもそも、若い役者がおばあちゃんをやるということも魔法のひとつですよね。お客さんの想像力とともに作り上げられていく演劇特有の魔法を味わってほしいです。
イベント情報

- 『NEWTOWN』
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2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)
時間:10:30~19:00(予定)

- 劇団子供鉅人
『ニュータウン / パラダイス』 -
2018年11月10日(土)、11月11日(日)
会場:東京都 多摩センター デジタルハリウッド大学 八王子制作スタジオ(旧 八王子市立三本松小学校)公演日時:
11月10日(土)13:45 / 17:15
11月11日(日)13:45 / 17:15
作・演出:益山貴司
出演:億なつき、益山寛司、古野陽大
演奏:トム・カラーツ(ピアノ)
チケット料金:2,000円 / 学生前売1,500円(要学生証)
プロフィール

- 劇団子供鉅人(げきだん こどもきょじん)
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05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。関西タテノリ系のテンションと骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。4度に及ぶ欧州ツアーや台湾公演など国内外にて精力的に公演中。近年は東京に拠点を移し、本多劇場にて出演者100人よる「マクベス」、お化け屋敷パフォーマンスでSICF19グランプリ受賞など勢力拡大中。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位。