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他人を拒絶してきた三上ちさこ いまは「みんなとエモく生きたい」

他人を拒絶してきた三上ちさこ いまは「みんなとエモく生きたい」

三上ちさこ『I AM Ready !』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:垂水佳菜 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

泣いていいよ。怒っていいよ。逃げていいよ。笑っていいよ。――シンガーソングライターの三上ちさこがリリースした13年ぶりのフルアルバム『I AM Ready !』は、聴く者にそう語りかけてくるようだ。あなたが、その存在の中に抱えるどんな感情も、否定しなくていいのだと。あなたが生きていること、それ自体が、肯定すべきことなのだと。

2000年代初頭、ロックバンド「fra-foa」のボーカルとしてデビューし、バンドの解散後もソロ活動を行っていた三上。しかし結果として、現在までに彼女がソロ名義で残した作品は、『わたしはあなたの宇宙』(2004年)と『Here』(2005年)という2枚のフルアルバム、そして、2012年に自主制作でリリースされたミニアルバム『tribute to…』のみ。しかし、2015年にSEKAI NO OWARIやゆず、井上陽水などを手がけるプロデュースチーム「CHRYSANTHEMUM BRIDGE」保本真吾との出会いで、状況は一変する。それから3年、紆余曲折の果てに産み落とされたのが本作だ。

この2018年に鳴り響く三上の歌は、まるで生を受けたばかりの赤子の産声のようであり、同時に、子を守る母親の優しい歌声のようでもある。復活を祝して、三上にじっくりと話を聞いた。

いまはつながりたいし、求めたいし、求めてほしいって、すごく思う。

—僕はfra-foa含め、三上さんのこれまでの活動をリアルタイムで追ってきた人間ではないんです。なので今回、13年ぶりのフルアルバム『I AM Ready !』で、初めてリアルタイムで三上さんの作品に触れることができて。率直な感想を言うと、この時代に、こんな歌を歌ってくれる人がいてうれしい、と思いました。

三上:ありがとうございます。

—僕は2曲目の“Ride on the Beetle!”がすごく好きなんですけど、この曲の<何もかもうまくいかない夜には / ぐちゃぐちゃになって泣き笑い合おうよ>というラインとか、すごくグッとくるんですよ。本当に、ぐちゃぐちゃになってしまいたい夜ってあるんですよね。その「ぐちゃぐちゃになりたい」という自分の感情を、三上さんの歌に許されるような感覚があったんです。

三上:「許し」って、究極の愛のような気がします。人を包むもの、というか。人間って不完全な生きものだから、いろいろやらかすじゃないですか。私も年齢的には随分大人になりましたけど、いまだに「お前、まだそんなことやっているのか!」ってよく怒られるんです(笑)。

自分自身がいまだに失敗しまくりだし、はみ出しちゃうし、「人間としてそれ、どうなの?」って思われるようなことをいっぱいやっちゃう。もちろん、その「やらかしてしまったこと」からなにかを感じて、学ぶことは絶対に大事だと思うんです。でもその上で、「許すこと」「許されること」って、いまの世の中にすごく必要な気がします。

三上ちさこ
三上ちさこ

—ちなみに、“Ride on the Beetle!”の歌詞の原風景となるような夜があったのでしょうか?

三上:“Ride on the Beetle!”の歌詞は、友達との関係を歌ったんです。その子と私は似たもの同士で、その子もダメなヤツなんです(笑)。その子が夜、フラッと私の家に来て、自分を責めてしまうことがあって。でも、そんなときでも「大丈夫。飲もうよ!」って、朝まで一緒に過ごしたりできる、そういう人でありたいなと思って、この曲は書きました。

—この曲のように、誰か対象を思い浮かべながら曲を書くということは、fra-foaの頃から一貫していますか?

三上:いや、昔は違いました。あの頃は、自分の孤独にとことん向き合って、自分の内側にどこまでも深く入り込んで、そこにあるものを掴み取って爆発させるっていうことを繰り返していたと思います。

そうすることで、自分と同じような孤独を抱えている人たちとつながれるんじゃないか? と思っていたんですよね。あの頃は、「絶対」なんてないと思っていたし、自分のことも信じられなかったし、他人のことも一切信じていなかったんですよ。

三上ちさこ

—「他人」というのは、「孤独」でつながることができた人たちですら?

三上:矛盾しているんですけど、お客さんのことすら、拒絶していたと思います。時間を割いて、お金を払って観に来てくれる人たちのことすら、「本当に私のことを好きなのかな?」って疑っていて。「私のこと好きだと言っても、ほかの人のことも好きでしょ?」みたいな……すごく捻くれているんですけど(苦笑)。

三上ちさこ

—なるほど。

三上:fra-foaの頃に立ったいちばん大きなステージが赤坂BLITZだったんですけど、あのときは本当に、自分を小さく感じていたんですよね。それで、「いまの自分には、このステージは大きすぎる」と思って、fra-foaをやめることにしたんです。

でもいまは、良い意味で鈍感になってきた気がします。「私があなたを必要としているから、力を貸してください」って頼りたい。相手が自分のことを好きかどうかわからないけど、とにかく、「私にはあなたが必要なんです」って、自分の愛情を際限なく届けたい……そういう方向に、気持ちが変わった気がします。

—それって、すごく大きな変化ですよね?

三上:そうですよねえ。いまはつながりたいし、求めたいし、求めてほしいって、すごく思う。私が、自分の音楽を聴きに来てくれる人を必要としているから、その人たちにも、私を求めてほしい。

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リリース情報

三上ちさこ『I AM Ready !』
三上ちさこ
『I AM Ready !』(CD)

2018年11月28日(水)発売
価格:3,024円(税込)
SSSA-1002

1. 1004
2. Ride on the Beetle !
3. Parade for Destruction
4. dear
5. The Secret
6. 孤独な星
7. Sea for Why
8. Let's get the Party☆
9. 春宵
10. Anti Star

イベント情報

三上ちさこ
『2019年ワンマンライブ・ツアー“I AM Ready! TOUR”』

2019年2月10日(日)
会場:愛知県 名古屋 ell.FITS ALL

2019年2月11日(月・祝)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2019年2月23日(土)
会場:宮城県 仙台 HooK

2019年3月2日(土)
会場:東京都 下北沢 GARDEN

料金:各公演5,000円(ドリンク別)

プロフィール

alcott
三上ちさこ(みかみ ちさこ)

1998年仙台にてバンドfra-foa(フラホア)を結成、2000年トイズファクトリーからメジャーデビュー。(代表曲は『澄み渡る空、その向こうに僕が見たもの。』『青白い月』『小さなひかり。』など。)全身全霊を振り絞るように歌う圧倒的なパフォーマンスで観る者を強烈に魅了し、旧赤坂BLITZにてワンマンライブを成功させるも、2005年にバンドは解散。その間、ソロ活動において2枚のアルバムと、自主制作で1枚のミニアルバムをリリース。観客側がそれぞれの才能を発揮できる場をライブで提供するなど、自分にしかできないライブを模索してきたが、先の見えない活動に行き詰まりを感じるようになっていた。そんな中、SEKAI NO OWARIやゆず、井上陽水などを手がけたCHRYSANTHEMUM BRIDGE保本真吾氏と出会い、「今の音楽シーンを覆すような、最高のアルバムを作ろう!」と意気投合、いろいろな試行錯誤と紆余曲折の末、3年という制作期間をかけついに渾身のアルバム『I AM Ready ! 』が完成した。fra-foaが解散してから、実に13年ぶりのフルアルバムのリリースとなる。

関連チケット情報

2020年10月31日(土)〜11月7日(土)
【動画配信】三上ちさこ 羽化する日in芸森スタジオ@札幌
会場:PIA LIVE STREAM(その他)

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