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三上亮×遠藤幹大 現代美術版ホームドラマは「家」が主人公?

三上亮×遠藤幹大 現代美術版ホームドラマは「家」が主人公?

三上亮、遠藤幹大『Under Her Skin』
インタビュー・テキスト
内田伸一
撮影:豊島望 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)

身体で感じて、知識を使って組み立てて、最初に得た身体的な感覚を表現する。(三上)

—三上さんから、さまよいの中で「鋭敏になる感じ」というお話がありましたが、たしかに、映像の中には、穏やかで美しい情景でも静かな緊張感のようなものを感じるシーンもあります。パッと見には変哲のない風景だけど、そこに何かがありそうで、はっきりとはわからないけど、そのまま近づいていくような。

遠藤:前作の『家と出来事 1971-2006年の会話』のときと同じように、今回も対象となる家の周囲をかなり歩き回りました。その中で、思わぬような過去の出来事にふれることが、何度もありました。たとえば、事件としても大きく報道された、すでに亡くなった父親が生きているように装って年金を受け取り続けていた家族が逮捕された年金不正受給事件(2010年)も、ここから割と近い場所で起こった出来事だった。

こうした事件性のある例も、麻雀を楽しむ4姉妹のどこかユートピア的な逸話も含めて、家は家族を社会から隠しておくものでもあるな、と思わせられました。

『家と出来事 1971-2006年の会話』Photo:KUTSUNA Yoichiro, Arecibo / 空家住宅を舞台にした、想像と現実の風景を重ね合わせたインスタレーション
『家と出来事 1971-2006年の会話』Photo:KUTSUNA Yoichiro, Arecibo / 空家住宅を舞台にした、想像と現実の風景を重ね合わせたインスタレーション
『家と出来事 1971-2006年の会話』Photo:KUTSUNA Yoichiro, Arecibo
『家と出来事 1971-2006年の会話』Photo:KUTSUNA Yoichiro, Arecibo

三上:このエリアの川向こうには、歴史的にも死のイメージにつながる側面がありますよね。江戸時代の仕置場(処刑場)跡地があったり。そうすると、あちらとこちらが接するのは「三途の河」なのかなとか。

—そうしたお話を聞くと、『Under Her Skin』というタイトルから改めてすごく色々なイメージがふくらみます。

三上:かつてこの近くにあった靴の工場って、皮を扱っていたんです。皮というのは、身体の内側と外界をへだてる境界でもある。そこから「内臓感覚」っていうキーワードも2人の間ではありましたね。これは僕ら2人以外には、あまりピンときてもらえていない気もするけれど(苦笑)。

遠藤:たしかに(笑)。でも、内臓感覚という言葉は、この地域が川に囲まれていることから始まって、人間も全体的に水でできているし、生まれるまでいる胎内は水風船のようなかたちでもある、という連想がありました。

—なるほど……。2人は、かなりロジカルに作品を組み立てていく印象もある一方で、出てくる表現は直感的な感覚が強いのも面白いですね。

三上:先に身体のほうで感じて、後から知識も使って組み立てていくことで、最初に得た身体的な感覚を表現する。そんなことができたら自分たちの作品として成立するな、という感覚はあります。

三上亮、遠藤幹大『Under Her Skin』メインビジュアル
三上亮、遠藤幹大『Under Her Skin』メインビジュアル(サイトを見る

—そういえば、会場に展示している半透明のオブジェ作品『コラーゲンの革靴』は、映像にも登場していました。その靴の工場はコラーゲンも扱っていたそうですね。『さいたまトリエンナーレ2016』のディレクターだった芹沢高志さんによるテキスト(「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」の広報誌に掲載)にある、この家があの靴を履き、街の今の様子を見るために外をさまよい歩いたのだろう、という解釈はとても素敵でした。これもひとつの、境界の行き来ですね。

『Under Her Skin』展示風景
『Under Her Skin』展示風景

三上:小津安二郎の『東京物語』で、老夫婦が訪ねた息子たちの家もこのあたりだったんですよね。夫婦の会話で「ここは東京のどのあたり?」「東京の端の方だよ」みたいなやりとりがある。

じつは『東京物語』の存在って、僕の中では今回の展示の通奏低音のようなものでもあるんです。これはネタバレ的になってしまうけれど、今回、会場にはもうひとつ『Fragments of Invisible』という作品があります。これはスピーカーから、この家にあった「暮らし」を連想させる音が流れるものですが、実際はこの家の中で『東京物語』の家屋内のシーンの動きを再現しながら録音したものです。

三上亮

—それは気づきませんでした! ここにもホームドラマの要素があった。

三上:はい、言われないと絶対に気づかないと思います(笑)。小津映画の登場人物の動きって、不思議ですよね。誤解を恐れずに言うと、無駄な動きが多い。無為の行動というか、はっきりした理由がある動きには見えないものが多くて、ただ「その行為がある」。そしてその行為がやたらと長い(笑)。

左から:三上亮、遠藤幹大
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イベント情報

三上亮、遠藤幹大『Under Her Skin』
三上亮、遠藤幹大
『Under Her Skin』

2018年9月29日(土)~2019年3月4日(月)
会場:東京都 北千住 仲町の家
時間:10:00~17:00(入場は30分前まで)
休場日:火~金曜(祝日は開場)
料金:無料
※2月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)の展示は休み

プロジェクト情報

アートアクセスあだち 音まち千住の縁(音まち)

アートを通じた新たなコミュニケーション(縁)を生み出すことをめざす市民参加型のアートプロジェクトです。足立区千住地域を中心に、市民とアーティストが協働して、「音」をテーマにさまざまなまちなかプログラムを展開しています。日本家屋「仲町の家」も文化サロンとして土日月・祝日にオープン中。

イベント情報

『表現(Hyogen)|音の間(おとのま)
日本家屋の空間でうまれる音楽のかたち』

2019年2月2日(土)、3日(日)、9日(土)、10日(日)
会場:東京都 北千住 仲町の家
時間:13:30~16:00
料金:無料

4日間の制作の成果と、表現(Hyogen)のオリジナルナンバーや即興演奏を交えたコンサートを開催

2019年2月10日(日)
時間:18:00開演(17:30開場)
出演:表現(Hyogen)
会場:東京都 北千住 仲町の家
料金:1500円
定員:20名(要予約)

『IMM|フィリパピポ!! ザ・ファイナル』

2019年2月16日(土)
会場:東京都 千住 東京藝術大学 千住キャンパス 第7ホール
料金:無料 ※フード・ドリンクは有料
時間:17:00-20:00(ステージ開始 17:30)
定員:100名(先着順・事前申込優先)

千住タウンレーベル presents「千住持ち寄りレコード鑑賞会」

2019年2月17日(日)
10時30分~12時30分
会場:東京都 北千住 仲町の家
参加費:無料
持ち物:馴染み深い、思い出のある、かけてみたいレコード
レコードをお持ちでなくてもご参加いただけます

プロフィール

三上亮(みかみ りょう)

1983年、神奈川県生まれ。アーティスト。2008年、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科卒業。2011年、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。

遠藤幹大(えんどう みきひろ)

1985年、三重県生まれ。映像作家。2008年、京都造形芸術大学映像舞台芸術学科卒業。2013年、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。

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