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鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実

鹿野淳が語る、ロックフェスの信念と『VIVA LA ROCK』の真実

『VIVA LA ROCK 2019』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:関信行 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

フェス文化自体が今、完全に転換期にある。フェスバブルは萎み始めてもおかしくないし、間違いなく2020年がターニングポイントになる。

—言い方は悪いけど、やっぱり『ビバラ』って少し貧乏くさいところがチャーミングポイントにもなってると思うんですよね。ホームページのデザインとかも、ちょっとツメが甘いのかなみたいな(笑)。

鹿野:それ、めちゃくちゃ言われる(笑)。余計なお世話なんだけどね。

—これ、褒めてるんですけど、整備されすぎてない感じに鹿野さんの人間味が表れてると思う。

鹿野:下北沢のエレベーターがないビルの4階に事務所があるっていう感覚は今、三宅が言った「貧乏くさい」という表現と全部共通してるかもしれないよね。でも、その貧乏くささによってソウルがよく透けてるんだったら、これはきっといいことだよね。

鹿野淳

—すごくいいことだと思いますね。それってオファーされたアーティストが出演したいと思う動機にも繋がってると思いますよ。

鹿野:嬉しくないけどありがとう。非常にラッキーなことにこの『ビバラ』というフェスは現在、成功してるんですよ。そうなってくと、「このフェスは勝ち組なんだな」って見られ始める可能性がすごく大きくて。その視線とどう付き合っていくのかという面においては慎重になってる部分があるのは事実ですね。勝ち負けでフェスやってるわけじゃないからこそ、その見られ方を意識しないといけないなあって、今の音楽シーン全般に言えることだけど思うね。

—たしかに持たざる者のイメージがあったほうが応援されやすいですしね。

鹿野:あれは2000年くらいか。Bloodthirsty butchersの吉村(秀樹)と、eastern youthの吉野(寿)さんと、Hi-STANDARDの難波(章浩)くんで鼎談をしてもらったことがあるの。そのときに難波くんが、「『MAKING THE ROAD』は成功しましたよ。たしかに結果的に儲けましたよ。それで家を建てちゃいけないんですか? 俺、いいと思うんですよ。だって、勝ったんですもん」という話をしていて。すごい人だなと思った。本当に潔かった。

でも僕は難波くんのようなカリスマではないから。いろんなことに対してちゃんとビクビクしながらフェスをやってる。

で、フェス文化自体が今、完全に転換期にあると思うわけ。フェスバブル自体はまだ萎みきってないんですよ。萎み始めてもいないと正直思ってる。でも、萎み始めてもおかしくないし、間違いなく2020年がターニングポイントになるから。

—間違いないですね。

鹿野:2020年以降はいよいよ淘汰の時代がくると思わないでフェスをやってる人間は、よほどの馬鹿だよね。フェス文化自体は死なないけど、必要とされるフェスだけが残る。そうなったときに『ビバラ』が必要とされるボックスに入れるかどうかということをちゃんとプレゼンテーションできる機会って、今年と来年しかないんですよ。それくらい大事な2年間だと思ってやってます。

—これは個人的な好みもあるけど、過去の『ビバラ』のラインナップを見たときに、1年目でけっこう理想的なバランスが実現していたと思うんですよね。「日本のロックフェス」という固定化されたイメージと、そこからはみ出る余剰みたいな意味でも。

鹿野:それは指摘されて初めて気づくことなんだけど、大前提としてご理解いただきたいのは、ブッキングに関しては毎年100点のラインナップなんですよ。もちろん三宅が言ってくれたことは真摯に受け止めるよ。受け止めるんだけど、今のあなたの論理でいくと、初年度が100点で、他の年はそうじゃないとしたら、それは違う。というかそういう気持ちを持っていたら、ブッキングなんかできないって。というか、やっちゃいけないと思う。毎年100点なの。それは綺麗事じゃなくて、本当にそうなの。

会場をお客さんで埋められるか、埋められないかということと同じぐらい、これだけ多くのアーティストにご出演いただけるかどうかが大命題なんですよ。それくらいフェスのブッキングってしんどいんですよ。色んな人からSNSで「今年は、誰々は出ないんですか?」という声をもらうわけです。でも、フェスが横綱で、フェスに出演してくれる人がその横綱のタニマチではないですから。むしろ逆だしね。音楽あってのフェスなわけだから。

だからこそ、逆にフェスは誰でも出てくれるものじゃない。今年の『ビバラ』は97組ものアーティストに出演していただくんですけど、97組の方に自分が心からちゃんと気持ちを寄せて、そんな素晴らしいアーティストに来てもらえるというフェスをやるのって、むちゃくちゃ大変なことなんです。で、それが6年間も出来ているのは、惰性とは真逆にあることで、奇跡に近いなあと毎年思ってるんだよね。

『VIVA LA ROCK 2019』タイムテーブル
『VIVA LA ROCK 2019』タイムテーブル(サイトを見る

『ビバラ』に出てくれるアーティストは「僕がレビューを書きたいアーティスト」なんですよ。

鹿野淳

—正直、その中にはスタッフも含めると鹿野さんと関係性がよくない人だっているわけですよね?

鹿野:うん、そうだね(笑)。でも、たとえばスタッフの方と僕の関係性がよくなくても、アーティストと僕とで取材をはじめ仕事の中での関係性がある場合もあって。もっと簡単に言うと、みんなが少しでもイヤだったらこのフェスに出ないんですよ。それくらい、このフェスはもう大きな顔を持ってるんです。僕なんかの名前より、はるかに大きな顔をこのフェスは持ててるんだよね。それが素晴らしいんですよ。人がフェスを作るんだけど、フェス自体がもう人というかね。

—メディアがフェスを主催することに懐疑的な人ってけっこういると思うんですけど、今みたいなことをちゃんと明言することで解消される部分はあると思いますね。

鹿野:そうなの? 自分が思い描いたイスに、アーティストに座っていただく。そこの過程の中では何十組もお断りもされている。でも、結果的に自分が思いを寄せたアーティストの方々によってフェスが構成されていくという意味では、毎年100点のラインナップなんです。その気持ちをちゃんと表したくて──恥ずかしいことにアーティストの方々がステージ上で言ってくれるから、あえて言うんですけど、すべての出演アーティストに僕が手紙を書いてるんですよ。

その手紙は結果的に全部書いてあることはひとつで。「あなた方の音楽がどう素晴らしくて、だから出演していただけてうれしいです」ということを書いていて。これはわかりやすく言うと、手紙というよりレビューなんです。つまり、『ビバラ』に出てくれるアーティストは「僕がレビューを書きたいアーティスト」なんですよ。

 
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イベント情報

『VIVA LA ROCK 2019』
『VIVA LA ROCK 2019』

2019年5月3日(金・祝)、5月4日(土・祝)、5月5日(日・祝)、5月6日(月・休)
会場:埼玉県 さいたまスーパーアリーナ

5月3日出演:
ACIDMAN
THE ORAL CIGARETTES
KEYTALK
go!go!vanillas
Saucy Dog
崎山蒼志
SUPER BEAVER
DJライブキッズあるある中の人
Tempalay
Nulbarich
ニトロデイ
ネクライトーキー
BURNOUT SYNDROMES 
BIGMAMA
藤井 風
BRADIO
BLUE ENCOUNT
フレデリック
Base Ball Bear
PELICAN FANCLUB
Bentham
ヤバイTシャツ屋さん
ユアネス
LAMP IN TERREN

5月4日出演:
青木慶則
赤い公園
ASIAN KUNG-FU GENERATION
OGRE YOU ASSHOLE
Awesome City Club
Official髭男dism
King Gnu
Creepy Nuts
ゲスの極み乙女。
Ghost like girlfriend
Suchmos
SKY-HI
スガ シカオ
竹原ピストル
田島貴男(ORIGINAL LOVE)
THE CHARM PARK
CHAI
DJピエール中野
TENDRE
TENDOUJI
never young beach
PUNPEE
VIVA LA J-ROCK ANTHEMS
【Ba:亀田誠治/Gt:加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)/Gt:津野米咲(赤い公園)/Dr:ピエール中野(凛として時雨)】
FIVE NEW OLD
YAJICO GIRL

5月5日出演:
愛笑む
秋山黄色
UVERworld
大森靖子
折坂悠太(合奏)
KANA-BOON
クリープハイプ
SHISHAMO
神聖かまってちゃん
ズーカラデル
w.o.d.
DJダイノジ
teto
the telephones
Nothing's Carved In Stone
NICO Touches the Walls
パノラマパナマタウン
ハルカミライ
Hump Back
マカロニえんぴつ
マキシマム ザ ホルモン2号店
※フランチャイズ店メンバー
眉村ちあき
UNISON SQUARE GARDEN
yonige

5月6日出演:
打首獄門同好会
ENTH
オメでたい頭でなにより
キュウソネコカミ
Getting Better :片平実
G-FREAK FACTORY
SiM
SHADOWS
四星球
SCOOBIE DO
10-FEET
東京スカパラダイスオーケストラ
TOTALFAT
Track's
Halo at 四畳半
04 Limited Sazabys
FOMARE
HEY-SMITH
The BONEZ
眩暈SIREN
ヤングオオハラ
LUNKHEAD
リーガルリリー
ROTTENGRAFFTY

プロフィール

鹿野淳(しかの あつし)

音楽ジャーナリスト。1989年に扶桑社入社、翌1990年に株式会社ロッキング・オンに入社。98年より音楽専門誌『BUZZ』、邦楽月刊誌『ROCKIN'ON JAPAN』の編集長を歴任。『ROCK IN JAPAN FES』は構想から関わり、企画/オーガナイズ/ブッキングに尽力。2003年には『COUNTDOWN JAPAN 03/04』を立ち上げ、国内初のカウントダウン・ロック・フェスティバルを成功させた。2004に年ロッキング・オンを退社後、有限会社FACTを設立(現在は株式会社)。2006年に月刊『STARsoccer』を(現在は休刊中)、2007年3月には『MUSICA』を創刊させた。そして2014年には、埼玉県最大のロックフェス『VIVA LA ROCK』を立ち上げ、2019年に6回目の開催を迎える。

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