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一見サイケな集団? 音も絵も画も手がける空中カメラの正体

一見サイケな集団? 音も絵も画も手がける空中カメラの正体

空中カメラ『COMMUNICATIONs』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:山口こすも 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

人間と人間が100%同じ気持ちになることなんてなくて。どこかに「ズレ」を描かないと嘘臭すぎる。(寒川)

―自作のノベルティソングから始まって、好きなカルチャーの要素を取り入れ続けながら、遊びの延長のような形で空中カメラは続いてきた。結果として、今の空中カメラから生まれる音楽も、非常にポップで遊び心溢れるものになっていますよね。ただ、そういう音楽を求める意識の前提にあるのは、ある種の「閉塞感」や「退屈」によるものなのかなっていうことも、この音楽からは感じるんですよね。

牧野:ああ、子供の遊びって、基本的には「退屈」から生まれますよね。その感覚は正しい感じがします。

空中カメラ

―例えば新作『COMMUNICATIONs』も、タイトルが示すように、個々の楽曲で歌われているのは様々なケースでのコミュニケーションの在り様だと思うんです。そして、それぞれの曲で共通しているのは、「届かない距離感」がすごく需要視されていることだと思うんです。極端に言えば、「コミュニケーションは上手くいかない」という前提が、そこにはある。

:そうですね。これまでの僕らの曲って、「空中カメラが作った世界のお話」みたいな曲が多かったんです。でも、今回の作品では、より現実的で具体的な関係性を描いてみたかったんですよね。「こういうもどかしい気持ち、わかるでしょ?」みたいな感じで。「ドラマみたいに華やかな展開になるわけないじゃん」って思う反面、それに憧れる部分もある……そういう混沌とした気持ちが、今回の歌の世界になっているのかなって思います。憧れはあるけど、上手くいかないなぁっていう精神状態というか。

空中カメラ『COMMUNICATIONs』ジャケット
空中カメラ『COMMUNICATIONs』ジャケット(Amazonで見る

寒川:どれだけ「心がつながっている」っていうことをお互いに言ったところで、人間と人間が100%同じ気持ちになることなんてなくて。必ずどこかに「ズレ」は描かないと、あまりにも嘘臭すぎるっていうのはありますよね。誰だって、誰かとつながりたいって思っているけど、でも、つながることができるツールのせいで、ディスコミュニケーションが大量に起こる世の中になっているわけじゃないですか。

―まさにそうですね。

寒川:だから結局は、コミュニケーションって上手くいかないものだと思うんですよ(笑)。でも、上手くいかないにしても、それを閉じてしまうと、なにもできなくなってしまうし、なにも進まなくなってしまうから。だからこそ、そういうズレた世界観を、明るい曲調に乗せたいなって思うんだと思います。

自分は怠け者だけど、なにもできないまま日が暮れたりすると人一倍後悔する……。そんな焦燥感を解消してくれるのが、音楽を作ったり、漫画を描いたりすることだっていうのも昔から知っている。(竜)

―このアルバムの歌詞って、情景が思い浮かびやすいものが多いと思うんですよね。出てくるキャラクター同士の関係性が伝わりやすい。でも7曲目の“パラボラ荘”だけは、歌の中の関係性がよくわからないんですよ。UFOとかジャンキーが出てくるし。これは一体、どのようなモチーフで書かれたんですか?

田中:この曲は、竜にとっての「世界」対「自分」でしょ?

:そうだね。この曲は、主人公がアパートで独り暮らしをしていて、隣人がヤク中で毎晩独り言を呟いているのに聞き耳を立てている、みたいな感じです。自分の周りで明らかにおかしいことが起こっているんだけど、自分は自分で、窓を開けたらUFOが飛んでいるし、変なものが見え始めてしまっている、みたいな……。

この曲を書いた翌日から免許合宿に行かなきゃいけなくて、家を出る不安もあったと思うんですよね(笑)。それで、頭の中がゴチャゴチャしたような曲になったのかなぁ。このアルバムにこの曲があるのは、自分の原点的な部分を出している感覚はあると思います。

空中カメラ

寒川:この曲だけは、かなり昔に作ったんですよ。2013年に出した『UFO E.P.』っていうCD-R作品に入れていた曲の再録なんです。あの頃の竜らしさが、すごくよく出ている曲だと思う。歌詞的にはすごく閉じていて、竜の頭の中で完結しているような世界観だと思います。

ある種、中村竜の正直な部分というか。家にひとりっきりでいる感じ。この“パラボラ荘”は、空中カメラの「素」の部分っていうことでもあると思うんです。別に、他の曲が嘘をついているわけではないけど、でも、これが空中カメラの内臓にあるものというか。

―そういう、竜さんの中にある閉じた部分……それは、さっき言った「退屈」みたいな感覚とつながるのかもしれないですけど、その感覚と今こうやって音楽を作っていることは、竜さんの中で、どんな関係性で成り立っているのだと思いますか?

:自分はすごく怠け者で内向的な性格だけど、なにもできないまま日が暮れたりすると人一倍後悔する……。そんな人間なんです(笑)。でも、そんな焦燥感や喪失感を唯一解消してくれるのが、自分にとって、音楽を作ったり漫画を描いたりすることだっていうのも昔から知っている。

小学校の頃は、漫画家になりたかったんですよ。自由帳に漫画を描いて、友達に見せて回ったりしていて。自己満足でも、自分でなにかを作って、それを見てもらうっていうことがすごく気持ちよかったんですよね。

空中カメラ

:だからまぁ、基本的には出不精なんだけど、でも、誰かが自分の部屋に入ってくるのはウェルカムで、でも、入り浸られるのは気持ち悪いなぁっていう……そんな感じです(笑)。

田中:わがままだなぁ(笑)。……でも、竜のそういう閉じた部分を、編曲やアートワークやビデオを通して絶妙なバランスに仕上げる。空中カメラって、そういうバンドだと思います。

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リリース情報

空中カメラ『COMMUNICATIONs』
空中カメラ
『COMMUNICATIONs』

2019年5月29日(水)発売
価格:2,592円(税込)
VMAN-082

イベント情報

『空中カメラ主催「シャッターチャンス」』

2019年6月30日(日)
会場:東京都 渋谷HOME
ゲスト:ayU tokiO

『空中カメラ ワンマンライブ』

2019年8月2日(金)
会場:東京都 渋谷O-nest

プロフィール

空中カメラ(くうちゅうかめら)

中村竜(Vo,Gt)、田中野歩人(Key,おもちゃ&その他)、牧野岳(Ba,Cho)、寒川響(Gt,おもちゃ)、中村隼(Dr)の5人からなるバンド。幼、小、中、高校の同級生(1992~93年生まれ)とその兄で構成される。宅録ユニットとしてスタートし、徐々にライブ活動を開始。1960~1970年代英米ポップ・ロックのフィーリングと、1980年代ニューウェイブのエッジ感と、J−POPのメロディ感覚が絶妙に混ざり合った、大ポップワールドを展開中。ビデオ、デザイン、イラストレーション、ウェブサイト、漫画までメンバーが手掛ける。

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