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燃え殻×長久允 イジメを受けた僕らは人生をゲームにして謳歌する

燃え殻×長久允 イジメを受けた僕らは人生をゲームにして謳歌する

『ウィーアーリトルゾンビーズ』
インタビュー・テキスト
村上広大
撮影:前田立 編集:久野剛士(CINRA.NET編集部)

効率が大切にされる社会にウンザリする2人が、小説や映画に感じる可能性

―長久監督自身はユーモアでなにかを乗り切ったエピソードはありますか?

長久:僕は自分の経験を切り取って作品を作っているのでたくさんありますよ。『ウィーアーリトルゾンビーズ』でも観ると必ず泣いてしまう場面が2か所あって。そのひとつが「SHINE(死ね)」って書かれているのを「SHINE(シャイン)」って読むシーン。過去に作ったPVでも入れているくらい好きなエピソードなんですけど、あれこそ辛いことをユーモアに転じて高笑いしていくことだと思うんですよね。あとはエンドロールでもぶわってきちゃいます。試写会でも泣いてましたから(笑)。

『ウィーアーリトルゾンビーズ』場面写真 /  ©2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
『ウィーアーリトルゾンビーズ』場面写真 / ©2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS

燃え殻:その感覚、わかります。ネタバレになるので詳しくは触れられないけど、僕もエンドロールで「これは自分の物語だ」って思ったくらい。いま45歳なんですけど、どうにかこうにか生きてこられたのは、まさに『ウィーアーリトルゾンビーズ』で描かれているようなことをやっていたからなんですよね。

さっきのラジオの投稿の話もそうですけど、すごく嫌なことがあってもTwitterで盛って過去を改ざんしてツイートするとか。制限のある世界でいかに楽しめるかが大切だなと思います。世の中には「制限を設けずに好きなことだけして生きていけばいい派」が一定数いるんですけど、それって極端だと思っちゃうんですよね。だって、サッカーも野球も人生も、ルールで制限されるからカタルシスとか感動とか情緒が生まれるわけじゃないですか。それを「手で持ってゴールしたほうが効率よくない?」とか「バットは4回振っちゃダメなの?」ってなると、情緒がなにもないし、生きる楽しみがないんですよね。それって効率とか勝ち負けよりも大切なことだと思うんです。

左から:燃え殻、長久允

長久:わかります。僕が映画を作るようになったのは、NATURE DANGER GANGというバンドのライブにいったことがきっかけだったんですけど、彼らの人生への肯定感が半端なかったんですね。「もっとダメでもいいし、夢なんて別になくてもいいし」っていう。そういう非効率な生き方を肯定する作品が世の中に少ないからこそ、使命感を感じて映画監督になったので。

燃え殻:僕自身、夢なんかなくても生きていけると思っているし、むしろ夢がなければ破れないから得だとすら考えているんですよね。それよりも目の前の人を喜ばせることのほうが大切だよって。

でも、いまって「こうすればバズる」とか、「めちゃくちゃ儲かる」とか、「夢を持て」とか、「そのためにはすべて捨てろ」みたいな文言が、SNSを通じてサブリミナル的にバンバン流れてくるじゃないですか。その「すぐに結果を出したい」って感覚は危険なことだなと。

ただ、映画とか小説って伝わるまでに時間がかかるし、観るとか読むことに対する面倒臭さや非効率さもある。そのハードルをどう乗り越えていけばいいんだろうって僕自身も悩んだりもしているんですけど。

長久:すぐに明快な答えを提示するのが主流になっているからこそ、みんな感想が違ってよろしい的なコンテンツがもっと必要ですよね。『ウィーアーリトルゾンビーズ』も100人が100人とも違う感想を抱いて帰れるものにできればいいなと思いながら作っていて。

燃え殻:映画や小説は後々になって評価がひっくり返ることもあるわけじゃないですか。そういう特殊なメディアでもあると思うので、瞬間的に消費されるのではなく、長く愛されるものになるといいですよね。

僕自身、小説が出版されていちばん嬉しかったのが、全国の図書館に置かれたことなんです。そのときに「自分より長生きするものができた」と思えて。たとえ僕が死んだとしても、図書館でハプニング的に手に取ってもらえる可能性があると思うと、その思いだけで生きることができるというか。

左から:燃え殻、長久允

長久:僕もいつ作られたのかわからないゴダール(フランスの映画監督、代表作に『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』など)の作品を手に取ったことがあるんですけど、そういう出会い方を他の人にもしてほしくて『ウィーアーリトルゾンビーズ』を作ったので、すごくわかります。

燃え殻:もしかしたら40年後の早稲田松竹で流されている可能性もありますよね。それが映画や小説がある意味なのかなと思います。

『ウィーアーリトルゾンビーズ』場面写真 /  ©2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
『ウィーアーリトルゾンビーズ』場面写真 / ©2019“WE ARE LITTLE ZOMBIES”FILM PARTNERS
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リリース情報

『ウィーアーリトルゾンビーズ』
『ウィーアーリトルゾンビーズ』

2019年6月14日(金)から全国公開
監督・脚本:長久允
出演:
二宮慶多
水野哲志
奥村門土
中島セナ
佐々木蔵之介
工藤夕貴
池松壮亮
初音映莉子
村上淳
西田尚美
佐野史郎
菊地凛子
永瀬正敏
配給:日活

プロフィール

長久允(ながひさ まこと)

1984年生まれ、東京都出身。2017年、監督作品『そうして私たちはプールに金魚を、』がサンダンス国際映画祭にて日本人初グランプリを受賞。受賞歴にTCC新人賞、OCC最高新人賞、カンヌ国際映画祭ヤングライオンFILM部門シルバー他。

燃え殻(もえがら)

神奈川県在住。テレビ美術制作会社で企画・人事担当として勤務。会社員でありながら、コラムニスト、小説家としても活躍。『文春オンライン』にて人生相談コーナーを担当。雑誌『CREA』にエッセイを発表。2017年6月30日、小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)が発売された。

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