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THA BLUE HERBが綴る日々への祈り。「人生のベストはまだ先」

THA BLUE HERBが綴る日々への祈り。「人生のベストはまだ先」

THA BLUE HERB『THA BLUE HERB』
インタビュー・テキスト
石井恵梨子
撮影:アミタマリ 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)

前作『TOTAL』から7年、結成20周年を超えて辿り着いた凄まじい境地だ。THA BLUE HERBの5作目『THA BLUE HERB』は、初のセルフタイトル、初の2枚組、いつも通りフィーチャリングも一切なしの全30曲。ヒップホップシーンの流れを気にしない姿勢は初期から一貫しているが、しかしこれは憤怒に燃えた反逆者の音でも、見て見ぬふりを決め込む享楽者の音でもない。耐え難いほどの現実と対峙しながら、生きろ、胸を張れ、あなた自身の人生を誇れと寄り添ってくる言葉たち。悲しみも痛みも内包しながら最後には愛と祝福が響き渡る。もちろん聴く体力も受け止める勇気もいるが、対峙する価値はあまりに大きいこの傑作について、ILL-BOSSTINOとじっくり語り合う。

俺じゃない人たちの人生がインスピレーションになってきて。子育て、介護、友達、仲間。新聞の投書もニュースもそう。みんなのこと、いろんなものを浴びて書いてる感覚がある。

―まずは、なぜ今作が2枚組なのか、という話から聞かせてください。

ILL-BOSSTINO(以下BOSS):ずっと、今までやってないことをやろうっていうのが俺らのテーマになってて。野音でやったこと(2017年10月29日に結成20周年を記念して日比谷野外大音楽堂で行ったライブ)もそうだし、その前の俺のソロアルバム(ILL-BOSSTINOがtha BOSS名義で2015年に発表した『IN THE NAME OF HIPHOP』)もそう。

2枚組も同じで、1990年代にずっと憧れてた2枚組の作品がたくさんあって、いつかそれに挑戦してみたいと思ってたから。今ならきっとできるんじゃないかっていうのが一番最初の動機だね。

―世界中でアルバムがどんどん短くなっていくこの時代、長いと思われる不安はありませんでしたか。

BOSS:作る前はそういう話にもなって「曲も多いから、すべて3分台とかの曲にして、なるべく早く回していこうか」ってミーティングで言ってたけど。……1曲もないね、そういうの(笑)。やっぱり作り始めると初期衝動っていうか、格好いい曲を作ろうっていうだけなんで。だから何も決めずにそのまま作り始めて。

で、15~16曲できた時に、たとえばヒップホップの話だとか、社会の話、地元の話とか、テーマの振り分けを見て、そこからさらに15曲、どういうバランスで曲があればいいのかを考えて。そこでも「今までやってないもの」「まだ書いてないもの」を探していく作業だった。

THA BLUE HERB(ざ ぶるーはーぶ)<br>ラッパー:ILL-BOSSTINO、トラックメイカー:O.N.O、ライブDJ:DJ DYEからなる一個小隊。ヒップホップの矜持を保ちながらも、あらゆるジャンルとクロスしていく音楽性・活動を展開する。1997年に北海道・札幌で結成。アルバムはこれまでに『STILLING, STILL DREAMING』『SELL OUR SOUL』『LIFE STORY』『TOTAL』をリリースしており、2017年には結成20周年を記念して日比谷野外大音楽堂にて単独公演を開催した。
THA BLUE HERB(ざ ぶるーはーぶ)
ラッパー:ILL-BOSSTINO、トラックメイカー:O.N.O、ライブDJ:DJ DYEからなる一個小隊。ヒップホップの矜持を保ちながらも、あらゆるジャンルとクロスしていく音楽性・活動を展開する。1997年に北海道・札幌で結成。アルバムはこれまでに『STILLING, STILL DREAMING』『SELL OUR SOUL』『LIFE STORY』『TOTAL』をリリースしており、2017年には結成20周年を記念して日比谷野外大音楽堂にて単独公演を開催した。

―単純な疑問ですけど、BOSSの考える「格好いい曲」の条件って?

BOSS:なんだろうね? 俺がいつも相方(O.N.O)に言うのは「俺が一番好きなのは、寂しくて、あったかくて、でも、なんというか力が出る曲。そんなビートを作ってくれ」ってことで。

―あぁ、まさにTHA BLUE HERBだ。

BOSS:そうそう。もちろんそこだけに固まってしまうとつまんないことは自覚してるし、今回の場合はやっぱり30曲あるからね。音の強さとか音圧も含めて、O.N.Oには聴き手を「疲れさせたくない」って気持ちがあったと思う。だから温かい音もけっこうあるけど。でも俺が1990年代にヒップホップ聴いてたのは、そこが好きだったから。今でもそういうビートを選ぶ傾向にあるね。

―寂しさ、というのは重要なキーワードですか。

BOSS:そうだね、寂しさが一番最初にくる。俺が好きなんだろうね。叙情性とか、ひとりの旅の空とか。まぁ言葉もひとりで書くし、結局は個だよね。そこからは逃れられない。何万人相手にライブやるとかにそれほど興味を持たないのもそういうことだし。あくまで個と個の集合体で、それがリキッドルームぐらいの大きさになってたらちょうどいいって思う。でも結局はみんなバラバラで帰っていくことも常に頭にあるから。結局は個々になってしまうかな、俺の場合。

―ただ、今回は決して個人の話にとどまらないですよね。まず最初に<世界がこの俺から言葉を引き出す>(“WE WANT IT TO BE REAL”)っていうフレーズがあって。自分が言いたいから、というだけではない。

BOSS:その感覚はすごくある。自分の言いたいことって、1MCでここまで表現すれば……言い尽くしてるとまでは思わないけど、もう散々言ってきたことがあるし。1stアルバム(『STILLING, STILL DREAMING』 / 1998年)はほんとに自分のこと、それこそ個の話ばっかりだったけど、でも途中から変わっていった。

俺じゃない人たち、いろんな人の人生がすごくインスピレーションになるようになってきて。子育てもそうだし介護もそう。友達も仲間も、新聞の投書もそうだしニュースもそう。みんなのことを感じながら、いろんなものを浴びて書いてる感覚がすごくあるから。

―そんなふうに考え出したのは、いつぐらいからですか。

BOSS:『LIFE STORY』(3rdアルバム / 2007年)からだね。あの作品から大きく俺の中で変わったと思う。1stなんて、もうただの自分の話。それはそれでとても純粋なんだけど「有名になりたい、自分のことを知って欲しい」っていう気持ちだけで。2ndアルバム(『SELL OUR SOUL』 / 2002年)ではそこからさらに自分の内面をとことん掘り下げて。3rdぐらいから、まぁ俺も結婚したり、周りの友達に子供が生まれたり、そういう出来事に触れた時からなのかもしれない。

ILL-BOSSTINO
THA BLUE HERB『LIFE STORY』を聴く(Apple Musicはこちら

―だからここにはいろんな人生、いろんな生活や感情が詰まっている。それでも<最初に言っとかねぇとダメなやつ>っていう前置きと共に始まる“介錯”は、ヒップホップシーンの話です。

BOSS:そう、最初にそれをやるのが俺らの流儀。THA BLUE HERBとして7年間アルバム出してなかったし、その間にすごくヒップホップも変わったんで。いいこともたくさんあるし、裾野も広がったし、プレイヤーも増えた。でもやっぱり俺の中で「ちょっとそれは違うんじゃねぇか?」って思うこともあって。そこを言っておかないと俺自身が気持ち悪かった。

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リリース情報

THA BLUE HERB『THA BLUE HERB』限定生産盤
THA BLUE HERB
『THA BLUE HERB』限定生産盤(4CD)

2019年7月3日(水)発売
価格:9,138円(税込)
TBHR-CD-030

[DISC1]
1. RETURNING
2. EASTER
3. WE WANT IT TO BE REAL
4. 介錯
5. AGED BEEF
6. A TRIBE CALLED RAPPER
7. 凶兆序曲
8. THERE'S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY
9. REQUIEM
10. GETAWAY
11. SUVARNABHUMI TRANSIT
12. HIGHER ON THE STONE
13. TWILIGHT
14. KEEP ON AND YOU DON'T STOP
15. THE BEST IS YET TO COME

[DISC2]
1. DETERMINATION
2. TRAINING DAYS
3. 阿吽
4. HEARTBREAK TRAIN(PAPA'S BUMP)
5. UP THAT HILL(MAMA'S RUN)
6. COLD CHILLIN'
7. 一切空
8. LOYALTY
9. LIKE THE DEAD END KIDS
10. スーパーヒーロー
11. SMALL TOWN, BIG HEART
12. LOSER AND STILL CHAMPION
13. 今日無事
14. MAKE IT LAST FOR...
15. LANDING
※生産限定盤付属DISC 3、DISC 4
アルバム収録曲のインストゥルメンタルバージョンを収録

THA BLUE HERB『THA BLUE HERB』通常盤
THA BLUE HERB
『THA BLUE HERB』通常盤(2CD)

2019年7月3日(水)発売
価格:4,860円(税込)
TBHR-CD-031

DISC 1
1. RETURNING
2. EASTER
3. WE WANT IT TO BE REAL
4. 介錯
5. AGED BEEF
6. A TRIBE CALLED RAPPER
7. 凶兆序曲
8. THERE'S NO PLACE LIKE JAPAN TODAY
9. REQUIEM
10. GETAWAY
11. SUVARNABHUMI TRANSIT
12. HIGHER ON THE STONE
13. TWILIGHT
14. KEEP ON AND YOU DON'T STOP
15. THE BEST IS YET TO COME

DISC 2
1. DETERMINATION
2. TRAINING DAYS
3. 阿吽
4. HEARTBREAK TRAIN(PAPA'S BUMP)
5. UP THAT HILL(MAMA'S RUN)
6. COLD CHILLIN'
7. 一切空
8. LOYALTY
9. LIKE THE DEAD END KIDS
10. スーパーヒーロー
11. SMALL TOWN, BIG HEART
12. LOSER AND STILL CHAMPION
13. 今日無事
14. MAKE IT LAST FOR...
15. LANDING

イベント情報

2019年8月23日(金)
会場:東京都 CLASSIX

2019年8月24日(土)
会場:東京都 中野heavy sick ZERO

2019年8月26日(月)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2019年8月27日(火)
会場:京都府 KYOTO MUSE

2019年8月29日(木)
会場:広島県 CLUB QUATTRO

2019年8月31日(土)
会場:福岡県 DRUM Be-1

2019年9月1日(日)
会場:沖縄県 Output

2019年9月3日(火)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2019年9月4日(水)
会場:石川県 Kanazawa AZ

2019年9月6日(金)
会場:新潟県 GOLDEN PIGS RED STAGE

2019年9月7日(土)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK Kumagaya VJ-1

2019年9月10日(火)
会場:東京都 LIQUIDROOM

2019年9月13日(金)
会場:福島県 LIVE STAGE PEAK ACTION

2019年9月14日(土)
会場:茨城県 CLUB MURZ

2019年9月18日(水)
会場:宮城県 enn 2nd

2019年9月20日(金)
会場:山形県 Sandinista

2019年9月22日(日)
会場:栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)

2019年9月23日(月)
会場:茨城県 OctBaSS

2019年9月29日(日)
会場:神奈川県 OPPA-LA

2019年10月2日(水)
会場:北海道 KRAPS HALL

2019年10月4日(金)
会場:北海道 UNDERSTAND

プロフィール

THA BLUE HERB(ざ ぶるーはーぶ)

ラッパー:ILL-BOSSTINO、トラックメイカー:O.N.O、ライブDJ:DJ DYEからなる一個小隊。ヒップホップの矜持を保ちながらも、あらゆるジャンルとクロスしていく音楽性・活動を展開する。1997年に北海道・札幌で結成。アルバムはこれまでに『STILLING, STILL DREAMING』『SELL OUR SOUL』『LIFE STORY』『TOTAL』をリリースしており、2017年には結成20周年を記念して日比谷野外大音楽堂にて単独公演を開催した。

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