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『バジーノイズ』むつき潤とカムラ ミカウが語る、人間関係の葛藤

『バジーノイズ』むつき潤とカムラ ミカウが語る、人間関係の葛藤

カムラ ミカウ『ENVY』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:西槇太一 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)

現在『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載されている音楽漫画『バジーノイズ』は、「人と人の間にあるもの」を見事に捉え、描き出す作品だ。閉ざされた場所でひとり音楽を作り続けていた主人公が、他者と出会い、その心を開いていく。SNSを通したコミュニケーションや、音楽業界の細部を描いたストーリーはとてもリアルで現代的なテーマ性を持っているが、それ以上に、人が抱える「孤独」というとても普遍的な命題に触れている作品ともいえる。

そんな『バジーノイズ』を描くにあたり、作者のむつき潤がモデルのひとりとした音楽家が、カムラ ミカウ。作詞作曲だけでなく、編曲やプログラミング、ミックス、アートワークまでも自身で手掛ける彼の存在が、『バジーノイズ』の物語に大きく影響を与えているという。そんなカムラが、初の全国流通盤となる新作EPに付けたタイトルは『ENVY』――つまり、「嫉妬」。カムラもまた、「人と人の間にあるもの」を描くことに長けた表現者なのだと思う。

今回CINRA.NETでは、カムラ ミカウとむつき潤による対談を実施。ふたりの出会いから、それぞれの作品について、さらに、お互いの表現論までじっくりと語り合ってもらった。

僕がひとりで音楽を作り始めたのも、「周りと上手く馴染むのが難しいから」という理由。(カムラ)

カムラ ミカウ<br>1994年生まれ。from 大阪。電子音楽、ロックに特に影響を受け、作詞、作曲、編曲、トラックメイク、プログラミング、ミックスまで行うシンガーソングクリエイター。アンビエントやエレクトロニカなどの電子音楽の影響下にある浮遊感に満ちたトラックに、温かみのあるギターと繊細に言葉を紡ぐ歌声が特徴。日本テレビ系『バズリズム 02』新春企画「これはバズるぞ2019」にランクイン。2019年8月7日に、新EP『ENVY』をリリースする。
カムラ ミカウ
1994年生まれ。from 大阪。電子音楽、ロックに特に影響を受け、作詞、作曲、編曲、トラックメイク、プログラミング、ミックスまで行うシンガーソングクリエイター。アンビエントやエレクトロニカなどの電子音楽の影響下にある浮遊感に満ちたトラックに、温かみのあるギターと繊細に言葉を紡ぐ歌声が特徴。日本テレビ系『バズリズム 02』新春企画「これはバズるぞ2019」にランクイン。2019年8月7日に、新EP『ENVY』をリリースする。

―むつきさんが現在『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載されている作品『バジーノイズ』のモデルのひとりが、カムラさんだそうですね。

むつき:そうなんです。「バンド漫画を描こう」という話になっていろいろ調べたり取材をしたりしていたときに、関西で新人発掘をされている方から「うちのアーティストの遠征についてくる?」と誘ってもらって。そのアーティストが、カムラくんだったんですよね。

カムラ:僕が『SAKAE SP-RING』初出演のとき(2017年6月)でしたね。あのときは、むつきさんにいろいろ手伝ってもらいましたよね(笑)。

むつき:水買いに走ったりしたね(笑)。そう思うともう2年以上の付き合いになるんやね。カムラくんは未だに敬語やけど(笑)。

カムラ:年齢気にしちゃうんですよね、僕(笑)。

左から:カムラ ミカウ、むつき潤
左から:カムラ ミカウ、むつき潤

むつき:僕はその『SAKAE SP-RING』で初めてカムラくんのステージを観て。当時は「バンド漫画を描こう」と思っていたので、僕の頭の中はギターとベースとドラムとボーカルがいる、みたいなオーソドックスなバンドのイメージばかりだったんですけど、カムラくんはキーボードとDJ機材を傍に置いて、ギターを背負ってステージにひとりで立っていた。そのビジュアルが、僕にはすごく新鮮だったんですよね。そこから、「これから描く漫画は、主人公がひとりの場所からスタートするのも面白いんじゃないか」という着想を得ました。

カムラ ミカウ、ライブ中の様子
カムラ ミカウ、ライブ中の様子
カムラ ミカウ、ライブ中の様子

―『バジーノイズ』は、まさに主人公が「ひとり」であることが物語の重要なポイントになっていますが、カムラさんが大きな影響源なんですね。

むつき:そうですね。「ひとりでいいや」と思っている人物が人とつながりながら音楽を作っていく、というふうに物語に厚みを持たせることができたのは、カムラくんがいたからだと思います。それくらい、あのときのカムラくんのライブは新鮮に焼きついたんですよね。

細かい部分でも、例えば1巻の最後に主人公の清澄が路上ライブをする場面で、柄モノの古着を着てサンプラーとギターを使っているビジュアルは、カムラくんの影響も大きいです。

『バジーノイズ』1巻より
『バジーノイズ』1巻より
『バジーノイズ』1巻より

―カムラさんは、ご自身が影響を与えた作品を読まれて、どんな印象を受けますか?

カムラ:やっぱり清澄の考え方には自分と共通点があるなと思って、序盤から感情移入できました。僕がひとりで音楽を作り始めたのも、「周りと上手く馴染むのが難しいから、ひとりで完結させてしまおう」っていう理由が大きいので。序盤、清澄が「パソコンと音楽さえあればいい」というモードで生きているところにはシンパシーを感じました。こんな言い方をするとむつきさんに失礼かもしれないけど、自分を見ているような気持ちになります。

むつき:いやいや、嬉しいよ。

右:むつき潤(むつき じゅん)<br>マンガ家。兵庫県出身。大学時代に新人賞を2度受賞。大学卒業後、新聞社でバイトをしながらマンガを描きつづけ、2015年『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『ハッピーニューイヤー』でデビュー。2018年5月から『週刊ビッグコミックスピリッツ』で、マンガ『バジーノイズ』を連載中。
右:むつき潤(むつき じゅん)
マンガ家。兵庫県出身。大学時代に新人賞を2度受賞。大学卒業後、新聞社でバイトをしながらマンガを描きつづけ、2015年『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『ハッピーニューイヤー』でデビュー。2018年5月から『週刊ビッグコミックスピリッツ』で、マンガ『バジーノイズ』を連載中。
『バジーノイズ』1巻より
『バジーノイズ』1巻より

カムラ:高校生の頃、僕も軽音楽部でバンドをやっていたんです。でも、そのバンドがワンマンバンドっぽくなってしまったんですよね。僕が他のメンバーに「お前、もっと練習してこいよ」みたいなことを言ってしまったりして、段々と、自分の熱量と周りの熱量の違いを感じるようになってしまった。それで「バンドを組んで音楽作るのって、体力がいるな」と思って、ひとりで音楽を作り始めた経緯が僕にもあって。

むつき:そうなんや、今の話は初耳やな。でも、バンドって体力いるんだろうなって思う。バンドにもたくさん取材させてもらったけど、ずっと自分の気持ちは「グループって羨ましいな」と「ひとりでよかった」を往復していて。ライブ前にメンバーで肩叩き合っている姿を見ると「バンド、羨ましいな」って思うけど、ひとりで動くほうが絶対にフットワークは軽いし、メンバーからの反発なく自分の意見をそのまま通すことができる点では、ひとりのほうが楽だろうなって思うし。

左から:カムラ ミカウ、むつき潤

カムラ:今ひとりで音楽をやっている人は、「バンドに疲れてひとりになった」という人も多いんじゃないかと思います。今はパソコンで、ひとりで音楽を作ることができますからね。

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リリース情報

カムラ ミカウ『ENVY』
カムラ ミカウ
『ENVY』(CD)

2019年8月7日(水)発売
価格:1,728円(税込)
DDDPCD-00433

1. scandal arts
2. 狼
3. ふしだらにさよなら
4. dance dance dance
5. バルカロール
6. kitsune pride

書籍情報

『バジーノイズ』
『バジーノイズ』

著者:むつき潤
発行:小学館

プロフィール

カムラ ミカウ
カムラ ミカウ

1994年生まれ。from 大阪。電子音楽、ロックに特に影響を受け、作詞、作曲、編曲、トラックメイク、プログラミング、ミックスまで行うシンガーソングクリエイター。アンビエントやエレクトロニカなどの電子音楽の影響下にある浮遊感に満ちたトラックに、温かみのあるギターと繊細に言葉を紡ぐ歌声が特徴。2016年より現スタイルで本格的に活動スタート、1st E.P『ペトリコールと産声』をリリース。2018年4月にYouTube上で発表したミュージックビデオ“はるたちのぼる”が、早耳リスナーの間で注目を集め、同年9月に同楽曲が収録された2nd E.P『chaouen』をリリース。フジテレビ系音楽番組『Love music』番組スタッフイチオシのニューカマーを紹介する「Come music」での紹介、日本テレビ系『バズリズム 02』新春企画「これはバズるぞ2019」にランクイン。さらには「myblu」テレビCM「新しい選択」篇の楽曲制作・歌唱を担当するなど、様々なCMへの楽曲制作・歌唱抜擢でも注目を浴び始めている。

むつき潤(むつき じゅん)

マンガ家。兵庫県出身。大学時代に新人賞を2度受賞。大学卒業後、新聞社でバイトをしながらマンガを描きつづけ、2015年『週刊ビッグコミックスピリッツ』に掲載された『ハッピーニューイヤー』でデビュー。2018年5月から『週刊ビッグコミックスピリッツ』で初の連載マンガ『バジーノイズ』を執筆中。自身がプロデュースする漫画と音楽の融合ライブ『BUZZY NOISE LIVE』を開催し、好評を博す。

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