
濱野夏椰(Gateballers)、澄んだ眼の奥の感性と才能に皆が惚れる
Gateballers『Infinity mirror』- インタビュー・テキスト
- 天野史彬
- 撮影:馬込将充 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
Gateballersが、3rdアルバム『Infinity mirror』を9月4日にリリースした。後藤正文主催の音楽賞『APPLE VINEGAR Music Award 2019』にノミネートされた前作『「The all」=「Poem」』も素晴らしかったが、本作もまた素晴らしい作品だ。この音楽をなにかしらにカテゴライズすることに意味はないかもしれないが、もし僕に「バンドミュージックの現在地はどこだ?」と問う人がいれば、僕はこの『Infinity mirror』を、その人の目の前に差し出すだろう。「これが『今』なんだ」と。そのぐらい、今、Gateballersが鳴らす音楽は速く、立体的で、多声的で、普遍的である。
とても澄んだ眼を持つこのバンドのフロントマン・濱野夏椰は、デビュー以降、小山田壮平や下津光史といった才能たちとのつながりのなかで語られることも多かったが、もうそろそろ、彼自身がスポットライトを浴びるべきだろう。そういう気持ちで、今回僕は濱野夏椰の単独インタビューに望んだ。二日酔いで申し訳なさそうに現場に現れた濱野との会話は2時間にも及んだが、本当にいい時間だった。この時間が少しでも伝わればいいと思って、原稿を作った。
どうしても記事に入れ込むことができなかった部分をここで抜粋しておく。アルバムの1曲目“スーフィー”は、「イスラム神秘主義」ともいわれる「スーフィズム」の詩人、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの詩に、濱野が出会ったことから生まれたという。濱野曰く、スーフィズムとは「簡単に言うと、自分と自分以外のものの境界線を踊ってなくしちまおうっていう思想」だそうだ。こういうことを歌う音楽が今ここにあることを、あなたはどう思うだろうか。実際にその耳で聴いてたしかめてみてほしい。もちろん、そこであなたが感じたことを他の誰かと共有する必要は、特にない。
夏椰(かや)という名前は、ボブ・マーリーの“Kaya”という曲からきている。
―「夏椰(かや)」って、素敵なお名前ですよね。
濱野:この名前は、ボブ・マーリーの“Kaya”という曲からきていて。
―そうなんですね。
濱野:この曲が入っているアルバムのタイトルも『Kaya』(1978年)なんですけど、俺はこのアルバムが、ボブ・マーリーのなかで一番好きなんです。同時期に『Exodus』(1977年)というアルバムも出しているんですけど、そっちは「ふざけんじゃねえ!」っていう感じでブチ切れているんですよ。でも、『Kaya』は愛についてしか歌っていなくて。そっちのほうが、かわいくて好きなんです。
―名は体を表すというか、濱野さんが作る音楽とも非常にマッチするお話ですね。
濱野:そうかもしれないです。俺は本当にシンプルに音楽に安らぎを求めているし、生まれたばかりの赤ん坊が泣くように、音楽を作りたいって思っているんです。

濱野夏椰・Gateballers(げーとぼーらーず)
メンバーは、濱野夏椰(Gt,Vo)、本村拓磨(Ba)、久富奈良(Dr)、内村イタル(Gt,Sam / サポートメンバー)。2013年5月に東京にて結成。2014年11月に濱野は小山田壮平(AL / ex.andymori)らと共にレーベル「Sparkling Records」を設立。濱野は「ポカリスウェット」と『FUJI ROCK FESTIVAL』のコラボCMにてギターを演奏するなど、活動の幅を広げている。2019年9月より開始される『小山田壮平バンドツアー2019』に濱野がGt、久富がDrで参加。Ba.本村はカネコアヤノBANDに参加中。
―Gateballersがバンドとして目指す音楽は、言語化すると、どんなものだといえますか?
濱野:Gateballersって、メンバーそれぞれの好きな音楽が全然違うんですけど、最初に「どんな音楽をやろうか?」って話したときに、唯一、満場一致で「これはテーマにしたいね」ってなったのがジョン・レノンの『ジョンの魂』(1970年、The Beatles解散後初のソロアルバム)だったんですよね。「あのアルバムが一番ヤバいよね」って。
あれは、完全にプライマルスクリーム療法(原初療法)で、ジョンが裸になったアルバムですよね。音も全然気が利いていないんだけど、それゆえに、生々しすぎるほどの「時間の保存」がされている。そこに、みんながあのアルバムを手に取る理由があるような気がして。
ジョン・レノン『ジョンの魂』を聴く(Apple Musicはこちら)
―「時間の保存」というのはとても面白い表現だと思うんですけど、それは濱野さんが音楽に求めるものでもある?
濱野:そうですね。レコーディングは「時間の保存」だと思う。俺はレコーディングにおいて、上手に弾けたか下手だったかとか、そういうことを周りが驚くほど気にしていないんです。それよりも、たとえば3日間レコーディングしたなら、その3日間でみんなが笑っていたことのほうが音楽には出ると思う。そのくらい、素敵な曲は、素敵な録られ方をしていたんだろうなって思うんです。
リリース情報

- Gateballers
『Infinity mirror』(CD) -
2019年9月4日(水)発売
価格:2,484円(税込)
PSCM0021. スーフィー
2. 愛の速度
3. 船底
4. Summer surrender
5. Rooftop
6. neji
7. All miracles
8. Moon river
9. 光のふもと
10. wedding dress
イベント情報
- 『Gateballers 3rd ALBUM「Infinity mirror」レコ発ツアー』
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2019年10月4日(金)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La
出演:
Gateballers
ベランダ
ARSKN
Newdums(Opening Act)2019年10月11日(金)
会場:福岡県 Kieth Flack
出演:
Gateballers
HAPPY
the perfect me2019年10月13日(日)
会場:広島県 4.14
出演:
Gateballers
愛はズボーン
ARSKN2019年10月17日(木)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
出演:
Gateballers
キイチビール&ザ・ホーリーティッツ2019年10月20日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL
出演:
Gateballers
HAPPY2019年11月7日(木)
会場:東京都 代官山 UNIT
出演:
Gateballers
髭
Helsinki Lambda Club
プロフィール

- Gateballers(げーとぼーらーず)
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メンバーは、濱野夏椰(Gt,Vo)、本村拓磨(Ba)、久富奈良(Dr)、内村イタル(Gt,Sam / サポートメンバー)。2013年5月に東京にて結成。2014年11月に濱野が小山田壮平(AL / ex.andymori)らと共にレーベル「Sparkling Records」を設立。2016年3月に1stアルバム『Lemon songs』、2018年2月に2ndアルバム『「The all」=「Poem」』をリリース。ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正文主催『APPLE VINEGAR -Music Award- 2019』に『「The all」=「Poem」』がノミネートされた。濱野は「ポカリスウェット」と『FUJI ROCK FESTIVAL』のコラボCMにてギターを演奏するなど、活動の幅を広げている。2019年9月より開始される『小山田壮平バンドツアー2019』に濱野がGt、久富がDrで参加。Ba.本村はカネコアヤノBANDに参加中。