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パソコン音楽クラブの部活感の秘密。作家性や主張より大事なこと

パソコン音楽クラブの部活感の秘密。作家性や主張より大事なこと

『NEWTOWN 2019』
インタビュー・テキスト
柴崎祐二
撮影:Kay N 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

2015年の発足以来、SoundCloudやBandcampでの作品発表や「Maltine Records」からのEPリリースなどを経て、その名を着実に知らしめてきたDTMユニット、パソコン音楽クラブ。メンバーに関する詳細も不明、かつメディアへの公式な露出もごく限られるなど、その謎めいた活動実態と特異な音楽性ゆえ、ときに海外のヴェイパーウェイヴ文化とも関連付けて語られてきた。

1980年代~1990年代に音楽制作で汎用され、今では「ハードオフ」のジャンクコーナーに眠っているような各種シンセサイザーや音源モジュールをあえて操ることで繰り出される彼らの音楽は、一聴するとどこか「懐かしさ」に浸されているようにも思えるかもしれない。しかし、コンセプチュアルな(ように思わされる)その制作スタイルや、何よりネットレーベル文化以降というべき自由な感性に彩られた楽曲たちは、たしかに時代の先端に漂う空気と触れ合い、ときに強く共振する。

2018年には初のCD作品となる1stフルアルバム『DREAM WALK』をリリースし、コアなDTMファン層を突き破り幅広いリスナーにその特異な存在を知らしめることになった彼ら。そして9月4日、その余勢を駆るかのごとく、早くも2ndアルバム『Night Flow』を発表した。「夜から朝までの時間の流れにおける感覚の動きを描いた」とするその内容は、アンビエント~環境音楽への一層の接近とともに、ダンスミュージックとしての強靭な身体性、そして先鋭的なポップネスを兼ね備えたものだ。この堂々たる(けれどどこか儚げでささやかな)傑作がどのようにして生み出されたのか、彼らの結成から現在に至るまでを振り返りながら、じっくりと話をきいた。

コンセプトっていうより、単に「機械、カッコいいなー」みたいな感じで(笑)。(西山)

パソコン音楽クラブ(左から:西山、柴田)
パソコン音楽クラブ(左から:西山、柴田)

―パソコン音楽クラブって一体何者? と思っている人も多いと思うので、まずは結成の経緯から教えていただけますか?

柴田:たしかに、これまであまり写真とかも出してないですしね……(笑)。実はもともと僕と西山さんは、大学生の頃に同じバンドで活動していて。

西山:違う大学に通っていたんですけど、共通の知り合いから誘いを受けたバンドで、僕がギターで、柴田くんがキーボードで参加してました。恥ずかしいからあんまり話したくないんですけど、女の子がボーカルの普通のポップスをやるバンドで……(笑)。

そこから、デモテープ作りとかでDAW(デジタルで音声の録音、編集、ミキシングなど一連の作業が出来るように構成された一体型のシステム)をいじるようになって、シンセサイザーやDTM(デスクトップミュージック、パソコンと電子楽器類を使用して制作された音楽)の話を夜な夜なするようになって今に至ります。

パソコン音楽クラブ(ぱそこんおんがくくらぶ)<br>2015年結成。ローランドSCシリーズやヤマハMUシリーズなど1990年代の音源モジュールやデジタルシンセサイザーを用いた音楽を構築。tofubeatsをはじめ、他アーティスト作品への参加やリミックス、演奏会、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソングなど幅広い分野で活動。2019年9月、ゲストボーカルにイノウエワラビ、unmo、長谷川白紙といった個性派アーティストを、マスタリングエンジニアにこれまでceroや電気グルーヴなどを手がけてきた得能直也を迎えた2ndアルバム『Night Flow』をリリース。
パソコン音楽クラブ(ぱそこんおんがくくらぶ)
2015年結成。ローランドSCシリーズやヤマハMUシリーズなど1990年代の音源モジュールやデジタルシンセサイザーを用いた音楽を構築。tofubeatsをはじめ、他アーティスト作品への参加やリミックス、演奏会、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソングなど幅広い分野で活動。2019年9月、ゲストボーカルにイノウエワラビ、unmo、長谷川白紙といった個性派アーティストを、マスタリングエンジニアにこれまでceroや電気グルーヴなどを手がけてきた得能直也を迎えた2ndアルバム『Night Flow』をリリース。

―DTM作家のなかには楽器経験がない人も珍しくないと思うんですが、おふたりはまず生演奏からスタートしているんですね。以前『THREE THE HARDWARE』(tofubeatsによる音楽制作バラエティー番組)の動画を見て、「西山さん、めちゃくちゃギターうまっ!」と思ったんですが、今の話を聞いて納得しました。

西山:もともとフュージョンとかが大好きで、ギターソロをコソコソ練習していたので(笑)。たしかに、音楽的ベースは楽器演奏にありますね。

―そのあたりは柴田さんも同じ?

柴田:そうですね。僕も最初はピアノ教室に通っていたんですけど、譜面どおりに弾くのが全然好きじゃなくて。そしたら先生に「お前はピアノに向いてないからエレクトーンをやれ」と言われて。YMOが好きでシンセサイザーに興味があると言っていたので、メカっぽいエレクトーンのほうがいいだろう、と思ってくれたみたいで(笑)。

左から:西山、柴田

―具体的にパソコン音楽クラブとして活動しはじめたのはいつ頃からですか?

西山:2015年の暮れくらいですかね。でも、「外に目を向けて活動していこう」って感じでは全然なかったです。

柴田:ふたりで毎夜話しているなかで、昔のゲームのサントラとかで使われているチープな音っていいよね、っていう話で盛り上がって。そういう音がどうやって作られているかを調べるうちに、1980~1990年代のシンセサイザーや音源モジュールの存在が気になってきたんです。

それで、一緒に1万円を握りしめてソフマップに中古機材を探しに行って。そのときはそういう機材が3,000円とかで買えたから、ずいぶんお釣りをもらいました(笑)。

―ソフトシンセサイザーをあえて使わず、昔のハード機材を使うという活動コンセプトはそのあたりから固まってきたんでしょうか?

西山:そうですね。でも、コンセプトっていうより、単に「機械、カッコいいなー」みたいな感じで(笑)。ソフト音源に比べて音的に優れているからって理由ではなくて、ただそういう機材で音楽作れて楽しいなあ、って。

左から:西山、柴田

柴田:そうやって買った機材でお互いに作った曲を交換日記みたいに聴かせ合おうという話になって、共用のSoundCloudアカウントを作ったんです。そのとき、便宜上名前が必要だから、じゃあまあ「パソコン音楽クラブ」にしとくか、と。

西山:そういう意味でこのユニット名にも大して批評的な意味とかはなくて、本当に部活の名前として付けた感じです(笑)。

―そうだったんですね(笑)。ウェブサイトも昔のHTML感というか、ネット黎明期のテキストサイトみたいな雰囲気で最高なんですが、メンバー紹介のところにおふたり以外の名前も書いてありますよね? あれって実在する人たちなんですか?

西山:いるにはいるんですけど、音楽創作面に絡んでくることはないですね。ちなみにクラブのマスコット犬は僕の実家で飼っている犬です(笑)。

―(笑)。コンセプチュアルなのか、ただゆるいだけなのか、判然としない感じが……。

柴田:ウェブサイトに関しては、単に自分たちのスキルの限界があれだったことがあります(笑)。

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リリース情報

パソコン音楽クラブ『Night Flow』
パソコン音楽クラブ
『Night Flow』(CD)

2019年9月4日(水)発売
価格:2,160円(税込)
PSCM002

1. Invisible Border(intro)
2. Air Waves
3. Yukue
4. reiji no machi
5. Motion of sphere
6. In the eyes of MIND
7. Time to renew
8. Swallowed by darkness
9. hikari

イベント情報

『パソコン音楽クラブ2ndアルバム「Night Flow」リリースパーティー』

2019年9月7日(土)
会場:大阪府 南堀江 SOCORE FACTORY
出演:
長谷川白紙
パソコン音楽クラブ

2019年10月12日(土)
会場:京都府 CLUB METRO
出演:
Soichi Terada(House Set)
SEKITOVA
Stones Taro(NC4K)
cool japan
seaketa
パソコン音楽クラブ

2019年 10月26日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW
出演:
長谷川白紙
パソコン音楽クラブ

プロフィール

パソコン音楽クラブ
パソコン音楽クラブ(ぱそこんおんがくくらぶ)

2015年結成。ローランドSCシリーズやヤマハMUシリーズなど1990年代の音源モジュールやデジタルシンセサイザーを用いた音楽を構築。2017年に配信作品『PARKCITY』を発表。tofubeatsをはじめ、他アーティスト作品への参加やリミックス、演奏会、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソングなど幅広い分野で活動。2018年6月に自身初となるフィジカル作『DREAM WALK』をリリース。2018年9月、2ndアルバム『Night Flow』を発表。

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