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長澤知之なりの愛を語る。世の中の不条理も怒りも肯定する生き方

長澤知之なりの愛を語る。世の中の不条理も怒りも肯定する生き方

長澤知之『SLASH』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:横山マサト 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
2019/10/29

長澤知之の“あああ”という、身も蓋もないようなタイトルの曲は、間違いなく、僕にとっての2019年のベストトラックのひとつだ。たったの1分2秒しかない曲だが、その1分2秒の間に、真実がある。これは長澤知之の歌だが、僕にとっての真実の歌でもある。こういう音楽に出会ったときに、なにも信じていない自分でも、実は、信じているものがあるのだと気づく。

この“あああ”を1曲目に置いたミニアルバム『ソウルセラー』を3月に、そして、続くミニアルバム『SLASH』を10月にリリースした長澤。「信仰」というモチーフを、現代的かつアイロニックな物語に落とし込んだ衝撃作“ムー”から始まる『SLASH』も、いい。“90's Sky”のようなロックサウンドを聴かせる曲からも、長澤の音楽に対する無邪気な愛情や、音楽と共に歩んできた人生を感じさせる。長澤知之とは、個人も時代も、自分も他人も、思想もユーモアも、すべてを「音楽」という点で交錯させる稀有なシンガーソングライターなのだと、改めて感じ入る。

変化を求めて声を荒げる人がいる。冷静な振りをして絶望している人がいる。傷ついているのに泣けない人がいる。笑っているけど怒っている人がいる。いろんな人がいる。いろんな人がいるなかで、長澤の歌は人間の「弱さ」に寄って立つ。この歌は、あなたを映すだろうか。聴いて、たしかめてみてほしい。

長澤知之“あああ”を聴く(Apple Musicはこちら

怒りは大きいですね。いい動機になります。

―今年は『ソウルセラー』と『SLASH』という2枚のミニアルバムがリリースされましたけど、僕としては、この2作品を聴いていると非常に安心できるというか、「よく眠れるなぁ」という感覚があって。もちろん、サウンド的には激しい部分もあるし、エグイ感情が歌われている曲もあるんだけど、でも、長澤さんの歌を聴いている間は、毛布にくるまれているような安堵感を抱くことができるなぁ、と。

長澤:……最高ですね、それ(笑)。基本的に、音楽でなにかを傷つけたいとかは思わないですからね。僕は未熟な人間なので、イガイガが飛び出しちゃうことはあるのかもしれないですけど、基本的に、音楽を聴くときには気持ちよく聴いてほしいなと思っています。

長澤知之(ながさわ ともゆき)<br>10歳でギターを始め、1年足らずでオリジナル曲の制作をスタート、18歳でオフィスオーガスタのデモテープオーディションでその才能を認められる。2006年8月、メジャーデビュー。2015年にはAL(小山田壮平×長澤知之×藤原寛×後藤大樹)のVo&Gtとしても活動を正式にスタート。2019年3月にアコースティック・ミニアルバム『ソウルセラー』を、そして10月2日にはバンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』をリリースした。
長澤知之(ながさわ ともゆき)
10歳でギターを始め、1年足らずでオリジナル曲の制作をスタート、18歳でオフィスオーガスタのデモテープオーディションでその才能を認められる。2006年8月、メジャーデビュー。2015年にはAL(小山田壮平×長澤知之×藤原寛×後藤大樹)のVo&Gtとしても活動を正式にスタート。2019年3月にアコースティック・ミニアルバム『ソウルセラー』を、そして10月2日にはバンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』をリリースした。

―今年、こうして2枚のミニアルバムにわけてリリースされるというところには、なにかしらのコンセプトがあったのでしょうか?

長澤:この2作は単純に、アコースティックなもの(『ソウルセラー』)と、バンドサウンドもの(『SLASH』)っていうくらいの違いですね。歌っていることも、自分の喜怒哀楽や考え方が根底にあるのは変わらないので、同じベクトルで、デコレーションが違う感覚です。

あと、できるだけコンパクトに曲を出せたらいいよねって、周りの人とは常々話をしていて。自分が考えていることは日々変わっていきますから、それを曲にしつつ、できるだけタイムラグのない状態で出したいんですよね。

長澤知之『ソウルセラー』を聴く(Apple Musicはこちら

長澤知之『SLASH』を聴く(Apple Musicはこちら

―それだけ、長澤さんにとって音楽はリアルな感情の発露であるということですよね。この2作を聴いて改めて感じるのは、とてもパーソナルな場所から生まれてきた想いや感情が、時代性や社会性をはらんだ歌へと昇華されていくのが長澤さんの音楽なんだな、ということで。

長澤:音楽を作るときに意識していることは、自分のなかにあるものをただ出すということだけですね。音楽ではかっこつけたりせず素直でありたいと思うし、普通の会話のなかでは言わないであろう言葉でも、音楽のなかでそれが適切だと思ったら書くようにしています。

僕にとって音楽を作るのは、いわば、デトックスみたいなものなんです。「怒り」のような感情を自分のなかに溜め込んでしまったら健康によくないから、音楽にすることで昇華させている。それで感情がポジティブな方向に向かえば自分の生活にとっていいことだし、もし、同じような怒りを感じている人がいたら、共感によって、お互いがすっきりできたりもするのかなと思うので。

―音楽が生まれる根源の感情としては、「怒り」は大きいですか?

長澤:怒りは大きいですね。いい動機になります。

長澤知之
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リリース情報

長澤知之『SLASH』
長澤知之
『SLASH』(CD)

2019年10月2日(水)発売
価格:2,530円(税込)
POCS-1830

1. ムー
2. Back to the Past
3. 90's Sky
4. KYOTON
5. いつでもどうぞ
6. 世界は変わる
7. シュガー
8. 戦士は夢の中

長澤知之『ソウルセラー』
長澤知之
『ソウルセラー』(CD)

2019年3月20日(水)発売
価格:2,530円(税込)
POCS-1774

1. あああ
2. ソウルセラー
3. 笑う
4. 金木犀
5. コウモリウタ
6. 歌の歌
7. ゴルゴタの丘
8. Close to me

イベント情報

『Nagasawa Tomoyuki Band Tour 2019 'SLASH'』

2019年12月2日(月)
会場:大阪府 umeda TRAD

2019年12月3日(火)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE

2019年12月5日(木)
会場:福岡県 Gate's7

2019年12月12日(木)
会場:宮城県 仙台 space Zero

2019年12月16日(月)
会場:東京都 WWW X

プロフィール

長澤知之
長澤知之(ながさわ ともゆき)

8歳でビートルズとブラウン管ごしに初対面。10歳でギターを始め、1年足らずでオリジナル曲の制作をスタート、18歳でオフィスオーガスタのデモテープオーディションでその才能を認められる。以後、福岡のライブハウス「照和」、東京のライブハウスでのマンスリーライブを行いながらデモ音源を作成し、2006年8月2日、シングル『僕らの輝き』でR and C Ltd.よりメジャーデビュー。ミニアルバムのリリースを連発した後、2011年自身初のフルアルバム『JUNKLIFE』をリリースした。その後もコンスタントに作品を発表、2013年にセカンドフルアルバム『黄金の在処』をリリース。2015年にはAL(小山田壮平×長澤知之×藤原寛×後藤大樹)のVo&Gtとしても活動を正式にスタートし、2016年4月に1stアルバム『心の中の色紙』リリース、8月にはソロデビュー10周年を迎え、12月に6thミニアルバム『GIFT』をリリースした。2017年4月にはデビュー10年をアーカイブした『Archives#1』をリリースし、唯一の新曲である“蜘蛛の糸”は大きな話題を呼んだ。また、ALとしてもセカンドアルバム『NOW PLAYING』を2018年1月リリースし、2019年3月にアコースティック・ミニアルバム『ソウルセラー』を、そして10月2日にはバンドサウンド・ミニアルバム『SLASH』をリリース。精力的な活動を見せている。

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