
森七菜インタビュー 巨匠たちを惹きつける純粋さ、聡明さ、心の穴
森七菜『カエルノウタ』- インタビュー・テキスト
- 黒田隆憲
- 撮影:西田香織 編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
新海誠監督のアニメーション映画『天気の子』でヒロインの声役を務めた女優の森七菜が、岩井俊二監督作品『ラストレター』に一人二役で出演、さらには、その主題歌『カエルノウタ』で歌手デビューを果たす。
この曲は作詞を岩井が、作曲を同作の音楽を手がける小林武史が担当し、ジャケット写真を永瀬正敏が撮影。どこか懐かしいメロディと、ストリングスをフィーチャーした美しく壮大なアレンジ、そして聴き手の心にまっすぐ飛び込んでくるような、素直で飾り気のない森の歌声が印象的だ。さらにカップリングでは、小泉今日子“あなたに会えてよかった”、荒井由実“返事はいらない”のカバーにも挑戦している。
昨年は『天気の子』以外にも、映画『最初の晩餐』や『地獄少女』、連続ドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』など数々の話題作に出演し、注目を集めてきた森。デビュー当時は「オーディションにめっぽう強い15歳」と言われ、岩井や小林、永瀬らトップクリエーターたちからラブコールが絶えないその魅力は、どのように育まれてきたのだろうか。
あどけない笑顔を時折見せながらも、こちらの質問に対し一つひとつ真剣に答えるその表情には、すでに風格すら備わりつつあった。
2019年は、本当にありがたいことばかりの1年でした。

森七菜(もり なな)
2001年8月31日生まれ大分県出身。2016年に大分県でスカウトされる。2019年7月に公開された映画『天気の子』のヒロイン・天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。他にも数多くの映画、ドラマに出演し話題を呼ぶ。2020年1月17日公開の岩井俊二監督作品映画『ラストレター』に岸辺野颯香/遠野裕里(回想)役にて出演。デビュー曲となる主題歌『カエルノウタ』を2020年1月15日にリリースする。
―2019年は注目作が続いた1年でした。ご自身にとっては、どんな1年でしたか?
森:一昨年がとにかく撮影、撮影の連続で、昨年はそれを一気に観ていただく年でした。それまでお芝居は、誰に届けるでもなしにただ自分のためにやっているような感じだったんですけど、ようやくみなさんに観てもらい、賛否含めていろんな感想をいただく機会がたくさんあって。自分がやったことが誰かに届くってこういうことなんだなって、今までとは違う「意識」というか「概念」が増えました。
―露出が増えると、街で声をかけられることも増えたでしょうね。
森:『3年A組』(菅田将暉主演、日本テレビ系列)に出演したことが、自分にとって転機になったと思います。それで知っていただく方がすごく増えたなという実感がありました。
さらに映画『天気の子』が公開されてからは、反響がものすごくて。「新海監督の映画に出てるんだね、すごいね」って言ってくださる方もたくさんいらっしゃいましたし、高校サッカーのマネージャーをやったことで(『第98回全国高校サッカー選手権』の15代目応援マネージャーに就任)、同世代の子たちとも距離を縮めることができました。全てがいい方向に向かったし、全部楽しめたので、本当にありがたいことばかりの1年でしたね。
岩井俊二さんが作っている映画は、ドキュメンタリーとファンタジーの狹間のよう。
―そして今回、岩井俊二監督の『ラストレター』では一人二役に挑戦しています。
森:オーディションを受けることになり、初めて岩井さんの映画を観させていただいたんですけど、もう衝撃を受けてしまって。岩井さんが作っている映画はどれも、ドキュメンタリーとファンタジーの狹間というか……台本とカメラがあるからそこで人が演じているのではなく、その人がそこにいるからカメラを回しているような映画、というふうに感じます。
お芝居を始めてからは、そんなふうにカメラを回したくなるような人になりたいってずっと思っていましたし、そういう映画を撮っている岩井さんのような方と、一緒に作品を作るってどんな感じなんだろうって……だからオーディションに受かったときは、本当に嬉しかったです。
―ドキュメンタリーとファンタジーの狹間のような作品が好きなのですね。
森:私が目標としている女優さんは、満島ひかりさん、二階堂ふみさん、杉咲花さんなのですが、みなさん映画を観終わったあとも、「この登場人物は、まだどこかで生活しているんじゃないか?」と思わせてくれるような、そんな演技をされる方たちなんですよね。私自身もそういうお芝居ができたら本望だなって思います。
映画『ラストレター』特報。この中で流れている音楽が、森七菜が歌う主題歌“カエルノウタ”
―しかし本当にいろんな作品への出演機会を掴んでいますよね。「オーディションにめっぽう強い15歳」なんて言われた時期もありましたけど、オーディションに受かるコツってありますか?
森:コツ! いや、ないですね……。「これは受かった」と思ったら落ちてしまって悔しくて泣いたときもあるし、「ダメだ」と思っても受かっていたこともあるし。
ただ、オーディションを受けるときには、「この人たちにはもう、二度と会わないだろうから、やれることは全部試して、聞きたいことがあれば聞こう」というスタンスでずっとやってきています。そういうところを気に入ってくださる人もいれば、気に入らない人もいる。だったらどんなオーディションであっても、同じ気持ちで受けていこうと思ってここまで来ました。だから、本当に運がよかっただけで、「めっぽう強い」わけでもないということを、この機会にぜひ言わせてください!(笑)
リリース情報

- 森七菜
『カエルノウタ』(CD) -
2020年1月15日(水)発売
価格:1,500円(税抜)
SRCL-113391. カエルノウタ
2. あなたに会えてよかった
3. 返事はいらない
4. カエルノウタ(Instrumental)
5. あなたに会えてよかった(Instrumental)
6. 返事はいらない(Instrumental)
作品情報
- 『ラストレター』
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2020年1月17日(金)から全国東宝系で公開
監督・原作・脚本:岩井俊二
音楽:小林武史
主題歌:森七菜“カエルノウタ”
出演:
松たか子
広瀬すず
庵野秀明
森七菜
小室等
水越けいこ
神木隆之介
福山雅治
中山美穂
豊川悦司
木内みどり
鈴木慶一
降谷凪
配給:東宝
プロフィール

- 森七菜(もり なな)
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2001年8月31日生まれ大分県出身。2016年に大分県でスカウトされる。2019年7月に公開された映画『天気の子』のヒロイン・天野陽菜役に抜擢され注目を浴びる。他にも数多くの映画、ドラマに出演し話題を呼ぶ。2020年1月17日(金)公開の岩井俊二監督作品映画『ラストレター』に岸辺野颯香/遠野裕里(回想)役にて出演。デビュー曲となる主題歌『カエルノウタ』を2020年1月15日(水)にリリースする。