
CHAIが語る、海外のステージに立つ中で感じる緊張、課題、自信
Honda- インタビュー・テキスト・編集
- 矢島由佳子(CINRA.NET編集部)
- 撮影:山本佳代子
「YouTubeやストリーミングサービスの発展によって、日本のアーティストはどんどん世界へ行ける」なんてことも言われているけれど、それを実現するのは、まったくもって簡単ではない。ツアーで世界を回ったり、世界的な音楽フェスに出演できている日本人アーティストは、ほんの一握りだ。
CHAIは、初めてインタビューした2016年のときから、口だけではなくリアルに「世界」を自分たちの活動の土俵として捉えていた。そして、前回のインタビューからの1年1か月のあいだ、海外メディアからも高い評価を受け、アメリカ・カナダ・イギリス・フランス・スペイン・アイスランド・オーストラリア・韓国・台湾・バンコクと、様々な国でライブやフェスに呼ばれ、自らのツアーも成し遂げてきた。
現在は、HondaバイクのテレビCMに出演し、前に進む10~20代の若者を応援するプロジェクト「Honda×Music バイクに乗っちゃう? MUSIC FES.」に参加中のCHAI。インタビュー前編では、彼女たちが学生時代に抱いていた不安や迷いについて聞かせてもらったが、世界的な活動の中で自信も手に入れる一方で、世界を知れば知るほど自分の小ささも実感している彼女たちは、今も不安や迷いの真っ最中だ。自分たちの現状の捉え方と心境を、率直に語ってもらった。
(海外の人は)極めるところの着眼点が日本と違う。(ユウキ)
―CHAIの海外進出の仕方は、とても理想的であるなと思っていて。日本のミュージシャンが海外に届くのって、やっぱりアニメの主題歌をやるという方法がこれまで一番多かったけれど、CHAIの広がり方はそうではない。楽曲やバンドの存在が「Pitchfork」など海外のメディアで評価され(アルバム『PUNK』はPitchforkで『The 50 Best Albums of 2019』に選ばれた)、じわじわと認知と人気を広げている。それによって、海外の「ジャパニーズカルチャー好き」だけでなく、メインストリームの音楽リスナーにも届いていて。今SpotifyやYouTubeなどで日本の音楽が世界に届きやすくなったと言われているけれど、実際そんな簡単なものではないという現状の中で、CHAIは見事にグローバルに聴かれる環境を築きつつあって、日本のミュージシャンたちに希望を見せてくれている存在でもあると思うんですね。
ユウキ(Ba,Cho):嬉しい!
マナ(Vo,Key)・カナ(Vo,Gt):ありがとう~。
ユナ(Dr,Cho):初めてこんなに海外へ行った1年だったね。今年の1、2月はオーストラリアとアメリカで、毎日違う土地でライブをやって。去年も1年の半分くらいは海外にいたし、感じることも多かったね。

CHAI(ちゃい)
左から:ユナ、ユウキ、カナ、マナ
ミラクル双子のマナ・カナに、ユウキとユナの男前な最強のリズム隊で編成された4人組。海外の活動も活発で、2018年2月にアメリカの人気インディーレーベルBURGER RecordsよりUSデビュー、8月にイギリスの名門インディーレーベルHeavenly RecordingsよりUKデビューを果たす。2019年は2ndアルバム『PUNK』が世界中の様々な音楽サイトで軒並み高評価を獲得し、アメリカ、UK / ヨーロッパ、日本を回る初のワールドツアーを大成功に収める。また2020年1月には世界的なスターMac DeMarcoのオーストラリアツアーのサポートアクト、1月から2月にかけては世界から絶賛されているUSインディーバンドWhitneyのサポートアクトに抜擢された。
―実際、この1年やってきて、手応えと課題をどう感じていますか?
ユウキ:この1年は、海外での活動をずっと夢見てて、それが初めて現実になった年だった。その中で、イメージ通りと、イメージと違うところと、両方感じたかな。
―それは、具体的に言うと?
ユウキ:ずっと海外の音楽が大好きで、憧れて、そこで活躍してる人たちがかっこいいと思ったから挑戦していこうと思って。で、いざ行って同じフィールドに立ったときに、やっぱり世界は広すぎた。世界に行けば行くほど、「CHAI、行ける!」っていう自信と、「届かないな」ってすっごい感じること、両方あったかな。届けるためにもっと必要なこと、足りないことが見えてきた。
―どういうところが足りないと自覚してるんですか?
ユウキ:ただ英語ができればいいってことではないなって思ったし、ただ技術だけじゃないなとも思った。海外に行く前は「アメリカの人は、ストリートで叩いてる人とかでさえ技術が全然違うぞ」って言われてて、「そうなんだ、どうしよう」ってビビってたんだけど、意外とそうでもないなとも思って。ただ、そういう技術面じゃないところで素晴らしかったりするから。極めるところの着眼点が日本と違うなと思った。やっぱりリズムが体の地から出てるなとは思うから、そこは戦っていきたいし。
でもこの1年ですごく逞しくなった気がする。「まだまだだ」って思うところがあるから、よりエンジンがかかる感じがある。そのエンジンをもっと大きいものにしないとやっていけないわって。
出演している、Honda「バイクに乗っちゃう? MUSIC FES.」のCM。新曲“NO MORE CAKE”が起用されている
―その逞しさは、新曲“NO MORE CAKE”の音にも表れてると思います。その「極めるところの着眼点が日本と違う」という話はすごく興味深いんですけど、たとえば海外においては、CHAIのどういうところが評価されてると感じていますか? 日本での評価のされ方と、海外での評価のされ方、同じところもあれば違うところもあるのかなって。
ユウキ:そうだね、違うところもあるよね。
マナ:はっきりはわかんないけど、単純に、新しいんじゃないかな。「今」はね。一般的なお客さんからして新しいというより、Pitchforkとかメディアが見て新しい存在には、なってるという感じがすごくする。それは、認められてるということだから、「よし」っていう自信になってる。
―新しい、というのは、サウンドも、発してるメッセージも?
マナ:そうそう、多分そうだと思う。
ユウキ:メッセージ自体が時代的にも合ってるのかなって思うね。
あと、日本だと、新しいものを受け付けなくて、見たことあるいい感じのものに惹かれるっていうのがあると思うんだけど、海外の人は、見たことないものに惹かれるんだと思う。そこの違いは感じるかな。CHAIは、誰も見たことない新しいことをやりたいし、実際鳴ってる音が新しいかどうかを大事にしてるからこそ、そこに引っかかってもらってるのは「よし」って感じてるかな。
ウェブサイト情報

- 「Honda×Music バイクに乗っちゃう? MUSIC FES.」
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今を全力で走るアーティストとHondaでスペシャルコラボミュージックビデオを制作し、前に進むみんなを応援するプロジェクト。CHAIの他、マカロニえんぴつ、雨のパレード、the peggiesが登場。
リリース情報

- CHAI
『NO MORE CAKE』 -
2020年3月27日(水)配信
イベント情報
- 『CHAI JAPAN TOUR 2020「Ready Cheeky Pretty CHAI」』
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2020年5月30日(土)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO
出演:
CHAI
長岡亮介2020年5月31日(日)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
出演:
CHAI
中村佳穂 TRIO2020年6月13日(土)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演:
CHAI
Homecomings2020年6月14日(日)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演:
CHAI
崎山蒼志
プロフィール

- CHAI(ちゃい)
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ミラクル双子のマナ・カナに、ユウキとユナの男前な最強のリズム隊で編成された4人組、「NEO - ニュー・エキサイト・オンナバンド」、それがCHAI。2017年1stアルバム『PINK』が各チャートを席捲、音楽業界を超え様々な著名人からも絶賛を受ける。2018年には日本テレビ系『バズリズム02』の「コレはバズるぞ2018」1位、『第10回CDショップ大賞2018』入賞など、各所より高い評価を得る。3rd EP『わがまマニア』はApple Music/ iTunesオルタナティブランキング1位を獲得。海外の活動も活発で、2018年2月にアメリカの人気インディーレーベルBURGER RecordsよりUSデビュー、8月にイギリスの名門インディーレーベルHeavenly RecordingsよりUKデビューを果たし、4度のアメリカツアーと、2度の全英ツアー、アメリカ、ヨーロッパ各国のフェスへの出演、中国・香港・台湾・韓国などアジアツアーも果たす。2019年2月13日にはタイアップ曲など話題曲満載の2ndアルバム『PUNK』をリリースし、世界の音楽ファンから最も信頼を受ける。音楽サイトPitchforkで8.3の評価を得たのを筆頭に、様々な音楽サイトで軒並み高評価を獲得し、アメリカ、UK / ヨーロッパ、日本を回る初のワールドツアーを大成功に収める。また2020年1月には世界的なスターMac DeMarcoのオーストラリアツアーのサポートアクト、1月から2月にかけては世界から絶賛されているUSインディーバンドWhitneyのサポートアクトに抜擢される。彼女たちに触れた君の21世紀衝撃度No.1は間違いなく「NEOかわいい」バンドCHAIだよ!