
Lucky Kilimanjaroの所信表明。怒りを捨て、自分の人生を踊れ
Lucky Kilimanjaro『!magination』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:関信行 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
「メジャー / インディー」や「邦楽 / 洋楽」といった枠組みをはじめ、世の中に存在する対立構造を超えて、誰もがワクワクできるような社会を目指す未来志向のポップバンド・Lucky Kilimanjaro。シンセやパーカッションを含む6人編成で、エレクトロハウスやトラップといった音楽性を日本語のポップスに昇華する手腕はこれまでも高く評価されてきたが、メジャー1stフルアルバム『!magination』によって、いよいよ最前線へと躍り出そうな気配が漂っている。
バンドの中心人物は、ソロでCMソングの制作や楽曲提供も行う熊木幸丸。日本のロックバンドを聴いて育った熊木は、Passion Pitを聴いてエレクトロポップに魅せられ、Chance The Rapperのライブを通じて、音楽は人をエンパワーできるのだということを身をもって知ったのだという。今回のインタビューでは、そんな彼のポジティブなパーソナリティーに着目。想像力を握りしめて、可能性の空へ羽ばたこうとするLucky Kilimanjaroの今に迫った。

熊木幸丸(くまき ゆきまる)
「世界中の毎日をおどらせる」をテーマに掲げた6人編成によるエレクトロポップバンド・Lucky Kilimanjaroのボーカル。2020年3月、メジャーでは初のフルアルバム『!magination』をリリース。また、5月には恵比寿LIQUIDROOM公演を皮切りに東名阪のワンマンツアーを開催する。
聴き手の心とポジティブなエネルギーで繋がる、Lucky Kilimanjaroの音と言葉の奥にあるもの
―熊木さんがシンセ主体のバンドを組もうと思ったのは、Passion Pitの影響が大きかったそうですね。
熊木:そうですね。Passion Pitは笑顔で泣けるっていうか。それまで自分が音楽に求めていたものとは全然違う感覚があって、この感じを自分でもやれたらなと思ったんです。
もともと僕は、ポストロックとかマスロックが好きだったんですけど、エモーショナルで、ちょっと物悲しい感じが好きで、MICE PARADEを聴いたりしてました。あと、Lucky KilimanjaroにドラムとパーカッションがいるのはDE DE MOUSEさんの影響でもあります。
―今、活躍している洋楽が好きな30歳前後のバンドマンに取材をすると、最初のモチベーションは「カウンター」だったという話をよく聞くんですね。少し前の日本のバンドシーンは内向きな感じがしたから、もっと外にも目を向けるべきだという意識を持っていて、それこそPassion PitやTwo Door Cinema Club、Foster the Peopleあたりを影響源に挙げる人も多い。熊木さんにもそういったカウンター意識はありましたか?
熊木:「何か面白いことをしたいな」とは思ってました。ただ、僕はもともと『ROCK IN JAPAN』とか『COUNTDOWN JAPAN』に行ってたガチガチのキッズだったので、「シーンをひっくり返してやろう」みたいな意識はなくて。どちらかというと、フェスとかに行って、「こういう場所でシンセを鳴らせたらいいな」みたいなことを考えてました。
―Lucky Kilimanjaroはそのあたりの感覚が面白いなと思います。歌詞を読んでも、反骨精神みたいなもの以上に、ポジティブな前向きさがあるなと。
熊木:僕、「怒り」のエネルギーで人を変えることが好きじゃないんです。お互いにとっていい落としどころを探るほうが好きで。Lucky Kilimanjaroの活動を通じて、「踊れる音楽がもっと流行ったらいいな」とは思うけど、「今のロックシーンをどうにかしてやろう」とは考えてませんし。どちらかというと、懐柔しようとしている感覚かもしれないです。
―それって熊木さんのもともとの性格の表れでもあるんですか?
熊木:そうだと思います。僕は運動音痴なので、「俺は強いんだぞ」みたいな戦い方は全然できなくて。ケンカとかすごい苦手だし、お互いのいいところを見つけて共存するような生き方をしてきたというか……振り返ってみるとそうでしたね(笑)。
―ちなみに、熊木さんにとってサカナクションってどういう存在なのでしょう? サウンドや歌詞の内容は全然違うわけですけど、「ダンスミュージックをベースにして、日本語のポップスに昇華しているバンド」という点では、やはり彼らは先駆者で。影響を受けている部分もありますか?
熊木:サカナクションはもともとめっちゃ好きです。昔はよくライブにも行っていましたし、恵比寿LIQUIDROOMでやった『NF』の1回目にも行きました(2015年7月に開催)。
なので、メロディーの感覚とかは自然と似ている部分もあるのかなと思うんですけど、意識的にサカナクションのエッセンスを取り入れようと思ったことはないですね。もちろん尊敬はしていて、Lucky Kilimanjaroもちゃんと新しい喜びや楽しみを与えられるバンドになりたいと思っています。
リリース情報

- Lucky Kilimanjaro
『!magination』(CD) -
2020年3月4日(水)発売
価格:2,970円(税込)
MUCD-14471. Imagination
2. Drawing!
3. 350ml Galaxy
4. グライダー
5. RUN
6. 時計の針を壊して
7. とろける
8. 君とつづく
9. 春はもうすぐそこ
10. DO YA THING
11. ロケット
12. ひとりの夜を抜け -Live at Shibuya WWW Nov.23 2019-
13. HOUSE -Live at Shibuya WWW Nov.23 2019-
14. FRESH -Live at Shibuya WWW Nov.23 2019-
イベント情報
- 『LUCKY KILIMANJARO ONEMAN TOUR「!magination」』
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2020年5月2日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM2020年5月8日(金)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET2020年5月9日(土)
会場:大阪府 心斎橋 Music Club JANUS
- 『!magination ―もう一杯―』
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2020年6月21日(日)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO料金:各公演 前売3,900円(ドリンク別)
イベント情報
- 『CROSSING CARNIVAL'20』
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2020年5月16日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、TSUTAYA O-WEST、TSUTAYA O-nest、duo MUSIC EXCHANGE、WOMB LIVE、clubasia、7th FLOOR出演:
王舟(トリオ編成)
君島大空
CRCK/LCKS
柴田聡子inFIRE
曽我部恵一
betcover!!
吉澤嘉代子
YOMOYA
Lucky Kilimanjaro
and more
料金:5,500円(ドリンク別)
プロフィール

- Lucky Kilimanjaro(らっきー きりまんじゃろ)
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熊木幸丸(Vo)を中心に、同じ大学の軽音サークルの仲間同士で結成され、2014年、東京を拠点にバンド活動開始。「世界中の毎日をおどらせる」をテーマに掲げた6人編成によるエレクトロポップ・バンド。スタイリッシュなシンセサウンドを軸に、多幸感溢れるそのライブパフォーマンスは唯一無二の存在感を放つ。2018年11月に1st EP『HUG』にてメジャーデビュー。 その後、2019年6月『風になる』、7月『HOUSE』、8月『Do Do Do』、9月『初恋』と4か月連続でシングルをリリース、更に10月には2nd EP『FRESH』を立て続けにリリースすると、楽曲の良さが評判を呼び全国のTV、AM/FM局にて56番組のパワープレイ・番組テーマを獲得。“FRESH”はオリコン2019年10月度FMパワープレイランキング1位を獲得。同年8月には『ROCK IN JAPAN FES.』への初出演も果たし、フェスファンからも熱い視線を浴び更なる注目を集める。2019年11月、バンド自身初となるワンマンライブ『FRESH』@渋谷WWWは、4か月前の7月には既に即完状態。2020年3月にはメジャーでは初のフルアルバム『!magination』のリリースを発表。また同時に5月には恵比寿LIQUIDROOMを皮切りに東名阪のワンマンツアーを発表。