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中田裕二、粗探しが目立つ社会を見て語る「人の矛盾を肯定する」

中田裕二、粗探しが目立つ社会を見て語る「人の矛盾を肯定する」

中田裕二『DOUBLE STANDARD』
インタビュー・テキスト
柴那典
編集:矢島由佳子(CINRA.NET編集部)

日常が失われ、価値観が大きく揺らぐ今、ミュージシャンはなにを感じ、どんなことを考えているのか。

もちろん、それぞれの立ち位置や視点によって状況や見えるものも大きく異なる。それでも、時代の切っ先を掴んで表現しようと取り組んでいるアーティスト一人ひとりの言葉から感じ取れるものは、次の時代への貴重な指針となる。筆者はそんな風に考えている。

中田裕二は、現在39歳。2011年のソロデビューからは9年。艶のある歌声と独特の色気を感じさせるメロディセンスを魅力に着実にキャリアを重ねてきた彼が、ニューアルバム『DOUBLE STANDARD』を4月15日にリリースした。

哀愁に満ちた歌声を響かせる“海猫”を筆頭に、しっとりと胸に染み込むようなメロウネスに満ちたアルバム。そこには彼のルーツである1970年代~80年代の歌謡曲やニューミュージックのテイストが色濃く根付いている。それと同時に、Tame Impalaやリオン・ブリッジズなど海外のポップミュージックの最前線ともリンクする時代性も感じる。

「矛盾を肯定する」というアルバムのテーマについて、人肌の温かみが求められる時代の流れについて、今の状況について、様々な角度から話を交わした。

「人の矛盾を突いて攻撃するような世の中になってきている気がする」

中田裕二(なかだ ゆうじ)<br>1981年生まれ、熊本県出身。2000年にロックバンド「椿屋四重奏」を結成、フロントマンおよびすべてのレパートリーのソングライターとして音楽キャリアをスタート。2011年のバンド解散直後からソロとしての活動を開始。4月15日に、9thフルアルバム『DOUBLE STANDARD』をリリースした。
中田裕二(なかだ ゆうじ)
1981年生まれ、熊本県出身。2000年にロックバンド「椿屋四重奏」を結成、フロントマンおよびすべてのレパートリーのソングライターとして音楽キャリアをスタート。2011年のバンド解散直後からソロとしての活動を開始。4月15日に、9thフルアルバム『DOUBLE STANDARD』をリリースした。

―まず、ミュージシャンとして中田裕二さんが今どんなことを感じてらっしゃるかをお伺いできればと思います。新型コロナウイルスの感染拡大により社会が大きく変わってしまっている。特にライブやツアーは全くできなくなっている。その一方、いろんな方がSNSやライブ配信などで音楽を届ける形を模索している。そういう中で、中田さんはどんなことを感じていますか?

中田:みんな試行錯誤しているし、悩んでいる人は悩んでいると思います。正直、僕自身も正解は見つかっていないです。ただ、できることはやりたいと思います。それで普段は使い慣れないSNSやネットを使っていろんなことをやっているんです。ネットがない時代だったら、なにも仕事ができなかったですよね。

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悪い知らせ途切れない 空の色もすぐれない 今までと違う空気がざわめいて 思いがけないところに 立ち塞がる暗闇 目と目を合わせて確かめる温もり どうか君の為に 明日を恐れずにいてよ 誰も責めない君の事を 僕が受け止めるから どうか君の為に 明日をこばまずにいてよ 日々は絶えず 移り変わる 雨風をしのいで 夜明けを待つ 出来ない事数えて 頭抱え込まずに あたりに咲いてる 微笑みを集めて 帰ろう どうか君の為に 明日を恐れずにいてよ 誰も責めない君の事を 僕が受け止めるから どうか君の為に 明日をこばまずにいてよ 日々は絶えず 生まれ変わる 曇り空過ぎれば 星が笑う

中田裕二(@nakada_yujician)がシェアした投稿 -

4月4日、自身のInstagramアカウントにて、「今」を歌った新曲“君が為に”を急遽アップした

―このインタビューもオンラインですが、僕自身「こういうやり方もできるんだ」というシンプルな発見がありました。

中田:そうですね。正直、便利だと思います。ただ、ここから長丁場になると思うので、どうやって僕たちミュージシャンが仕事をできるのか、どういうことをやれるのかを、探していかないといけないなとは思います。今は一心不乱にやっている最初の段階ですけど、それが長く続くとなるといろいろ疲弊してくる気もしますし、SNSやネットでしかコミュニケーションできないストレスも増えてくると思うので。

―そうですね。このお話を最初にお伺いしたのは、中田さんの今回のアルバムタイトルの『DOUBLE STANDARD』という言葉が、2つの基準があるという意味合いで、社会のルールがガラッと変わってしまった今の状況に不思議に符合してしまっているように思うからなんです。もちろん、この言葉を考えたときにはこんなことはイメージされてなかったとは思いますが。

中田:思ってなかったですね。

中田裕二

―そもそも『DOUBLE STANDARD』というタイトルとコンセプトはいつ頃、どんな風にして生まれていったんでしょうか。

中田:このタイトルにしようと思ったのは去年ですね。僕としては、世の中の空気にすごく閉塞感がある気がしていて。ネット社会が発展して、おおらかさがなくなってきたと思うんです。一貫性を強要するというか、人の矛盾を突いて攻撃するような世の中になってきている気がする。

僕は昭和の映画が大好きなんですけど、ああいう作品には、いい意味での多様性や矛盾のようなものがあるんですよね。矛盾の上に、振り切ったアートが生まれてるというか、その矛盾と自分が折り合いをつけるときに摩擦が起きて火花が散って作品が生まれているような感じがある。

それに、基本的に人間が矛盾しているのは仕方ないわけじゃないですか。日々、すべての物事が移り変わる中で、誰しも外の影響を受けて変わり続ける。でも、SNSを見ていると「昔はこう言っていたのに今はこう言っていますね」みたいに人のことを言うのを見ることが多くて。

―たしかに、矛盾を許さないムードがありますね。

中田:外にばっかり目がいっていて、自分の内側に目がいっていないみたいな空気感があるなと思います。

あと、自分自身、めちゃくちゃ矛盾している人間だなあって思うんです。20年くらい音楽活動をやっているんですけれど、音楽に限らず、生き方にしても、言ってることややってることがどんどん変わり続けている。以前は筋の通ったポリシーが必要なのかとも思ってたんですけど、それに縛られてしまって窮屈に感じてしまうことも多くなっていて。だから、矛盾って、一般的にはよくないものと思いがちなんだけど、実はそんなことないと思うようになった。そういうことが原動力になっていると思いますね。

中田裕二

―『DOUBLE STANDARD』って、たしかに悪い意味合いを持って使われる言葉ですよね。特にSNS上で「ダブスタ」と略されるとそういうニュアンスが強まる。

中田:そうですね。よく政治的な発言とか議論を投稿するときに使うので。

―あえてその価値観をひっくり返すというか、「矛盾を肯定する」というテーマがあったということですね。

中田:そういうことですね。矛盾を肯定しないとコミュニケーション自体が正常に行われないんじゃないかという気もするので。

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リリース情報

『DOUBLE STANDARD』(CD+DVD)
中田裕二
『DOUBLE STANDARD』(CD+DVD)

2020年4月15日(水)発売
価格:3,960円(税込)
TECI-1677

[CD]
1. DOUBLE STANDARD
2. 海猫
3. どうどうめぐり
4. 蜃気楼
5. グラビティ
6. UPDATER
7. 火影
8. 愛の前で消えろ
9. 長い会話
10. 輪郭のないもの

[DVD]
『中田裕二 trio saloon TOUR 19 "minimal dandyism 3” at Billboard Live TOKYO, September 19th, 2019』
1. リバースのカード
2. Nobody Knows
3. テンション
4. ロータス
5. PURPLE
6. ただひとつの太陽
7. ランナー
8. サザン・ウィンド(中森明菜カヴァー)
9. THE OPERATION
10. STONEFLOWER
11. 誘惑
12. 海猫

プロフィール

中田裕二
中田裕二(なかだ ゆうじ)

1981年生まれ、熊本県出身。2000年にロックバンド「椿屋四重奏」を結成、フロントマンおよびすべてのレパートリーのソングライターとして音楽キャリアをスタート。“紫陽花”“恋わずらい”“いばらのみち”に代表される、ロックバンドの枠にとらわれないスケール感と個性あふれる楽曲で人気を集める。2011年のバンド解散直後からソロとしての活動を開始。コンスタントなオリジナル作品の発表&全国ツアーの開催、オリジナル / カバー不問の数多くのレパートリーの中からその場でセットリストを決めていく弾き語りライブツアー『中田裕二の謡うロマン街道』、カバーアルバム『SONG COMPOSITE』のリリース、さらには他アーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースなど、精力的に音楽活動を展開している。確かな歌唱力に裏打ちされた艶のある歌声、幼少時に強く影響を受けた70-80年代の歌謡曲 / ニューミュージックのメロディセンスを核に、あらゆるジャンルを貪欲に吸収したバラエティに富むサウンドメイクと様々な情景描写や人生の機微をテーマとした詞作によるソングライティングが幅広い層に支持されている。

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