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NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY・小室ぺいの半生を辿る。孤独の殻を破って見えた景色

NITRODAY
インタビュー・テキスト・編集:
矢島大地(CINRA.NET編集部)
撮影:Kay N(IIZUMI OFFICE)

最近は、若いことの素敵さに気づいてしまったが故に惜しい気持ちになってしまって。だからこそ、若さとか青春感がテーマになってきた気がするんです。

小室:静けさっていう話で言うと……それこそ『レモンドEP』で言えば、言われた通り「生命力のない夏」をテーマにした作品なんですよ。それはNUMBER GIRLやeastern youth、bloodthirsty butchersを聴いていた時になんとなく浮かび上がっていた景色で、いつもその情景に安らいで、穏やかになれていたんです。それを自分なりにやってみたらどうなるのかなって思ったんですよね。

―「生命力のない夏」とおっしゃいましたけど、上手くできなくて不甲斐ない自分自身に対して涙を流す情景も描かれているじゃないですか。解釈してみると、やっぱり人と繋がること、人に理解してもらうことを諦めきれないから叫んでいる人だと思ったんですよ。諦めと希望の間でずっと揺れているというか。

小室:……たとえば夏は楽しいイメージがあるけど、僕はただただ退屈だったんですよね。そんな中で、聴いてきたバンドたちの歌っている「退屈な夏」が自分にフィットしたし、それを歌うことが一種の憧れでもあったんです。キラキラしていなくても、自分だけの夏がある、誰も知らない夏がここにあるって思えて。今話していても思いますけど、やっぱり自分の歌は願望みたいなものだと思うんですよ。自分だけにフィットする夏がなかったから、歌にして描いたんだろうなって。

小室ぺい

―その変化と成長は、フルアルバムの『マシン・ザ・ヤング』でより一層克明に表れたと思います。願いと情景とを描いた後に、その情景の中にいる自分を歌にすることが増えたというか。失礼な言い方かもしれないですけど、ここまでの話を伺っていても、歌うことによって自分の感情を学んできた方のような気がして。

小室:以前金原ひとみさんの本を読んだ時に、「何かを書く時には、まず最初に書かれるべき風景があって、それをテレビ画面のように映すだけなんだ」って書いてあって。『レモンドEP』の時は、そういう書き方だった気がするんですね。でも『マシン・ザ・ヤング』のあたりから、もっと自分のことを歌いたい気持ちが強くなっていったんです。

―“ジェット”ではまさに、自分を解き放つための愚直な願いが歌われてますよね。<その終わりから逃げるように / ジェットの自転車に乗って / 空を泳いでみたい>と。自分の心の形自体を歌うようになったのがこの頃だと感じていて。

小室:……やっぱり「自分だけの何かが欲しい」っていう気持ちはずっと変わらないんでしょうね。でも、ただイライラを吐き出したり景色を書いたりするだけじゃなくて、自分の気持ち自体に形を持たせないと、本当の意味での「自分だけのもの」は作れないって思うようになったのかな。自分の外へのイライラや風景を書き尽くしたなと思った時に、自分の内側に向かうしかなくて。純粋に、「生きてるからには遺したいじゃん」っていう気持ちになれたと言いますか。

『マシン・ザ・ヤング』(2018)収録

SpotifyでNITRODAY『マシン・ザ・ヤング』(2018)を聴く(Spotifyを開く

―『マシン・ザ・ヤング』に至るまでに、自分だけの歌が誰かに響いていることを実感できたのも、大きかったですか。「イライラを吐き出す以上に、自分をそのまま表現すればわかってくれる人がいる」と思えたというか。

小室:………(長考)こうして振り返ってみても、僕はいつも不器用だったと思うんですよ。でも、どんな人にも、不器用で上手くできなくてどうしたらいいのかわからない時期があるのかなと思って。……ただ、そういう時にひとりで考えていたことが自分にとって大事な人生観になることもあると思うんです。

―それこそ、自分だけのものですよね。

小室:はい。そういう意味で、自分にしかわからない「若い自分」を詰め込む気持ちが『マシン・ザ・ヤング』には入ってたんだと思います。まあ、昔は「若くなくなってしまう」なんて考えなかったんですけど……20歳になっちゃったので、若干「若さって失われていくんだな」みたいなことまで考えるようにはなりましたね(笑)。

―ははははは。でも音楽の輝きと青さは増していってるじゃないですか。

小室:10代の頃は、若いって言われるのが逆に嫌だったんですよ。でも最近は、「若いっていいなあ」みたいなモードになってて。なぜなら、若い時は時間がたくさんあるから。

―そこっすか。

小室:いや、将来的な時間がたくさん残されているっていうことも含めてです(笑)。で、若いことの素敵さに気づいてしまったが故に惜しい気持ちになってしまって。だからこそ、若さとか青春感がテーマになってきた気がするんですけど。

小室ぺい

―『少年たちの予感』はまさにそういう作品ですよね。過ぎ去ったからこそ惜しい青春と、どうしたってこの世界の中で生きていくしかないっていう気持ちと。失った青春にどんどん里帰りしていってるのがNITRODAYの音楽の面白さだと思うんです。

小室:10代の時は将来なんてどうでもいいと思ってたし、それでOKだったんです。イライラはしていたけど、将来を不安に思うことすらなかったんですよ。

だけどその時代を抜けて、NITRODAYをやっていくことを自分で選んだんだっていう感覚が生まれた時に、「これからも生きていく」っていう気持ちが生まれたんですよね。そうなると、気持ちがどんどん外向きになってきて。だから、『少年たちの予感』を作って初めて、「こんな人に聴いてもらえたらいいな」っていう気持ちを自覚できたんですよね。

『少年たちの予感』(2019)収録

小室ぺい
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作品情報

『君が世界のはじまり』
『君が世界のはじまり』

2020年7月31日(土)
テアトル新宿ほか全国で公開

原作・監督:ふくだももこ
脚本:向井康介
音楽:池永正二
出演:
松本穂香
中田青渚
片山友希
金子大地
甲斐翔真
小室ぺい
板橋駿谷
山中崇
正木佐和
森下能幸
江口のりこ
古舘寛治
配給:バンダイナムコアーツ

リリース情報

『少年たちの予感』
NITRODAY
『少年たちの予感』(CD)

2019年10月23日(水)発売
価格:1,500円(税抜)
PECF-3244

1. ヘッドセット・キッズ
2. ダイヤモンド・キッス
3. ブラックホール feat.ninoheron
4. アンカー
5. ジェット(Live)
6. ボクサー(Live)
7. レモンド(Live)
8. ユース(Live)

プロフィール

NITRODAY(にとろでい)

小室ぺい(Vo,Gt)、岩方ロクロー(Dr)、やぎひろみ(Gt)、松島早紀(Ba)によるロックバンド。2016年3月に結成し、 2017年 7月に『青年ナイフEP』 でデビュー。2018年に『レモンドEP』、1stフルアルバム『マシン・ザ・ヤング』をリリースし、2019年10月に『少年たちの予感』を発売。さらに、2020年7月公開の映画『君が世界のはじまり』にて、小室ぺいが俳優デビューすることが発表された。

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