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キタニタツヤが切り取る、悪夢のような現実と未来への救いの音楽

キタニタツヤが切り取る、悪夢のような現実と未来への救いの音楽

キタニタツヤ『DEMAGOG』
インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:湯浅良介 編集:飯嶋藍子

キタニタツヤのニューアルバム『DEMAGOG』。その全7曲には、「悪夢」と「地獄」という言葉が繰り返し登場する。全ての楽曲が2020年3月以降に作られたという今作は、現代社会の歪みを様々な視点から切り取ったコンセプチュアルな一枚だ。

「こんにちは谷田さん」名義でのボカロPとしての音楽活動を経てシンガーソングライターとして頭角を現し、ヨルシカのサポート、sajou no hanaなど様々なバンドやプロジェクトでも活躍する彼。いわゆる「ネット発アーティスト」としても注目を集める存在だが、その魅力は何よりも鋭利な言葉とサウンドのセンスにある。

アルバムのタイトル『DEMAGOG』は「大衆の情熱と偏見に訴えることによって支持を求める政治指導者」という意味。彼はこの言葉にどんな思いを込め、悪意のはびこる今の時代に何を見出したのか。キタニタツヤというアーティストの過去と現在を掘り起こした。

ボカロPから、オルタナティブロックに憧れてシンガーソングライターへ

―キタニさんはいろんなタイプの音楽活動をされてきたわけですが、「キタニタツヤ」名義でのシンガーソングライターの活動はどんな位置づけでしょうか?

キタニ:自分がいちばんやりたい音楽だし、自分にしかできない、いちばん軸になっているものです。まず自分のために曲を作って、自分のために発表している。その前提ありきで人に聴いてもらう。それが活動の基準になっています。

キタニタツヤ<br>シンガーソングライター。2011年に音楽活動をスタートさせ、「羊の群れは笑わない」を皮切りにバンド活動を開始。2014年頃からネット上に楽曲を公開し「こんにちは谷田さん」名義でボカロPとしても始動。2016年からはベーシストとしても活動を始め、2018年にバンド「sajou no hana」を結成。様々なアーティストへの楽曲提供、ヨルシカのサポートなど、幅広く活動している。
キタニタツヤ
シンガーソングライター。2011年に音楽活動をスタートさせ、「羊の群れは笑わない」を皮切りにバンド活動を開始。2014年頃からネット上に楽曲を公開し「こんにちは谷田さん」名義でボカロPとしても始動。2016年からはベーシストとしても活動を始め、2018年にバンド「sajou no hana」を結成。様々なアーティストへの楽曲提供、ヨルシカのサポートなど、幅広く活動している。

―「こんにちは谷田さん」名義でボカロPとして活動もされていましたが、今の自分と地続きだという感覚はありますか?

キタニ:ありますね。シンガーソングライターとしての活動を始めようと思ったきっかけも、そもそもボカロ名義で出していた“芥の部屋は錆色に沈む”という曲が初めて10万回再生されて、その曲のアコースティックアレンジの評判が意外とよかったから今の活動をやっているんです。そういう意味で、地続きだという感覚はありますね。

―ボカロから音楽活動を始めた人って、いろんなタイプがいると思うんですが、キタニさんはボカロ曲を自分で歌うということを当初からイメージしていましたか?

キタニ:いや、純粋にボーカロイド文化のファンだったんです。特に高校生の時、2011年頃からすごくハマって。ボーカロイドが歌っているという共通点だけで、ギターロックも、アイドルポップも、小難しいフュージョンも、いろんな音楽が混在して、全部つながっている。それをフラットに楽しめる空間がすごく好きで。

それで「大学生になったら機材を買ってボカロPになるんだ」と思って、ボカロPになった。その流れを経て今に至っているという感じです。あの頃はボカロ界隈の中でもギターロックがメジャーなジャンルになっていて、ギターのかっこいい曲も多くて。

キタニタツヤ

―音楽のルーツはASIAN KUNG-FU GENERATIONだということですが、どんな感じだったんでしょうか?

キタニ:音楽にハマるきっかけがASIAN KUNG-FU GENERATIONでした。小学1年生の時に“遙か彼方”に出会って「ロックってかっこいいんだ」と思って、いろんな音楽を聴くようになったんです。そこから日本のインディーズで活動しているバンドたちに憧れるようになって、オルタナティブなロックが好きになった。全てのきっかけはアジカンですね。

「ヨルシカではプレイヤーというよりもバンドメンバーという気持ちでいます」

―キタニさんはsajou no hanaやヨルシカなど、いろんなバンドやプロジェクトにもベーシストとして参加されていますよね。そのあたりの位置づけは?

キタニ:sajou no hanaはバンドメンバーでもあるけど、サウンドプロデューサーという意識が強いです。渡辺翔という人間がメインコンポーザーで、彼は編曲をしないから、その素晴らしいメロディを僕の持っている手札でいいサウンドに仕上げていこうという気持ちでやっています。

―ヨルシカに関してはどうでしょう?

キタニ:ヨルシカを主宰しているn-bunaくんは、もともとボカロP時代からの仲間で。同い年だし、仲のいい友達。で、彼に「バンドやるからキタニがベース弾いてくれんか」と言われて。僕がメインで弾く楽器はベースだけど、当時からドラムも打ち込んで、ひとりでギターもベースも弾くスタイルでやっているんで、とりたててベーシストという意識はそんなにないですね。

ほかのメンバーもそうですけど、曲に対して口出しするし、言われたとおりに演奏するというより、オリジナリティを出したり提案したりもする。だからヨルシカでもプレイヤーというよりもバンドメンバーという気持ちでいます。

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リリース情報

キタニタツヤ『DEMAGOG』
キタニタツヤ
『DEMAGOG』初回生産限定盤(CD+DVD)

2020年8月26日(水)発売
価格:3,476円(税込)
SRCL-11550

[CD]
1. ハイドアンドシーク
2. パノプティコン
3. デッドウェイト
4. 人間みたいね
5. 悪夢
6. デマゴーグ
7. 泥中の蓮

[DVD]
Hug myself (your side)
~Live & Document from 2020.06.26(Fri.) SHIBUYA QUATTRO~

キタニタツヤ
『DEMAGOG』通常盤(CD)

2020年8月26日(水)発売
価格:1,980円(税込)
SRCL-11552

1. ハイドアンドシーク
2. パノプティコン
3. デッドウェイト
4. 人間みたいね
5. 悪夢
6. デマゴーグ
7. 泥中の蓮

プロフィール

キタニタツヤ

シンガーソングライター。2011年に音楽活動をスタートさせ、「羊の群れは笑わない」を皮切りにバンド活動を開始。2014年頃からネット上に楽曲を公開し「こんにちは谷田さん」名義でボカロPとしても始動。2016年からはベーシストとしても活動を始め、2018年にバンド「sajou no hana」を結成。楽曲提供、ヨルシカのサポートなど、幅広く活動している。

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