
小山田壮平の歌の旅路 奥山由之と語り合う、歌の言葉と写真の神秘
小山田壮平『THE TRAVELING LIFE』- インタビュー・テキスト
- 天野史彬
- 撮影:佐藤祐紀 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2013年のandymori解散以降、バンド「AL」での活動などと並行してソロ活動を行ってきた小山田壮平が、ソロ名義初のアルバム『THE TRAVELING LIFE』をリリースした。今作は、そのタイトルが示すとおり「旅」というモチーフが随所に散りばめられたアルバムだが、andymoriの“Life is Party”(2009年)で<10年たったら旅に出よう>と歌ってから約10年、小山田は本当に「旅」のアルバムを作り上げた、ということになる。
そして、本作のジャケットやブックレットに写真を提供したのが、最近では米津玄師“感電”ミュージックビデオでも話題となるなど、八面六臂の活躍を見せる写真家・映像監督の奥山由之だ。奥山はandymoriにとって最後のスタジオアルバム『宇宙の果てはこの目の前に』(2013年)でもジャケット写真を担当しており、今回もまた、小山田のターニングポイントに写真で寄り添う形となった。『THE TRAVELING LIFE』と同時に小山田初の詩集『Sunrise&Sunset 小山田壮平詩集』も発売されたのだが、そこにも、何人かの写真家や絵描きと共に、奥山は写真を提供している。
今回、小山田壮平と奥山由之の対談を敢行し、『THE TRAVELING LIFE』についてはもちろん、お互いの表現の神秘について大いに語り合ってもらった。聞けば、奥山の写真家としての自立やフィルムカメラを使い始めた経緯にも、小山田の存在は少なからずかかわっているよう。2013年の初対面から7年が経ち、当時の小山田と同じ年齢になった奥山だが、彼は10代の頃から小山田のファンだったということで、今でも奥山由之にとって小山田壮平とは、特別な存在なのだ。友情と憧れが混じり合うような、そんな2人の距離感がとても愛おしく感じられる取材現場だった。

小山田壮平(おやまだ そうへい)
1984年、福岡県飯塚市で生まれる。2007年、andymoriを結成。2014年10月解散。ALのギターボーカル。自主制作音盤『2018』を自身の弾き語りツアーにて会場販売。2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアー等も精力的に行なっている。2020年8月、1stソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』を発表した。
小山田壮平を追いかけた、奥山由之の20代前半の記憶ーー作品を送った学生時代、会社を休んではじめて仕事を一緒にしたこと、写真家になると決心したライブのこと
―まず、おふたりの出会いから聞かせてください。
奥山:出会い。覚えてます?
小山田:僕の記憶を言うと、2011~12年頃、東日本大震災の被災地でのライブオファーを受け付けるためにメールアドレスをブログに公開していたんです。そのアドレス宛に、まったく関係のないメールがきて(笑)。それが、おっくん(奥山)からのメールだったんですよね。たしか、そのときに作品も一緒に送ってくれていたんですけど。
奥山:『creep』という作品ですね。震災をきっかけに作った作品で、当時、ウェブ上で公開していました。
小山田:当時の僕は自分のことでいっぱいいっぱいで、おっくんの才能に気づけなかったんですよ。ただ、「なんか変な人がおる」と思ったくらい(笑)。それから『宇宙の果てはこの目の前に』(2013年)のジャケット撮影とタイトル曲のMV撮影を同時にやったときに、初めて会ったんです。現場で「あのとき、メールを送った奥山です」と言われて、名前の字面は覚えていたので、「ああ、あのときの!」となったんですよね。
奥山:高校を卒業する頃にandymoriがデビューして(2008年)。僕の大学時代の記憶は、アンディとくるりの音で溢れていました。あの頃、壮平さんのブログを読みながら「いつか、この人に会ってみたいな」と思っていたんです。
奥山:それで作品を送ったんですけど、何年か経って、「アンディの次のアルバムのアートディレクションをやってほしい」というお話をナカムラトモさん(1994 Co.,Ltd.の代表、中村智裕)からいただいて。
でも、当時はアートディレクションのやり方がわからなかったので、「アンリアレイジ」というファッションブランドの森永(邦彦)さんにお願いをして、僕は写真を撮ることになったんです。それで、あの棺桶の撮影をしましたね。
小山田:そうだったね。
奥山:僕、あの頃は会社員だったんですよ。
小山田:え、そうなの?
奥山:広告代理店でコピーライターをやっていました。なので、あのときは会社を休んで撮影に行ったんです。そのあとLIQUIDROOMでアンディのライブを観ながら「会社を辞めよう」と。「やっぱり、自分がどうしても作りたいものと全力で向き合いたい」と、切に思って。

奥山由之(おくやま よしゆき)
写真家 / 映像監督。1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。映像監督としてTVCM・MVなどを多数手がけている他、広告・CDジャケットなどのアートディレクションも行う。新作写真集『The Good Side』がフランスの出版社・Editions Bessardより発売中。
奥山:そうだ、覚えてますか? 『宇宙の果ては~』がリリースされた頃、撮影のお礼もかねて壮平さんにメールを送ったら、すごくテンションの高いお返事をいただいて、でも、その2日後くらいに。
小山田:あぁ~、ダイブ?
奥山:そう(笑)。そういうことがあって、ものすごく心配になりました。
小山田:あの頃は、全方位的にテンションが高かったんですよね……。ご心配をおかけしました(笑)。
奥山:(笑)。ごめんなさい、話していいことだったのかわからないですが……最初のメールから考えると、時間が経ちましたね。
小山田:そうだね、10年近く経ってる。
奥山:今もこうやって壮平さんの音楽が聴けることと、自分がその大好きな楽曲に関われることが、とても嬉しいです。
小山田:うん、僕も嬉しいです。
リリース情報

- 小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』初回限定盤(CD+DVD) -
2020年8月26日(水)発売
価格:4,180円(税込)
VIZL-1786[CD]
1. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ[DVD]
『THE TRAVELING LIFE DVD』
・あの日の約束通りに(なんば Hatch 2019.9.19)
・革命(中野サンブラザ 2018.10.30)
・16(中野サンブラザ 2018.10.30)
『Music Video』
・OH MY GOD
・HIGH WAY
- 小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』通常盤(CD) -
2020年8月26日(水)発売
価格:3,080円(税込)
VICL-654111. HIGH WAY
2. 旅に出るならどこまでも
3. OH MY GOD
4. 雨の散歩道
5. ゆうちゃん
6. あの日の約束通りに
7. ベロベロックンローラー
8. スランブは底なし
9. Kapachino
10. 君の愛する歌
11. ローヌの岸辺
12. 夕暮れのハイ
- 小山田壮平
『THE TRAVELING LIFE』(LP) -
2020年9月4日(金)発売
価格:3,850円(税込)
VIJL-60226~60227
プロフィール

- 小山田壮平(おやまだ そうへい)
-
1984年、福岡県飯塚市で生まれる。2007年、andymoriを結成。2014年10月解散。ALのギターボーカル。自主制作音盤『2018』を自身の弾き語りツアーにて会場販売。2016年より自身のソロ弾き語り全国ツアー等も精力的に行なっている。2020年8月、1stソロアルバム『THE TRAVELING LIFE』を発表した。
- 奥山由之(おくやま よしゆき)
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写真家・映像監督。1991年東京生まれ。2011年『Girl』で第34回写真新世紀優秀賞受賞。2016年『BACON ICE CREAM』で第47回講談社出版文化賞写真賞受賞。映像監督としてTVCM・MVなどを多数手がけている他、広告・CDジャケットなどのアートディレクションも行う。新作写真集『The Good Side』がフランスの出版社・Editions Bessardより発売中。