インタビュー

綾野剛×常田大希 変化を恐れず、自らの聖域を大切に温める

綾野剛×常田大希 変化を恐れず、自らの聖域を大切に温める

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:垂水佳菜 編集:川浦慧、久野剛士(CINRA.NET編集部)

時代の変化ではなく、あくまで人間の感情が描かれる。映画『ヤクザと家族』

―今回、綾野さんが主演されて、常田さんがmillennium paradeとして主題歌を務められた映画『ヤクザと家族 The Family』には、「ヤクザ」というモチーフを通して、1990年代から現代に至るまでの時代の変化、社会の在り方の変化が色濃く描かれていると思うんです。この時代の変化は、きっと今生きている、ある一定以上の世代の人たちが実感しているものでもあるのかなと思いました。この映画に刻まれている「変化」というものを、おふたりはどのように受け止めましたか?

綾野:「この映画にとって変化とは?」と訊かれたら、この作品の事実を示した記号だと思います。

―記号、ですか。

綾野:この映画に出ている僕たちがやるべきことは、あくまでこの作品のなかの事実を作ることであり、この作品のなかで許されるリアリティーを追求しなければいけない、ということだけ。実際に起きている、現代のリアリティーを組み込もうという意識は、僕らにはあまりないんです。

左から:綾野剛、常田大希

―時事的な部分というのは、あまり意識しないようにしている?

綾野:映画の題材としては1992年に「暴力団対策法」(正式には「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)ができて、この国のヤクザがどのような立場になっていったのかということを扱っている。暴対法以前のヤクザを描く場面はヤクザの抗争を描き、そのあと、ヤクザが退廃していく姿までを描いている。

この映画の背後にある歴史的な事実っていうのは、調べればたくさん出てくると思います。でも、そういうことを僕ら俳優がそこまで詳しく知る必要もない。この映画は1999年、2005年、2019年と時系列で描かれていくけど、1999年に生きている人間を生きるとき、2019年のことなんて考えてない。

生きる側としては、あくまでも、「自分たちの世界で『今』なにが起きているか」ということだけを考えている。「歴史を追っていく」だけでは映画にはならない。それだったらドキュメントがいい。本物の映像を見せたほうが、圧倒的に説得力がある。

『ヤクザと家族 The Family』ポスター
『ヤクザと家族 The Family』ポスター(サイトを見る

―なるほど。

綾野:これは、映画です。特に俳優である自分は、映画のなかで起きる、すごくミニマムな世界の事実を探していくことが大事だと思います。結局、人間は事実を受け止めて生きていくしかない。僕らの世代だったら、たとえば1999年には2000年問題があったり、ノストラダムスの予言で世の中が騒がしかったりしたし、2020年はコロナの年であり、本当はオリンピックの年になるはずだった。現実にはいろんなことがある。僕らは事実として起こったことを受け止めて生きていくしかない。それと同じように、映画には「映画の中の事実」がある。僕ら俳優は、それを受け止めることしかできないんです。

―では、常田さんは、この映画における変化をどのように受け止めましたか?

常田:俺は、最初の時代があって、その次の時代があって……って流れていくなかで、ビジュアルや色彩感、カメラワークも含めて、「こうやって時代の経過を映すんだな」と思って。若いときの心情も、それから時間を経て歳を取り衰退していくときの心情も、一つひとつのカメラワークに「そういう見せ方をするんだ」と驚かされるというか。

音楽でも、もちろん構成を意識したりはするけど、そういう作為的なもの以前に、自分が作った歌は、「自分の想いを見せているだけ」っていう感じなんです。それは、今回の“FAMILIA”もそうだし、これまでの曲もそうだし。そういう意味で、この『ヤクザと家族 The Family』は、映画作品としてのクリエイティブの精度の高さを感じました。

『ヤクザと家族 The Family』場面写真 ©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
『ヤクザと家族 The Family』場面写真 ©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
millennium parade“FAMILIA”MV

常田:あと、この映画は「家族」を描いているじゃないですか。俺は、この映画は「ヤクザ映画」というよりも「家族映画」だと思ったし、そういう意味で、エンターテイメント作品として一番大きな題材を描いていると思う。要は、「愛」っていう。

この映画を「ヤクザの繁栄と衰退を描いた映画」と伝えるだけでは言葉が足りないというか、本来、この映画はすごく王道な映画だと思いました。『ヤクザと家族』というタイトルではあるけど、普遍的で、人間的なものの根幹にあるものを描いていると思う。

綾野:この映画は、CGや爆破があるわけでもない、スケールの大きな映像表現がある映画ではないけど、感情のスケールが大きい映画。

『ヤクザと家族 The Family』場面写真 ©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会
『ヤクザと家族 The Family』場面写真 ©2021『ヤクザと家族 The Family』製作委員会

―おふたりがおっしゃるように、本作は非常に映画的な時間の流れを有している作品だと思うのですが、綾野さんがおっしゃる「映画としての事実」が、なぜ我々が生きるこの現実の中に必要なのだと思いますか?

綾野:エンターテイメントは、不急ではあっても不要ではないからです。僕らはそこに対して確信を持って作っています。結局、カメラの歴史って、ダゲレオタイプという技術が生まれた頃から数えても180年ほどで、動画の歴史なんてもっと短いわけです。じゃあ、180年前の人がなにをしたかったかと言うと、視覚化されなかったものを視覚化したかったんです。

大希は「愛」と言ってましたが愛って見えないものじゃない? 音楽だって見えないもので。そういう見えないものを閉じ込めたり、残したりするために自分たちは作品を作っている。それは本来、世界を切り取る残酷な行為でもあるけど、少なからず「美しいものを残したい」、そして「それを届けたい」という気持ちから物語は生まれている。その根底にあるものは、180年前の時代だろうが2021年だろうが変わらない。だから、どれだけ大変なことがあったって、みんなが心の密となりながら、映画を作ったり、ライブをしたり、ミュージックビデオを作ったりしているんですよね。

さっき、大希にとってmillennium paradeは聖域だっていう話をしたけど、そういう意味では、自分にとっての聖域と言えるものを持ち得て、その聖域で活動していくことをみんなやっているんだと思う。僕自身、この映画は自分の聖域だと思いを込めて創作しました。僕にとっては映画っていうジャンルそのものが聖域なのです。

左から:綾野剛、常田大希

記事の感想をお聞かせください

知らなかったテーマ、ゲストに対して、新たな発見や感動を得ることはできましたか?

得られなかった 得られた

回答を選択してください

ご協力ありがとうございました。

Page 3
前へ

作品情報

『ヤクザと家族 The Family』
『ヤクザと家族 The Family』

2021年公開1月29日(金)から公開

監督・脚本:藤井道人
音楽:岩代太郎
主題歌:millennium parade“FAMILIA”
出演:
綾野剛
尾野真千子
北村有起哉
市原隼人
磯村勇斗
菅田俊
康すおん
二ノ宮隆太郎
駿河太郎
岩松了
豊原功補
寺島しのぶ
舘ひろし
配給:スターサンズ / KADOKAWA

リリース情報

millennium parade
『THE MILLENNIUM PARADE』(CD)

2021年2月10日(水)発売
価格:3,300円(税込)
BVCL-1136

1. Hyakki Yagyō
2. Fly with me(Netflix Original『攻殻機動隊 SAC_2045』主題歌)
3. Bon Dance
4. Trepanation
5. Deadbody
6. Plankton
7. lost and found(『DIOR and RIMOWA』コレクションムービーテーマ音楽)
8. matsuri no ato
9. 2992(NHKスペシャル『2030 未来への分岐点』テーマ音楽)
10. TOKYO CHAOTIC!!!
11. Philip(『adidas CASUAL Collection 2020 Fall/Winter』)
12. Fireworks and Flying Sparks
13. The Coffin
14. FAMILIA(綾野剛主演映画『ヤクザと家族 The Family』主題歌)

[Blu-ray](完全生産限定盤・初回生産限定盤のみ)
millennium parade Live 2019@新木場Studio Coastから4曲(Fly with me, Slumberland, Plankton, lost and found)&ミュージックビデオを収録。

プロフィール

綾野剛(あやの ごう)

俳優。1982年1月26日生まれ。2003年俳優デビュー。2011年NHK朝の連続テレビ小説『カーネーション』で人気を博す。主演映画『そこのみにて光輝く』が『第38回モントリオール世界映画祭』にて「最優秀監督賞」を受賞、『2015年米国アカデミー賞外国語部門』の日本代表作品にも選出され、『第88回キネマ旬報ベスト・テン』『第69回毎日映画コンクール』など数々の映画賞で「主演男優賞」を受賞している。2021年、主演映画『ヤクザと家族 The Family』が、1月29日に公開。そのほか、4月2日に主演作『ホムンクルス』が日本限定で劇場公開、その後、Netflixで全世界配信の予定。

常田大希(つねた だいき)

バンド「King Gnu」のメンバーとして活動するほか、音楽だけでなく映像やビジュアル、空間演出などトータルなクリエイティブを行うコレクティブであるPERIMETRON及び、海外に向けた活動を志向する音楽プロジェクトmillennium paradeとして活動。2021年2月10日、millennium paradeの1stアルバム『THE MILLENNIUM PARADE』をリリースする。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像 1

    THE SPELLBOUNDがライブで示した、2人の新しいロックバンド像

  2. 中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿 2

    中村佳穂が語る『竜とそばかすの姫』 シェアされ伝播する歌の姿

  3. 『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」 3

    『プロミシング・ヤング・ウーマン』が映し出す、「女性の現実」

  4. ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも 4

    ジム・ジャームッシュ特集が延長上映 『パターソン』マーヴィンTシャツも

  5. A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること 5

    A_oから青い心を持つ全ての人へ 自由に、自分の力で生きること

  6. 地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る 6

    地下から漏れ出すアカデミックかつ凶暴な音 SMTKが4人全員で語る

  7. 林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着 7

    林遣都×小松菜奈『恋する寄生虫』に井浦新、石橋凌が出演 特報2種到着

  8. 『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか 8

    『暗やみの色』で谷川俊太郎、レイ・ハラカミらは何を見せたのか

  9. ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開 9

    ギャスパー・ノエ×モニカ・ベルッチ『アレックス STRAIGHT CUT』10月公開

  10. 『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察 10

    『ジョーカー』はなぜ無視できない作品なのか?賛否の議論を考察