インタビュー

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

GEZANマヒト×Essential Store田上 人を繋ぐ「モノ」の力

テキスト・編集
矢島大地
撮影:水谷太郎

音楽をやってるのも、集めてきたメロディ・言葉が持ってる記憶を残してるっていうことで。そしたら今度は、歌が人の記憶になっていくわけだよね。そういう出会いの連鎖とか繋がりに俺は救われてきたんだよ。(マヒト)

マヒト:人間にしろモノにしろ、効率や利便性だけで成立してるわけじゃないから。揺れてる部分、ある種のカオスを個々が持ってるっていうこと自体が今に対するカウンターになっていくはずで。不都合さとか歪みの部分にこそ「存在」が証明されると思うからね。拓哉くんが提示しているモノに関しても、利便性だけで言ったら低いでしょ(笑)。だけど「なんだこれ!」っていう出会いにこそエネルギーが生まれるのは間違いないんだよね。

田上:それも結局、目に見えてるものを見るだけじゃなく、ちゃんと感じられるかどうかっていう話やと思ってて。僕が20代後半くらいの時かな。龍波動治療院(大田区の気功治療院)の澤井勇人っていう先生に出会ってね。その人が面白くて。当時僕が27歳くらいで、モノ作りのアイデアを求めて遊びまくってるうちに体もメンタルもバランスを崩してしまってね。それもあって通い始めたんだけど、その時に澤井先生に「パワーストーンと呼ばれるものをどう思います?」って訊いたの。

田上拓哉

田上:そしたらさ、「パワーストーンを持ってると力が湧いてくるって言う人がいる。それだけパワーがあるなら、たとえば隣の住人がデカいパワーストーンを持ってたら壁1枚くらい突き抜けて影響してくるはずでしょ。でも自分がそのパワーストーンの存在を知らなかったら、何も感じない。結局は自分が自覚するかどうか、それ次第なんだよ」って言われて。うわーって思ってね。「パワーストーンも、土を掘って岩を割って出てくる。つまり地球から生まれてくるよね。じゃあ今、僕らは地球っていう巨大なパワーストーンの上に立ってるってことだよ。それを感じちゃえばいい」って言われたのが衝撃で。

マヒト:あー、なるほどなあ。面白いっすね。

田上:その時から感覚のリミッターが外れてしまって。で、僕もそういうことを伝えられる仕事がしたいと思って、それがEssential Storeのコンセプトのひとつになってるんですよね。だから僕が意識しているのは、有形物を扱いながら、無形物を扱ってるような。言葉では説明しにくいけど、脳内活性みたいに、人の概念とか回路を増やしたいっていうことなのだと思います。

マヒト:結局、元々あるはずの回路が繋がるかどうかってことですよね。きっと人って、元々持ってる感覚でも言語化したり具現化したりするのは体力を要するから、数値化して「わかりやすい」って言っちゃうんだろうね。で、誰しもが社会から値札を貼ってもらうのを待ってる状態でさ。いくら稼いだとか、いくら数字を持ってるとか、それって元々は個人の存在とは関係ないのに。

GEZAN『狂(KLUE)』を聴く(Apple Musicはこちら

マヒト:「Silent Auction」を見ていても、いろんなモノを感じることによって、自分の生活を思うわけですよ。このツボを家に置いたら空間がだいぶ歪むなあ、とかさ。で、基本的に拓哉くんがセレクトするものは、空間を歪ませるものしかない(笑)。

田上:ははははは。そうですねえ。

マヒト:だからこそ自分のドキュメントの中で、「このモノが俺の空間に入ることで、何がどう変わるんだ?」って考えられるんだよ。で、「ステイホーム」って言われる日々は、自分の部屋の景色が基本的に変わらなかったわけで、情報ばかりが加速する社会と変わらない生活の間に歪みが生まれて、「自分の生きてる実感はどこにあるんだろう」っていう思考になるわけでしょ。だけど生活に歪みを与えてくれるモノと出会うことで、生活もまた実感できるし、それはつまり自分の存在がここにあるって感じることに直結するんだよね。

田上:まさに、それを狙ってこのタイミングで「Silent Auction」をやったのよ(笑)。何が好きで生きてるのか、何のために生きてるのかって考える時間が増えたのがコロナ以降やろうけど、そこに活力を生みたいと思って。やっぱり人って、元気のある状態で何かに取り組むとどんどん楽しくなるし、いいものが作れるし、そうなるともっと活力が湧いてくる。活力っていうのは手段やと思われるけど、本当はそれ自体が目標であり、生きる目的のような気がしててね。単純に、モノを置いて「いい感じやな」って思えるのはいい時間やし、元気が出るでしょ。

マヒト:そういう時間があることで免疫が上がったり活力が生まれたりっていうのは実際にあると思うし。で、それは音楽にも言えることだと思うんですよね。音楽を聴きながら街に出て、満員電車でも音楽で自分を防御するとか。守ったり強気になったり、音楽によって生活を自分の形に歪ませることができる。だから、そこに共通したものを感じるし、拓哉くんのやってることは昨今の状況において必然的だなって思うんですよ。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

田上:緊急事態宣言も再び出てるタイミングだからこそ、多くの人が静かになってしまってる今やらなアカンって思ったんですよ。実際にモノを見て強烈な感情が生まれたなら、それ自体が活力になると思うし。

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プロフィール

マヒトゥ・ザ・ピーポー

2009年、GEZANを大阪にて結成。バンドのボーカル・作詞作曲を担う。自主レーベル「十三月」を主宰し、野外フェス『全感覚祭』も開催。2018年に『Silence Will Speak』をリリースし、2019年6月には、同作のレコーディングのために訪れたアメリカでのツアーを追ったドキュメンタリー映画『Tribe Called Discord:Documentary of GEZAN』が公開された。2019年10月に開催予定だった主宰フェス『全感覚祭』東京編は台風直撃の影響で中止となったが、中止発表から3日というスピードで渋谷での開催に振り替えられた。1月29日に『狂(KLUE)』をリリース。マヒト個人もソロワークを展開し、青葉市子とのユニット・NUUAMM、文筆業など、多方面で活動中。

田上拓哉(たのうえ たくや)

大阪市福島区の「Essential Store」オーナー。本職ではアパレルメーカーを運営しながら、夏と冬の年2回、期間限定で「Essential Store」を開催する。古道具、アンティークを主として、アパレルなども取り扱う。併設ギャラリーで不定期で主催する「Silent Auction」は、入札用紙だけで価格をつけられる仕組みによって、モノの価値を再考する場所として話題を呼んでいる。

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