My Little Lover の再現ライブはなぜ2時間MCナシだったか

20年という時の流れを「ほぼMCなし」で駆け抜けた2時間のライブ

300万枚のセールスを記録したデビューアルバム『evergreen』のリリースが1995年。それから20年越しの返信となったアルバム『re:evergreen』を昨年11月にリリースしたMy Little Loverが、4月15日に東京国際フォーラムで両アルバムの再現ライブを行なった。

akko
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ほぼMCなしで約2時間を駆け抜けたのは、彼らなりの配慮だったのだろうか。先に『re:evergreen』、そして約15分の休憩を挟んで『evergreen』が、それぞれアルバムの曲順通りに演奏されたが、てっきり曲の合間には当時のエピソードなどが語られるのかと思っていた。

確かに再現ライブなのだから、MCを入れずにアルバムの曲順通りに演奏するのは不思議なことではない。しかし、akkoは1曲目の“wintersong が聴こえる”から手拍子を要求したし、CDではバンド演奏だった“送る想い”はほぼピアノと歌だけ。“Delicacy”では曲の最後にメンバー紹介が盛り込まれ、アウトロの形は原曲とは大幅に異なるものとなった。つまり、CDとまったく同じ再現をするつもりは最初からなかったと言える。

akko

“Man & Woman”で感じた、あの頃と今のマイラバを比較して見えてくるもの

『evergreen』の1曲目となる“Magic Time”を瑞々しい声で歌い始めたときは、タイムスリップしたかのような感覚にもさせてくれたが、意外だったのは“Man & Woman”でakkoが何度もシャウトを繰り返していたこと。

『My Little Lover 20th ANNIVERSARY LIVE ~evergreen~』ライブ風景
『My Little Lover 20th ANNIVERSARY LIVE ~evergreen~』ライブ風景

いままでのライブでどのように歌われていたのかは知らないが、彼らのデビューシングルだったこの曲が発売された当時、中学生だった自分にとって、akkoのイメージはちょっぴり大人なお姉さんだった。甘い声で歌われる<いつかは Hey Hey Hey!>というフレーズは妙に色っぽく、歌詞の意味もわからないまま想像を膨らませたものだ。

それから時は経ち、当時のakkoが音大を卒業したてで右も左もわからず、必死に目の前の出来事に向かい合っていたと知ったのは、つい最近の話。しかし、この日のライブを見るにあたって、もしかしたらこの情報は知らないほうがよかったのかもしれない。それはそれで当時とは異なる目線で楽しめたのは事実だが、きっとステージに立っていたakkoも、キーボードとして参加していた小林武史も、MCで余計な情報を入れて、当時のリスナーの記憶を崩したくなかったのだと思う。

akko

あの頃のエバーグリーンな思い出になっているマイラバと、20年経ったいまのマイラバを純粋に比較して楽しんでほしかったのではないだろうか。また、それと同時にリスナーに対しても、20年前の自分と向き合ってほしかったのではないだろうか。

『My Little Lover 20th ANNIVERSARY LIVE ~evergreen~』ライブ風景

アンコールでは「今日は本当にありがとうございました。楽しんでいただけましたでしょうか? では、最後になりますけど1曲だけ」と、この日唯一となったMCを最小限の言葉で伝えたakko。そして演奏されたのは、1996年にリリースされた“YES ~free flower~”だ。この曲には次のような歌詞がある。

寂しさも Yes Yes
ときめきも Yes Yes
ためらいも Yes Yes

あれから20年という月日のなかで、いいこともあれば悪いこともあった。それはステージに立っていたakkoたちも同じだと思う。この日のライブは自然と過去を思い出させるものだったが、最後に何度も繰り返された「Yes」の言葉は、まるで自分の20年を肯定してくれるような響きだった。いまは正直、あの頃のようなエバーグリーンな気持ちがあると自信を持って言うことはできないが、20年前の自分に少しは胸を張ってもいいのかなと思わせてくれる時間だった。

イベント情報
『My Little Lover 20th ANNIVERSARY LIVE ~evergreen~』

2016年4月15日(金)
会場:東京都 国際フォーラムC

リリース情報
My Little Lover
『re:evergreen』(2CD)

2015年11月25日(水)発売
価格:3,456円(税込)
TFCC-86537

[DISC1]
『re:evergreen』
1. wintersong が聴こえる
2. pastel
3. 星空の軌道
4. 今日が雨降りでも
5. バランス
6. 夏からの手紙
7. 舞台芝居
8. 送る想い
9. ターミナル
10. re:evergreen
[DISC2]
『evergreen+』
1. Magic Time
2. Free
3. 白いカイト
4. めぐり逢う世界
5. Hello, Again ~昔からある場所~
6. My Painting
7. 暮れゆく街で
8. Delicacy
9. Man & Woman
10. evergreen

プロフィール
My Little Lover
My Little Lover (まいりとるらばー)

1995年にシングル“Man & Woman/My Painting”でデビュー。わずか3か月の間に“白いカイト”“Hello, Again ~昔からある場所~”と、後にMy Little Loverの代表曲となる3曲を連続リリースし、1stアルバム『evergreen』がトリプルミリオンのセールスを記録。現在はセルフプロデュースによるアコースティックライブ『acoakko』の他、絵本『はなちゃんのわらいのたね』の出版など、アーティストとして、オーガニックなライフスタイルを大切にする一人の女性として、活動の幅を広げている。デビュー20周年プロジェクトとして、メモリアルな2枚組CD『re:evergreen』をリリース。



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