レビュー

本当の気持ちに向き合ってもらうための、「黒い絵」

中山博美
2009/07/24
本当の気持ちに向き合ってもらうための、「黒い絵」

喜びの中に潜む狂気、哀しみの中にみられる遠い過去の幸せ。目に写る表情とは相反する感情をも孕むMASAKOの絵には、特定できる人物や場所は描かれていない。描かれているものは、どこかニュートラルな存在で誰にでもなりうるし、どこへにもすり替わる。絵の中のものたちは、まるで自分の知っている誰か、あるいはどこかのようで観ている者は自然と感情移入をしてしまうことだろう。

「home」という作品は、人間が介在しないにも関わらず人の息づかいを感じる作品である。それは、MASAKO自身が人と深く関係していくことを強く望んでいるからに違いない。絵を媒介に他者との対話を試みる彼女は、時に絵を描くことが苦しいとも言う。

水性ペンキやアクリル、チョークなどを一枚の絵に重ねていく彼女の絵は、黒色がベースになっているものが多い。特定の強いイメージが先行しがちな有彩色と比べると無彩色はとても落ち着いている。彼女の作品を観て、黒は自分の気持ちを投影しやすくその時の感情を浮かびあがらせてくれると感じた。ゆえに、絵から受ける印象は観る者の気分や日によってそれぞれ異なるものとなるだろう。人々が、既成概念に囚われず本当の気持ちに向き合ってもらうために使用するであろう黒。そんな彼女が、黒を置いて他の色を取る時は一体何を思っているのだろうか。

※このコンテンツは旧「ピックアップアーティスト」の掲載情報を移設したものです

プロフィール

MASAKO

今感じたこの感情は 今しか残せない。常に揺れ動く世の中で変わらないものがあると信じたい。表面的な脆さや、内面に隠れている強さ、そんなものに魅力を感じる。日常に溢れる感情を残したい。それによって、また様々な感情が生まれたらと。人の感情の中で生きる作品をつくりたい。

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