レビュー

おなじみの声優たちを再び集め、新録することによって加わった「奇跡」

松江哲明
2012/02/24
おなじみの声優たちを再び集め、新録することによって加わった「奇跡」

「厳し過ぎるだろう、Amazon!」

『スパルタンX』のBD版のレビューを読み、思わず声を上げてしまった。熱心なファンは「ゴールデン洋画劇場の吹き替えが収録されていない」「新録は声優が歳をとっていて微妙」なのが不満らしい。もちろん、そんな声を押しのける圧倒的な絶賛も多いが、僕はゴールデン洋画劇場当時そのものではないからこそ、このBDに感動してしまった。

©2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
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あの名吹き替えが収録されなかった理由は分からない。明らかに間違った描写のある精神病院のシーンがアウトなのか、それとも放送時の音源を見つけることが出来なかったのか。しかし、ジャッキー・チェン=石丸博也、サモ・ハン・キンポー=水島裕、ユン・ピョウ=古谷徹のゴールデントリオが20年以上の歳月を超え、再び集まり、当時の雰囲気を「再現」していることに胸が詰まった。台詞回しは微妙に違うが、確かに僕の記憶する「ジャッキーたち」がここに居た。小学生の頃、高島忠夫の解説で始まり、日本オリジナルとなるキース・モリスンこと木森敏之の音楽にワクワクさせられた(テーマ曲は故、三沢光晴選手の入場曲にもなった)、80年代の日本に住んでいた僕らだけが楽しめる『スパルタンX』が自宅で再会出来たことが何より嬉しい。確かにこれは「完全」な商品ではないかもしれない。しかし当時の声優を集め、新録されることによって「奇跡」が加わった。

©2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
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30代の男性には説明不要の物語だが知らない人の為に説明をすると、スペイン・バルセロナでスパルタン号なる移動式屋台で中華料理店を営むジャッキーとユン・ピョウはシルビアという美女と出会う。天涯孤独の彼女は娼婦を偽りながらスリで生計を立てる悪女。更正させようとアルバイトを提案し、一緒に働くが、シルビアは謎の組織からも追われていた。当然のようにさらわれてしまうが、実は彼女、大富豪の娘だったのだ。探偵サモ・ハンと共に組織を追うトリオは古城へ。ジャッキー映画史上最強の敵とも言われる世界格闘技チャンピオン(予告編より)、ベニー・ユキーデ(今回の吹き替えは『24』のキーファー・サザーランドでお馴染みの小山力也)との戦いは凄まじい。いくら緻密に構成されたものとはいえスピード、リズム、そして本気で当てにいっているアクションが全盛期の動きであることを証明している。そして先にも書いたように製作時は30歳だったジャッキーの声を現在70歳を過ぎた(!)石丸博也氏が吹き替えているのが圧巻。とても還暦を10年前に迎えたとは思えない若々しい声が、当時のジャッキーの魅力を何倍にも増している。

そして大容量の収録が可能なBDならではの嬉しい特典が、日本で公開されたバージョンがそのまま収録されていること。恒例となったNGシーンがそれに当たるのだが、例えVHSレベルの画質とはいえジャッキー作品はこうでなきゃ。スケボーを踏み外し、バイクスタントを何度も繰り返し、アクションに挑む。僕はジャッキーを見る度に「映画とはカットの積み重ねなんだな」という当たり前のことを思い出してしまう。他にはメイキング映像や出演者のインタビューが収録されているのだが、今も現役で俳優を続けているユン・ピョウやサモ・ハンは現在もスター性が感じられるが、引退をしてジム経営をしているベニー・ユキーデは頭皮が完全に後退していて…なぜか寂しい気持ちになった。まさかこんな姿を目にすることになるとは。ちなみに小学生の僕(だけでなくきっと当時の男子のほとんど)が恋をしたシルビアを演じたローラ・フォルネルはカメラの前に立ち、当時を語ったりすることはない。うん、それでいい。懐かしい記憶が刺激されたり、吹き替えによって新しい魅力が加えられたり、いろんな思いをかき回される『スパルタンX』は、やっぱり奇跡の映画なんだと思う。

作品情報

『スパルタンX』(Blu-ray)

2011年12月9日発売
価格:2,980円(税込)
PBW300048

『スパルタンX』

スペイン・バルセロナ。カンフーの達人トーマスとデビットは、ある日、怪しい男たちに追われる謎の美女シルビアを助ける。友人のヘボ探偵・モビーの手を借り、実はシルビアが伯爵の娘で、彼女の遺産を狙う伯爵の弟が一味の黒幕だと知ったトーマスたち。だが度重なる激しい襲撃に、ついにシルビアがさらわれてしまう。3人は彼女を助けるため、最強の戦闘集団と壮絶な肉弾戦を繰り広げる

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