レビュー

地に足の付いた「韓国」が映し出されたガチドキュメンタリー

松江哲明
2012/01/05
地に足の付いた「韓国」が映し出されたガチドキュメンタリー

2011年最もハマった番組は『河本準一のイラっとくる韓国語講座(通称、イラ韓)』だった。笑った回数で言えば、以前より深い時間帯に潜り、くだらなさを増しつつある『ゴッドタン』の方がずっと多いし、『ザ・ノンフィクション』で放送された『ホストの前に人間やろ』『アイドルすかんぴん』は被写体と撮影者の関係性を問う衝撃作だった。だが、毎週必ず録画をチェックせずにいられなかったのは『イラ韓』だ。僕はこの番組を通して韓国がより好きになった。今年は韓流ブームにイラっとする人が多かったみたいだが、そんな人たちもぜひ見て欲しい。K-POPのようなファンタジーではなく、地に足の付いた「韓国」が映し出されたガチドキュメンタリーなのだから。僕は今、韓国がブームなのは韓流ドラマやアイドルは入り口にすぎなくて、一品しか頼んでないのにサービスのおかずの量がハンパない食堂だったり、女子高生が直床でゆで玉子を食べちゃうサウナだったり、過剰なリアクションが楽しい映画館だったり、どこか郷愁を刺激する町並みといったガイドブックに載らない、ドラマでロケ撮影が行われない「フツーの韓国」が気に入ってしまうんだと思う。この番組には、それが映っている。

『河本準一のイラっとくる韓国語講座』場面写真
©テレビ東京

視聴率0%を記録したことでも話題になった『イラ韓』だが、その魅力は撮れ高の低さにあると思う。僕がこの原稿を書く前日に見た回は特に酷かった。先週の予告編では「済州島でクレー射撃セヨ」と告知しておきながら映し出されるのは、射撃場に向かう車内で延々とモノマネをする河本準一とキャメラを回しながらゲラゲラ笑うディレクターの姿。広大な風景を前に松山千春ならぬ河本千春となって“青空と大地の中で”を歌い、ユタ州を思い出しては「ケントだよー」と眼鏡を近づけたり、遠くにしたりして河本・デリカットに扮する。映画『アジョシ』を見た河本氏は「コウモビンもウォンビンとゴルフがしたい」と宣言し、さらに気分を盛り上げるために“会いたい by 準・ボムス”を熱唱。その後もディレクター曰く「40点のモノマネ」を繰り返し、ここまでほぼワンカットで10分超え(当然、風景は車内のみ)。CMも挟まずに緊張感のない画をタレ流し。最近の、ロケVTRだけでなくスタジオにも芸人を配し、隙間なく笑いを込めるバラエティー作りに逆行するかのような緩さ。これに慣れないと『イラ韓』にはハマれない。正直、一見さんにお断りな作りだし、ハードルが高い。しかし、本作を見、思い出したのは『水曜どうでしょう』だった。今ではキー局以外のチャンネルでは常に再放送されている人気番組だが、あの番組も独自のルールをあえて説明しないことで視聴者を巻き込み、北海道のみならず日本中を夢中にさせてしまった。不親切であるからこそ僕らは番組と共犯者になれたのだ。

この番組は韓国大好き芸人の河本準一が韓国を歩きながらイラっとするフレーズを現地の人に向かって話し、そのリアクションを楽しむというものだが、この番組は視聴者をもイラっとさせようとしているのではないか。しかし僕は見続けるうちに「もっともっと」と欲してしまう。森本智子アナ、ユン・スア先生が冒頭に登場し、イラっとするOPを披露してくれるはずなのに回によっては登場したり、しなかったりと実にいい加減。番組のルールさえ無視するこのテキトーさ。

『河本準一のイラっとくる韓国語講座』場面写真
©テレビ東京

番組スタートの頃、韓国人占い師は「この番組はもって2、3ヶ月」と断言したが、まさかの一周年。ついこないだの放送では、笑っちゃうくらいに制作費がないから番組終了…なんて言っていたのに、急遽大韓航空のタイアップが決まったので、なんとか延命。この手を差し伸べたくなる感じ、よく分かる。僕の周囲でも視聴率は低いが、まだまだ続いて欲しい。僕にとっては韓国映画でも、韓流ドラマでも描かれない、しかし一度でも韓国を旅した人なら分かる「あー、韓国ってこんな感じ」が映っている大切な番組だから。この番組の韓国の描写力は名著『ディープ・コリア』(著:根本敬)以来だと思う。マジで。

番組情報

テレビ東京

©テレビ東京

『河本準一のイラっとくる韓国語講座』

次長課長・河本準一が韓国を一人旅し、韓国の方々と勝手に交流を深め、勝手に韓国文化を学び、勝手に韓国語をマスターしていくほったらかし韓国語独学バラエティー。毎週木曜深夜3時30分 テレビ東京にて放送中。

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