ここ1年ほど、ももいろクローバーと神聖かまってちゃん、BiSと怒髪天、東京女子流とPsysalia Psysalis Psyche、でんぱ組inc.とBO NINGENなど、アイドルグループとロックバンドのクロスオーバーな対バンにおもしろみを感じていた。そこに、オールナイトイベント『天狗 A NIGHT!!』開催の知らせである。まず、文芸誌『界遊』の発行、とだけ冠をつけるにはあまりに幅広い活動をしているKAI-YOUと有志数名からなる断men'Sが主催、男性用アダルトグッズ販売の雄・TENGAがサポートするという意外性におおいに興味がわいた。しかも出演アーティスト陣は、ミュージシャンからセクシー女優、お笑い芸人、インターネット上を主戦場とするクリエイターまで、ごった煮なメンツ。来場者にはTENGA EGGをプレゼントと、男性諸氏にはうれしいサービスも。また、開催前にはDOMMUNEで前前夜祭を行ったり、村上隆がキュレーターを務める展覧会『A Nightmare Is A Dream Come True:Anime Expressionist Painting』とコラボし、そのオープニングレセプションを2.5Dを通して配信したりと、ソーシャルメディアを駆使した事前告知も印象的だった。というわけで、開催前から盛りだくさんな話題を引っさげた『天狗 A NIGHT!!』、当日の模様をお伝えする。

撮影:市村岬
会場のWOMBに入ると、外国人やカップル、同性グループが目についたが、男性のおひとりさまも多い。フロアはメインのTENG FLOOR、ソファーやカウンターがあるEXCITING FLOOR、エンターテインメントパーティー『MOtOLOiD』が繰り広げるBREAK FLOORの3つ。まずTENG FLOORに向かうと、soucuts a.k.a UCHIDAがエレクトロニカをベースに、相対性理論や東京事変をプレイしていた。終盤にかけてバキバキのテクノへと変化し、とりわけ歓声が上がっていたのがtengal6“Photograph”。そこに加わるJNTHEDのVJも萌え炸裂ですごかった。お次は、コスプレアニソンアーティストのサオリリス。「もっと飛べるよ!よっしゃいくぞー!」とコール&レスポンス、パラパラ、ギンギンなつまみさばきのトリプルモーションでお客さんを魅了。オーディエンスもペンライトぶるんぶるん、手を叩いて飛び飛び!これが生のオタ芸かあ、と感動していると、隣にいた男子が「ここは渋谷でもWOMBでもない。まぎれもなくアキバだ。夢と楽しさを売っている」と友達に話していて印象的だった。

サオリリス(撮影:市村岬)
EXCITNG FLOORに行ってみると、ちょうどセクシー女優の松すみれがプレイ中。洋ものやK-POPをかけながら、「テキーラ飲もう、セックスオンザビーチ!」とご機嫌なムード。フロアでは、ガチムチな外国人がキレキレダンスで隣の日本人男子を挑発し始め、どうするかと思って見ていたら、彼もコンテンポラリーダンスのような複雑なリズムで応酬するというほほえましい場面も。BREAK FLOORでは、くりかまきがきゃりーぱみゅぱみゅやPerfume、“残酷な天使のテーゼ”を。EXCITING FLOORに戻って元セクシー女優の紅音ほたるがかけるR&BとHIP HOP、Tenga Boysのアシッドテクノを聴いたあとは、再びTENG FLOORへ。

松すみれ、紅音ほたる(撮影:市村岬)
ちょうどMoonbugがプレイ中で、KARAや少女時代をダブステップ調に、サカナクションやくるりをテクノ調にミックス。公式カメラマンもノリながら撮影していて、なんとも楽しい雰囲気だ。スペイシーなダンスロックで魅せるRAM RIDERは、『モテキ』のVJをバックにTwitterをテーマにした曲を披露したり、“No Continue”のサビをコール&レスポンスしたりしていた。場内も自然と盛り上げコールが起こる。そして直前に発表されたシークレットゲストの大沢伸一! とにかく音圧がすごく、重心の低いテクノで一気に硬派な空間にするのはさすが。そんななかEXICITING FLOORではやついいちろうや和がJ-POPで盛り上げていたし、WOMB内、同時多発カオス!

RAM RIDER(撮影:市村岬)
大トリはRE:NDZ a.k.a kz。バキバキでアゲアゲなムードのなか、くるり“WORLD'S END SUPERNOVA”やダフトパンクなどでフロアはヒートアップ。そして締めはもちろん、自身の楽曲であり、Google ChromeのCM曲としても知られている“Tell Your World”。フロアは大合唱に包まれ、オーディエンスからアンコールを求める声が起こり、大盛り上がりのまま終演を迎えた。

RE:NDZ a.k.a kz(撮影:市村岬)
ライブももちろんよかったが、声をかけてきた男性との会話も心に残った。かつてはサンフランシスコでミュージシャンとして活動し、現在はアンテナの販売営業をしているAさんは、「俺、パーティ大好きだから」と満面の笑みを浮かべていた。Bさんはワーキングホリデーで行ったイギリスの老舗バコでの思い出や、秋葉原MOGRAでイベントをする予定のことなどを。「あそこにいる人、さっき俺に話しかけてくれたんだけど、このイベントがおもしろそうだからって5年ぶりにハコに来たんだって」と彼が指さすほうを見てみると、スーツ姿の男性が髪を振り乱しながら盛り上がっていた。その場限りの出会いというのは儚く寂しいものだけれど、それもまた縁、尊く不思議なものだとも思った。

撮影:市村岬
確かなセレクト眼が光るこのミクスチャーイベントで、やはりひとは「コール&レスポンス」によるつながりを求めているのだと実感した。こうしたディープカルチャーはともするとネガティブな印象を持たれがちだが、「場」に集うひとの肉体性に、サブカルチャーもオタク文化も関係ないのだ。そこにははちきれんばかりのエネルギーが満ち満ちていたことを、ここに記しておきたい。
- イベント情報
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                                                                  - 『天狗 A NIGHT!!』
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      2012年5月25日(金)OPEN 23:00 
 会場:東京都 渋谷 WOMB
 出演者:
 [TENG FLOOR]
 大沢伸一
 RAM RIDER
 RE:NDZ a.k.a. kz(livetune)
 Moonbug
 soucuts a.k.a UCHIDA
 サオリリス
 and more
 [EXITING FLOOR]
 やついいちろう
 松すみれ
 soucuts a.k.a UCHIDA
 DJ和
 ヒゲドライバー
 TengaBoys
 [BREAK FLOOR 『MOtOLOiD』RARE ver.]
 DJ ヒゲドライバー
 DJ ゆよゆっぺ
 DJ 無力P
 DJ emon
 DJ キャプテンミライ
 DJ ワンダフル☆オポチュニティ!
 くりかまき
 VJ:
 丸橋圭太郎
 kouta tajima
 JNTHED
 セーラーチェンソー
 KASICO
 and more
 料金:
 前売 3,500円
 当日 男性4,000円 女性3,500円
 
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