レビュー

激動の2015年を早くも振り返る 志磨遼平が全曲を映像で解説

テキスト
金子厚武
激動の2015年を早くも振り返る 志磨遼平が全曲を映像で解説

様々なミュージシャンと作り上げた12曲。全曲分の映像を公開

ドレスコーズのニューアルバムは、その名も『オーディション』。何やら意味ありげなタイトルだが、これは2015年の日本で起きた様々な出来事から導き出された「選ぶ」というキーワード、そして志磨遼平のソロプロジェクトとなって以降、ライブごとにミュージシャンを「選ぶ」形での活動を展開する現在のドレスコーズのあり方が、そのまま反映されたタイトルなのである。

アルバムでは曲ごとに様々なミュージシャンが参加し、全12曲が異なる個性を放っている。全曲分用意されたトレーラー映像を1つずつ見ていきながら、各曲の参加ミュージシャンを紹介すると共に、志磨本人のコメントを交えて、この特異な作品の全貌を伝えていきたい。

「読む」と「聴く」で、意味が変わる歌詞とは

オープニングを飾る“嵐の季節(はじめに)”は、0.8秒と衝撃。told、自身のソロプロジェクトarko lemmingなどでマルチに活躍するベースの有島コレスケと、凛として時雨のドラマーであるピエール中野という本作の核となるリズム隊、そしてキーボードに長谷川智樹を迎えた編成。ゆったりとしたイントロから、ジワジワと盛り上がっていく展開が1曲目に相応しい。


歌詞の書き方が自分の中で変わってきていて、これは聴いたときと読んだときで歌詞の意味が変わるような書き方をしたかったんです。たとえば、<たえられない 足りはしない>と書いてある歌詞が、聴いてみると「泣いたりはしない」に聴こえたり。そういう小さな実験を行っているんです。

続く“jiji”は、以前から「顔が似てる」と言われていた、ねごとの沙田瑞紀、kowloonやstim、toeや木村カエラのサポートでも知られるキーボードの中村圭作を迎えたアグレッシブなナンバー。中盤のシューゲイザー的な展開が聴きどころだ。


“jiji”は「時事ネタ」からとっています。<縦にならぶ はじまりだけを ときめくまで ながめてゆく>という歌詞は、フックのある見出しをダーッと並べて、読者の興味を惹いて、閲覧数を競い合ってるようなニュースサイトの様子を表しています。あと最近の人は1曲を丸々聴かないから、1分以内に曲の展開を全部詰め込むようなことも揶揄してますね。

『オーディション』では曲によって志磨以外が編曲を手がけてもいる。“スローガン”には會田茂一が参加し、ギターだけではなく、プログラミングを用いて楽曲の個性を演出している。


ちょうど安保法案の強行採決の日にこの曲ができて、「選ぶこと、選ばないこと」というアルバムのテーマが見えた感じです。

“愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)”にはライブでも共演を果たしているOKAMOTO'Sのオカモトコウキが迎えられ、ガレージパンクな曲調との相性はぴったり。伸びやかなギターソロとピエール中野のツーバスとの組み合わせは、アルバム前半のハイライトだ。


CDの発売日が全世界統一で金曜日に変わると知って、まだ水曜日のうちに作っておこうと(笑)。これも「選ぶこと、選ばないこと」を歌っていて、たとえばamazonには「この商品を買った人はこれもオススメ」と出るけど、恋に置き換えると「あの子が好きならこういう子も好きかも」とは絶対ならないですよね。気づけば落ちているのが恋ならば、それはつまり「選ばない」ということなんです。

小沢健二のシークレットライブに失恋話。2015年春夏を象徴するトピックを選出

アルバムの中盤はちょっとトーンを落として、フォーキーな“メロウゴールド”から。おとぎ話・牛尾健太による枯れた味わいのギターが曲の哀愁を引き立てる。


自分に全く浮いた話がないので、人の失恋話を聞いて、それを肴に曲を書きました(笑)。ため息つきながら、煙草吸って、酒を煽っている知人を見て「男の色気ってこれか」と。エピソード自体は僕の妄想なんですけどね。悲しみもいいもんだなって。

続く“We Hate the Sun”はブルージーな曲調。こちらもライブで共演しているKING BROTHERS、マーヤが迎えられている。


夜遊び推奨委員会のテーマソングです。毛皮のマリーズの前に組んでいたバンドで、一度同じタイトルで曲を書いたことがあるんですけど、ボーカルだった元ちぇるしぃの馬場さんに「志磨ちゃん、Hateはあかん、Loveやで」と言われて変えたんです。でも最近「Hate」ってよく耳にするので、別の曲として復活させました。ちぇるしぃの影響下にあるバンドと言えばKING BROTHERSなので、このギターはマーヤさんでしょうと。

“もあ”には再び會田茂一が参加し、中村圭作のオルガンが軽快な曲調を盛り上げる。


<“愛し愛され生きる”ってね 大した意味もわからず、歌ってたわ!>というのは、小沢健二さんの“愛し愛され生きるのさ”からきていますね。今年の初めに開催された『岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ』の最終日に小沢さんがシークレットライブをやったのを運良く観られたんです。このアルバムは今年の春夏のトピックを全部盛り込んでますね(笑)。

“嵐の季節(はじめに)”と同じ編成による“しんせい”もアッパーなガレージロック。ここにきて再びアルバムは熱を帯びる。


僕の吸っている煙草の銘柄が変わると知って、煙草の歌を書こうと思ったんですね。その銘柄をそのまま使うのもな……ってときに、昔「SHINSEI」という国産の煙草があったことを思い出して。サビの<とけてく光 ゆれる情熱ではじまれば きっと 終わりは誓い>は、火を点けて、煙が出て、短くなっていくという煙草の描写。新生、神聖、真正……と思いきや、実はスモーカーソングなのです。(志磨)

「嵐の季節」だった2015年を振り返る

志磨がドラムも担当したインタールード的なタイトル曲“オーディション”を挟んで、終盤はアルバムの様相が一変。


このアルバムを作るために、今までで一番曲を用意したんです。これはもともとボツにしていたのですが、この後に来る2曲でガラッと雰囲気が変わるので、インタールードとして使えるなと。

“みなさん、さようなら”と“贅沢とユーモア”にはハイポジや栗コーダーカルテットなどで活躍した近藤研二が編曲に参加し、豪勢なホーンセクションで楽曲を盛り上げる。シンプルなバンドサウンドからサビでジャジーな展開に変化する“みなさん、さようなら”、そしてスタンダードなビッグバンドジャズ風で、ソロ回しも楽しい“贅沢とユーモア”からは、ロックンロールだけではない、志磨のポップス愛好家としての側面もよく表れている。


“みなさん、さようなら”は僕のモストフェイバリットです。何のジャンルかまったくわからないところが、自分が書くべき曲という感じがして好きですね。これまでは普遍的な音楽を意識してましたが、今回は「今」を表したかったので、ネットスラングみたいな一番新しい日本語を意識して使いました。タイトルに関しては、<さよなら 今日の日 おわかれの前に>というフレーズの上に近藤(研二)さんがチャイムを一拍ずらして入れたのがめちゃめちゃよかったので、そこから学校の下校を意識してつけました。(志磨)


“贅沢とユーモア”も近藤さんのアレンジで、<時代の踊り場で さあ おどるわ チャールストン>という歌詞から、ビッグバンドジャズっぽいアレンジにしてくれました。僕がこの曲のPVで踊りたいと言って、OK GOの“I Won't Let You Down”などを手がける振付師のair:manに、チャールストンを元に振付けを考えてもらったり。誰かともの作りをする楽しさがよく表れている曲ですね。(志磨)

ラストはボーカルとピアノのみのバラード“おわりに”。アウトロで聴こえてくるセミの鳴き声や電車などのフィールドレコーディングの音は、本作が志磨がとらえた春から夏にかけてのドキュメントであることを、確かに伝えている。


最近Twitterを始めたので、誰もが飽き始めた頃に一人でめっちゃ盛り上がって、今さら「なう」を連呼している曲です(笑)。エゴサーチの鬼なので、「志磨、始めたら意外とツイ廃」とか、僕ちゃんと見てますからね(笑)。(志磨)

このアルバムを聴きながら、「嵐の季節」だった2015年を振り返り、あなたにとっての「選ぶこと」と「選ばないこと」について、思いを巡らせてみてほしい。

リリース情報

『オーディション』
ドレスコーズ
『オーディション』初回限定盤(CD+DVD)

2015年10月21日(水)発売
価格:3,780円(税込)
KICS-93310

[CD]
1. 嵐の季節(はじめに)
2. jiji
3. スローガン
4. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5. メロウゴールド
6. We Hate The Sun
7. もあ
8. しんせい
9. オーディション
10. みなさん、さようなら
11. 贅沢とユーモア
12. おわりに
[DVD]
・PVほか収録予定

ドレスコーズ『オーディション』初回限定盤ジャケット
ドレスコーズ
『オーディション』通常盤(CD)

2015年10月21日(水)発売
価格:3,240円(税込)
KICS-3310

1. 嵐の季節(はじめに)
2. jiji
3. スローガン
4. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5. メロウゴールド
6. We Hate The Sun
7. もあ
8. しんせい
9. オーディション
10. みなさん、さようなら
11. 贅沢とユーモア
12. おわりに

プロフィール

ドレスコーズ
ドレスコーズ
『オーディション』初回限定盤(CD+DVD)

毛皮のマリーズのボーカルとして2011年まで活動、翌2012年1月1日にドレスコーズ結成。同年7月にシングル「Trash」(映画「苦役列車」主題歌)でデビュー。12月に1stアルバム「the dresscodes」、2013年8月には2ndシングル「トートロジー」(フジテレビ系アニメ「トリコ」エンディング主題歌)、同年11月に2ndアルバム「バンド・デシネ」を発表。2014年4月、キングレコード(EVIL LINE RECORDS)へ移籍。日比谷野音でのワンマン公演を成功させたのち、9月にリリースされた1st E.P.「Hippies E.P.」をもってバンド編成での活動終了を発表。以後、志磨遼平のソロプロジェクトとなる。12月10日、現体制になって初のアルバム『1』をリリース。2015年4月1日、ドレスコーズ初のLIVE DVD「“Don't Trust Ryohei Shima” TOUR 〈完全版〉」をリリース。2015年10月21日、4thアルバム『オーディション』をリリースする。

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