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アンドレアス・ジョンセン監督インタビュー

「金銭より情熱」 グラフィティシーンを追った傑作ドキュメンタリー

MOVIE

アンドレアス・ジョンセン監督インタビュー

アンドレアス・ジョンセン監督インタビューをdel.icio.usに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加 アンドレアス・ジョンセン監督インタビューをlivedoorクリップに追加 アンドレアス・ジョンセン監督インタビューをlivedoorクリップに追加 (2008/07/22)

街の至るところで見かける、壁に描かれた色とりどりのイラストや文字。スプレーやマーカーなどで描かれたそれは、「グラフィティ」と呼ばれる。誕生から30年以上の歴史を持つグラフィティという表現は、今日ではさまざまな進化を遂げ、衝撃的な作品がいくつも生み出されている。このインタビューでは、現在活躍するグラフィティアーティストたちの活動を追い、シーンの魅力にせまったドキュメンタリー『インサイド/アウトサイド』の監督アンドレアス・ジョンセン氏にお話をうかがった。グラフィティアーティストたちの情熱に突き動かされ、可能性を信じてきた監督の言葉は、これまでのアート観に強烈な疑義を投げつける力を持っていた。

(インタビュー&テキスト:小林宏彰 撮影:柏木ゆか)

PROFILE

アンドレアス・ジョンセン
1974年、コペンハーゲン生まれ。写真家の父の影響で、幼少期よりカメラに親しむ。1990年に初めてビデオカメラを手に入れ、映像作品を撮り始める。世界中のアンダーグラウンド・アーティストを取材したテレビシリーズ、『ストックタウン』をきっかけにドキュメンタリー・フィルムメイカーとしてのキャリアを積む。新作に、バイレファンキー・シーンのスター、Mr.Catraに密着したドキュメンタリー『Mr.Catra』や、ジャマイカのジェンダーロールとダンスホール・カルチャーについての作品『Man Ooman』などがある。現在はニカラグアの人権問題に関する作品を制作中。

グラフィティアーティストは、いつもベストを尽くします

─映画に登場するアーティストたちの作品は、どれも感動的なグラフィティばかりで、楽しんで見させていただきました。グラフィティが生まれて30年以上経ちますが、なぜ今、グラフィティについての映画を撮られたんでしょうか?

『インサイド/アウトサイド』より

A:グラフィティは、おっしゃるように60,70年代にニューヨークで生まれた文化です。現在は、アブストラクトなものやインスタレーションなども登場するなど、非常に変化を遂げて、なにをやってもかまわないようになりました。ですが、そうした文化を記録したものは82年の『スタイル・ウォーズ』以来なかったんです。私はこの映画を子どもの頃に見ましたが、そこには非常にピュアなグラフィティが描かれています。そこでこの作品では、発展を遂げたのちのグラフィティシーンについて描こうと思ったんです。

─映画の中で、「グラフィティがアートである必要はあるのか?」と発言しているアーティストがいました。このように、グラフィティについてはさまざまな立場が存在します。監督自身は映画を撮る前と後で、グラフィティについての考えに変化はありましたか?

A:変化はないです。私自身、87年からニューヨークやヨーロッパでストリートアート、グラフィティを追っていますが、それらをアートととらえるかどうかは、人によりけりでいいと思います。作品がコンセプチュアルなものもあれば、名前を描いただけのものもある。しかし、名前だけのものがアートではないかというとそうではないし、いずれにせよクリエイティブな作業だと思います。

─監督が、いまおっしゃったように20年近くシーンを追い続けているわけですが、グラフィティの持つ変わらぬ魅力とはなんでしょうか?

アンドレアス・ジョンセンインタビュー

A:一言でいえば、アーティストたちが衝動にかられて心から表現をしているところです。彼らの多くは金銭的な見返りを期待しないどころか、身の危険をおかして夜中に電車の車庫のまわりをうろうろしたりして制作をし、人々にアートを提供している姿勢を、私は美しいと感じます。もうひとつ、この社会に住む者として、彼らから学ぶことが多いことです。今の社会は、誰かが何かをしてもらおうとすると、すぐにじゃあいくら出すの? となるわけですよね。彼らの表現にはそれがない。表現はつねに評価の対象になるから、彼らは100パーセントベストを尽くします。もし雇われて仕事をするならば、もしかすると8割の力で仕事をするかもしれませんが、ストリートではそれがないんです。

─たしかに、見ているうちに自分でもなにかしたい! という思いに突き動かされます。ただ、その表現したい衝動に加えてもうひとつ、「社会への反抗」という要素もあるかなと思いましたが?

A:そうですね。小さく名前をかくだけでも、そもそも違法行為なので、大多数の人々とはちがうんだぞ、という反抗の行為になっていますね。それは都市環境における広告との競争ともいえると思います。

グラフィティシーンの多様性を描きました

─映画には魅力的なアーティストたち、たとえば「クリンク」というアブストラクトな魅力がある作品をつくるKRや、合気道的手法と自らが呼ぶ方法を駆使するゼウス、などが登場します。彼らとは、どのようなきっかけで知り合ったのでしょうか?

『インサイド/アウトサイド』より

A:実際に撮影を始める前に、集中的なリサーチをしました。当初は12名を取材していましたが、編集の段階で人数を減らすことに決めました。作品の目的は、ストリートアートやグラフィティシーンの多様性を描くことです。KRとゼウスは、もともと彼らの作品や存在を知っていました。96年に、サンフランシスコに住んでいるトゥイストというアーティストと知り合いだったのですが、当時彼とKRはパートナーだったため、作品は知っていました。彼の「クリンク」スタイルの発展もフォローしていたんです。ゼウスの作品については、私自身がパリに行った際や、知人を通じて知っていました。

とはいえ、個人的には彼らを知らないし、インタビューや映画の経験はなかったから、出演の説得は非常に困難でした。私は、自分の過去の作品を見せることで説得しました。完成した作品を見せたら、非常に喜んでくれましたよ。

─ゼウスが、「レーザーグラフィティ」という手法で制作しているとき、通りすがりの老夫婦が彼に自然な調子で声をかける場面がありますね。日本では、ああいった形でアーティストと一般の方が会話することは起こりにくいので、非常に新鮮に感じ、うらやましく思いました。

A:非常に美しいシーンですよね。老夫婦はあの建物の住民だったのですが、何してるの?という感じで気軽に声をかけてきたんです。彼らはとてもオープンに作品について話し合っていましたね。

─アーティストが自分の立場や作品について、論理的に説明できているところが面白かったです。

A:アーティストたちは一定以上のステージにいる人たちですし、ストリートアートというゲームの中に非常に長く身を置いてきた人たちなので、自分のやっていることに関しては非常によくわかっていますね。

2/2ページ:グラフィティの未来とは!?

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