人懐っこくもオルタナティヴ YOMOYAインタビュー

アメリカのインディ・ロックを背景に、フォークからハードコアまでを取り込んだ独自のバンド・アンサンブル、ジャパニーズ・ポップスの伝統を受け継いだ良質なうた、さらには電飾を施したステージでのパフォーマンスでも話題の四人組、YOMOYA。昨年発表した初の単独音源『YOURS OURS』に続く新作『Yoi Toy』では、クラムボンやオウガ・ユー・アスホールらも使用する山梨・小淵沢にあるスタジオ「星と虹」でのレコーディングを敢行。アンサンブルとメロディの素晴らしさはそのままに、環境を生かした、楽器の生々しくオーガニックな響きが印象的な、またしてもの傑作が誕生した。インタビューに答えてくれたのはフロントマンの山本達樹(Vo/G)。どこかふわっとしていながらも、強い芯を感じさせるその人柄は、YOMOYAの音楽そのものだった。

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メロディ自体は自分のものを歌ってると思うんです。

―バンドって、メンバーが共通のバックグラウンドを持っていて、それがそのままバンドの音楽性に反映されるタイプと、メンバーそれぞれが独自のバックグラウンドを持っていて、それが合わさることで独自の音楽性を形成するタイプと、二つに分かれると思うんですが、YOMOYAはそのどちらと言えますか?

山本:どっちかって言うと後者ですけど…バックグラウンドが被っているところを底上げしたという感じですかね。

―USインディ好きっていうのは被っている部分?

山本:それは僕とベース(岡崎英太)だけで…でもそれが出ちゃってますかね(笑)。

―ですね(笑)。じゃあ長倉(亮介:Key)さんと東(孝治:Dr)さんは?

YOMOYAインタビュー

山本:長倉は元々ポップ畑で、一番好きなのは細野(晴臣)さん関連、はっぴいえんどとか。あとソウル…カーティス・メイフィールドとか大好きだし。ドラムの東くんは途中加入なんですけど、彼はJ-POPも好きですし、ハードコアのレーベルを手伝ったりもしてます。oto RECORDSっていうのがありまして、ハードコアなバンドもやったり、CDの流通・販売とかもしてて、DIYな感じです。

―山本さんはUSインディがルーツですか?

山本:世代的にはT-BOLANから入ったりして(笑)。B’z、エアロスミス…みたいに段々ハードな方に行って、メタリカまで行きました(笑)。USインディはその後ですね。

―ソング・ライティングにおける影響源は?

山本:ジョン・ボン・ジョヴィとか・・・

―マジっすか!?

山本:いや、マジっす、マジっす。今の好みで言うと、松任谷由実さん。昔のやつもすごく好きで、あの人のメロディの追い方とかすげえなあと思って。USインディだとペイヴメントとか、あとLOWが大好きで、本当に素晴らしいと思います。でもお手本にしてるとかじゃなくて、すごいなと思って、歌心が感化されるって感じですね。メロディ自体は自分のものを歌ってると思うんです。どうしても和のメロディになっちゃうんですよ、僕が歌うと。

―日本のポップス、ニューミュージックを聴き込んでたわけではない?

山本:聴き込んでたわけではないですけど・・・70年代ってニューミュージックって言うんですかね?

―70年代から80年代ですね。

山本:ああゆうフォーキーなのは結構好きなんで。

―90年代だったらサニーデイ・サービスやフィシュマンズ、あとくるりとかクラムボンが日本のポップスをその時代のやり方で解釈して、更新して行ったように、YOMOYAや、今だったらトクマル(シューゴ)くんとかも、そうゆう歴史を受け継いでるように思うんですね。そうゆう音楽の歴史を受け継いでる意識ってありますか?

山本:それはあると思います。でも音楽やる人はみんなそうなんじゃないですか?

―結構分かれると思いますよ。今手元にある音楽だけを模倣する人も多いから。ボン・ジョヴィ好きだったら、そのままボン・ジョヴィみたいのやったりとか(笑)。

YOMOYAインタビュー

山本:(笑)そのまんまの人もいっぱいいますもんね。僕ら基本天邪鬼ですから、全員。自分たちのバックグラウンドをそのまま出すのは気が引けるんですよ。最初に言った、被ってる部分っていうのがそうで、メロディだったり、ただでは終わっていないポップスみたいな。自分たちが信じてるものに影響を受けながらも、そのまま出す気持ちはないですね。

聴く側の気持ちを考えることもあるんですけど、
考えるだけであまり反映はしていないというか。

―昨年に『YOURS OURS』を発表して、音楽に対する考え方やモチベーションに変化はありましたか?

山本:元々人に見られるってことはあんまり意識してなくて、まあ好き放題やるじゃないですか。それを評価してもらって、音源を出して、今ブログとかで反応が見れたりして、「ああ、聴いてる側はこうゆうことを思うんだな」っていうのがちょっと見えて。僕の歌詞の引用をブログに貼ってくれる人が結構いたりとか。なので、ちょっと聴く側の気持ちを考えることもあるんですけど、考えるだけであまり反映はしていないというか。

―大衆性って考えたりしますか?作るからには多くの人に届けたい、というような。

YOMOYAインタビュー

山本:届けばいいとは思いますけど、基本届かないと思ってます。歌詞に関してもわかんねえよって人にはわかんないし、メロディにしても、もっとシンプルに歌えないのかって思う人もいると思うんで。ただそれが僕にできることなので、届かない人にはそれでいいです。でも僕らがやってることを受け入れる皿はあると思うんですよ。今のところメジャーとインディの間ぐらいにいようとしてる感じはあって、どっちにも行きたくないわけじゃなくて、そこがいいんです。

―新しい作品を作るにあたって、より伝わりやすいものを作ろうと考えたりとかは?

山本:それは多少ありますね。狙ってるわけではないんですけど、出てきちゃう。年も年なので(笑)。今回リード曲の“フィルムとシャッター”っていうのがありまして、あれは今までのYOMOYAの歌詞とは違って、情景と心の動きを並列させながら歌ってる感じなんです。聴いてる側が歌詞を見て風景が浮かびやすいというか、難解過ぎない、ただその人が聴く上での含みを持たせてる感じでは書いてます。

―YOMOYAの歌詞は、歌詞そのものに意味やメッセージがあるというより、色んなイメージの連鎖から全体像が浮かび上がってくるような歌詞だと思うんですよね。

山本:全体を通してそうゆう風に取ってもらえるのは全然オッケーです。断片だけ、例えば一つの歌詞だけ耳について、それ一つで想像してもらっても全然良くて。一回書いて出したら、後はもう投げっぱなしというか、そっちで膨らませてもらって、それがオッケーならオッケー、よくわからなくてもそれはそれでオッケーていう、そういう聴き方をしてもらいたいですね。

―好きな作家とかいますか?

山本:一番好きなのはジョン・アーヴィング。

YOMOYAインタビュー

―日本の作家はどうですか?

山本:作家じゃなくて、主に訳者なんですけど、柴田元幸ってわかりますか?基本的に海外の作品を翻訳する人で、今東大の教授なんですけど。村上春樹と一緒に仕事をしたりとか、絵本の翻訳をしたり、ポール・オースターとか有名な海外作家の訳をしてて、その人の日本語感覚がすごく好きです。なんかカーブな返答になってますけど(笑)。

海外の子供用の玩具店に行くのが結構好きで、
すごくエバーグリーンなんですよ。

―アルバム・タイトルの『Yoi Toy』はどんなイメージですか?

山本:前のが『YOURS OURS』で、対になってて、意味もわかりやすい。今回は意味をつけるかつけないかで迷って、どちらかというとつけない方になったんです。パソコン打ってて、英語でこれ(Yoi)が出てきて、「この字面いいな」と思って、そっから韻を踏んで。意味は「良いおもちゃ」なんですけど。

―でも「Yoi」は「宵」だったりとか、色んな解釈ができますよね。

山本:それは後から言われて気づきました(笑)。海外の子供用の玩具店に行くのが結構好きで、すごくエバーグリーンなんですよ。ずっと使えるし、シンプルなのに深みがあるというか。そうゆう風になれたらいいなと思うんですけど・・・全然(笑)。内容に沿ってるか微妙ですけどね。

―いや、僕はそれ聞いてしっくりきましたよ。さっきの大衆性の話にも通じると思うんですけど、エバーグリーンな感じっていうのは確かにYOMOYAにありますもん。

山本:そう言っていただけると、うかばれます(笑)。

気持ちはゆったりなんですけど…
録音作業に関しては全力で(笑)。

―『Yoi Toy』のレコーディングは小淵沢にあるスタジオで行われたそうですが、期間はどれくらいだったんですか?

山本:丸一週間ですね。

―曲はこっちで用意して、録るだけ?

山本:そうですね。一週間で全部録り終わんなかったんで、結果的に向こうで作ったものはほとんどないです。

―収録されているのは、いつ頃に作った曲が多いんですか?

山本:ほとんど昔からやってた曲なんですけど、メンバーが変わったりして、固まりきらなかったんです。“雨あがりあと少し”なんかは活動当初に作ったCD-Rにもう入ってて。だから結構昔からやってたネタというか、ここで捨てちゃうのは絶対もったいないっていうのを練り直しました。

YOMOYAインタビュー

―“雨あがりあと少し”は11分に及ぶ大曲ですが、昔からこの長さだったんですか?

山本:むしろ短くなりました。昔は気分で好き放題やってたんで。まあCD化するので、改めて聴いて、考え直して、少し切ったりとか、切って大ひんしゅくを買った部分があったりとか(笑)。

―「なんでここ切るんだよ!」って(笑)。

山本:やり直させられたんですけど…ある人に(笑)。あとレコーディングに関してはこれだけ一発録りでして。一応ブースは分かれてたんですけど、窓を開け放して、音が聴こえるようにして、広い空間で録った感じです。

―小淵沢と都内のスタジオ、何が一番違いました?

山本:肌の調子が良かったです。

―そこですか(笑)。

山本:やっぱり環境がすごく良くて。目の前が芝生で、後ろには八ヶ岳があって、散歩ができて。すごく広い気持ちというか、せせこましい感じにならなくて、ゆったりやった感じなんで。気持ちはゆったりなんですけど…録音作業に関しては全力で(笑)。

―音楽的な環境の違いはどうですか?

山本:そこに楽器がいっぱいあって、グランド・ピアノを使ったり。あ、一番大きかったのが、ローズ(フェンダー製の有名なエレクトリック・ピアノ)が二台あったんですよ。それに長倉が食いつきまして、ローズ大活躍でしたね。

YOMOYAインタビュー

―確かに、効いてますよね。

山本:僕も音色好きだったので。この間スタジオで、今NORD ELECTRO2(キーボード)を使ってるんですけど、それでローズっぽい音ができたって言って歓喜してました(笑)。

―「これでライブでもできる!」って(笑)。

山本:そればっかりになりそうですけど(笑)。

―『YOURS OURS』は音が作りこまれていて、ミックスも分離がはっきりしていましたよね?一方『Yoi Toy』は音の生々しさ、バンド感が印象的でした。これは意図的でしたか?

山本:そう言えばそうですね、そういうことを言えばよかったですね(笑)。もういいやじゃないんですけど・・・混ぜちゃえっていう勢いは、小淵沢で録ったからあったんだと思います。前はすごく狭い部屋でドラムもギターもキーボードも全部録ったんで、結構閉塞感があったんです。だから音に割り振りをつけて広げようっていう。今回はそれをやってもしょうがないから、楽器の鳴りを重視しましたね。ちょっと広めというか、響きを録れたらいいなって思ってたら、「小淵沢で録れるよ」って話があって、「じゃあ絶対行きます」っていう。だからすごく僕の希望通りになりましたね。

―メンバー・チェンジを経て、バンドとして固まってきた、その勢いを出したいという考えはありましたか?

山本:曲を作ること、練り直すことに手一杯で・・・アンサンブルを大事にするところはあるんですけど、バンドとしての強固な感じ、ヘビーな感じとかは、どっちらけなところがあるんですよ。あえてそうしてる面もありますし、自然とそうなってるところもあって、それがカラーになってると思うんですけど・・・まあ、なんとかなるだろう的な感じで(笑)。

―(笑)バンド感よりも楽器の鳴り、響きを重視したと。

山本:そうですね。バンド感は結果出るだろう、というのもあって。

―ギターの使い方も、前作ではエレキの曲・アコギの曲っていう風に分かれてたのが、今回基本エレキで、アコギは装飾的に使われてますよね。これもエレキの鳴りを重視したから?

山本:今回アコギは基本リズムを取ってまして、ポップ・ミュージックのやり方を意識したところがあります。あとオーガニックな感じにしたかったっていうのもあって、そうゆう緩さが、楽器のストロークとか、「アコギをいっぱい入れよう」とかって感じに繋がったんだと思います。それが一番出てるのは“呼ぶ声”とか“周波数”とかですね。

―6月には初のワンマンが控えています。それに向けて現在考えていることがあれば教えてください。

山本:今回録った曲の中で、四人だと表現できない曲もあるので、誰かゲストを入れたり、あと少しアレンジを変えて、めんどくさい曲とかを、あえてシンプルにしてやろうかなっていうのは考えてます。

―電飾をやめるかもって小耳に挟んだんですけど。

山本:そういえばそうゆうこと言ってましたね(笑)。でも当分やると思いますよ、手元見えるんで(笑)。ライブやってると、ここで手元見たいのに真っ暗みたいなときあるじゃないですか?

―ああ、わかります、わかります(笑)。

山本:そうゆうのが絶対にないので助かってます(笑)。

YOMOYAインタビュー

―そもそもあの電飾って、何が由来なんですか?

山本:あ、それ聞きますか(笑)。

―はい、聞いちゃいます。

山本:それはペイヴメントがやってたので、「これはええわー」と思って。

畠山(& records):多分やめようと思ったのは、ペイヴメント再結成の噂があったから。

山本:ああそうだ、それもあった(笑)。

―再結成したらばれちゃうから(笑)。

山本:結局再結成しないんですかね?

畠山(& records):YOMOYAに気を使ってるんじゃないかな(笑)。

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リリース情報
YOMOYA
『Yoi Toy』

2009年5月13日発売
価格:2,000円(税込)
& records YOUTH-72

1. 呼ぶ声
2. 周波数
3. Chorus
4. フィルムとシャッター
5. bugs bite bits
6. サイレン再度オンサイド
7. FUAN
8. 雨あがりあと少し
9. 世界中

イベント情報
『Yoi Toy Tour』

『ジェットロックフェス 2009 - 2nd』

2009年5月31日(日)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:仙台PARK SQUARE

出演:
YOMOYA
SuiseiNoboAz
NOTCRYANT (仙台)
under the yaku cedar (仙台)
料金:前売2,000円 当日2,500円

2009年6月1日(月) 会場:山形第2公園スタジオ

2009年6月6日(土)
会場:長野NEONHALL

『speshall vol.5 YOMOYA"Yoi Toi" release tour』

2009年6月11日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:十三FANDANGO

出演:
YOMOYA
ha-gakure
your gold,my pink
アンコールアワーズ

料金:前売2,000円 当日2,500円
チケット取り扱い:
チケットぴあ(Pコード:324-409)
ローソンチケット(Lコード:53617)

『Yoi Toy』 release tour final ONE MAN SHOW
YOMOYA series7『ぼくらだけではかりごと』

2009年6月13日(土)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:渋谷O-nest

料金:前売2,000円 当日2,500円

プロフィール
YOMOYA

2003年より活動するクァルテット。2008年6月、アルバム『YOURS OURS』でデビューし、ロック・フェス『Do It 2008』にも出演(共演に曽我部恵一BAND、bloodthirsty butchers、toeなど)。ポスト・ロック、オルタナ、USインディー、フォークなどを消化した高次元の音楽性と人懐っこさが同居したサウンド、電飾を施したステージで繰り広げる激しさと繊細さが交錯するパフォーマンス、そしてなにより文学性や叙情性を感じさせるメロディー、日本人の心の琴線に触れる声が最大の特徴。2009年5月、OGRE YOU ASSHOLEを手がけた斉藤耕治プロデュースによる2nd『Yoi Toy』リリース予定。



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