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幼児退行気味のこの国へ 菊地成孔のアゲインスト

幼児退行気味のこの国へ 菊地成孔のアゲインスト

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望
2014/02/28
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4月3日から6日間にわたって、渋谷Bunkamura オーチャードホールで開催される『JAZZ WEEK TOKYO 2014』。先日の『グラミー賞』で「ベスト・インプロバイズド・ジャズ・ソロ」部門を獲得し、健在ぶりを示したウェイン・ショーターが2年連続で、なおかつ今年はフルラインナップでのウェイン・ショーター・カルテットで来日する他、日本からは綾戸智恵やCharも出演するなど、今年も幅広いラインナップが大きな話題を呼んでいる。

中でも、昨年もペペ・トルメント・アスカラールで出演していた菊地成孔が、何と2006年にアルバムを発表したUAとのコラボレーション、『cure jazz』のリユニオンという形で出演するというニュースは、最大級の驚きを持って伝えられた。8年ぶりの再演ということに加え、現在沖縄で暮らしているUAにとって、これが震災後の東京初ライブとなるのだから、それも当然である。そこで、今回は菊地に『cure jazz』のリユニオンが実現することとなった経緯、および当日のパフォーマンスの展望をじっくりと語ってもらった。長い年月を経て、二人がどんなステージを披露するのかはもちろん、この日菊地が話してくれた「ジャズと加齢の関係性」という意味でも、見逃せない公演であることは間違いない。

今回マスコミ稼働が僕だけなので、いない人のことを盛って喋っちゃうといけないなって思うんですけど……UAさんのモチベーションは非常に高いと思います。

―まずは8年ぶりに『cure jazz』のリユニオンが実現することになった経緯を話していただけますか?

菊地:定期的にUAさんと連絡を取り合っていて、「そろそろやってみたいね」って話をしたわけではなく、ぶっちゃけ言うと、主催者側から「ひさしぶりにやってくれないか?」っていうオファーをいただいたんです。ただ、UAさんがやるわけないと思ったんですよね。ご存じのとおりUAさんは、非常に強いエコロジストで、ベジタリアンでもあって、震災以降は沖縄にいらっしゃるわけです。なので、彼女が東京に出てきて、大々的にライブを、しかも、『cure jazz』のリユニオンをやるっていうのは、二重三重の意味であり得ないと思ってたんです。

菊地成孔
菊地成孔

―当時から、「このプロジェクトは1回限り」っていうこともおっしゃってましたもんね。

菊地:そうですね。アルバムを出して、1回ツアーをやったら、「二度とやりたくない」って考えてました。そう言うと悪く聞こえますけど(笑)、「1回だけにしておくのがいい」という考え方ですね。その後もしばらくは個人的に親しくさせていただいていたんですけど、震災後は連絡も取っていなかったですし。

―菊地さんご自身は、リユニオンのオファーを受けて、何を思いましたか?

菊地:「今どうしても『cure jazz』がやりたいんだ」という強いモチベーションがあったわけではないですけど(笑)、やることはやぶさかではないというか、やれたら嬉しいとは思いました。あのときやったことが、8年経ってどうなるのか興味がありますし。ただ、さっきも言ったように、UAさんがやるわけないと思っていたので、主催者側に「まずはUAさんにオファーを出してください。彼女がオッケーって言ったらやります」とお伝えしたんです。そうしたら、あっさりオッケーが出て(笑)。

―意外にも(笑)。

菊地:まあ、僕が交渉したわけじゃないので、「あっさり」だったかは正直わからないんですけどね(笑)。ただ、いろいろと条件があって、リハーサルは沖縄でやって、沖縄でも公演をやると。なので、僕も一族郎党連れて沖縄に行くんですよ。

―リユニオンについて、菊地さんとUAさんとの間では何かやり取りがあったんですか?

菊地:連絡を取ったのは、やることが決まってからです。今回はマスコミ稼働が僕だけなので、いない人のことを盛って喋っちゃうといけないなって思うんですけど……彼女のモチベーションは非常に高いと思います。もともとラディカルな人だから、思い切ったことをしたい人でもあるんですよね。非常に母性が強いと同時に、娘性も強い人で、守ったり、与えたりする力もあるけど、奪ったり、破壊したりする力もある人。だから、ちょっと東京に行って、バッとやって帰るっていうことを、「やっておきたいな」っていう、そういう衝動が生じたんじゃないかと思うんですよね。

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イベント情報

『JAZZ WEEK TOKYO 2014』

『cure jazz reunion』
2014年4月3日(木)START 19:00
会場:東京都 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
出演:UA×菊地成孔
料金:6,500円

『エレクトリックギターの夕べ』
2014年4月4日(金)START 19:00
会場:東京都 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
出演:Char
料金:6,000円

『A.C.ジョビンに捧ぐ』
2014年4月5日(土)START 15:00
会場:東京都 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
出演:
リー・リトナー&デイブ・グルーシン“ブラジル・プロジェクト”
エイブラハム・ラボリエル(Ba)、ダニエル・ジョビン(Pf,Key,Vo)、ルイーザ・ジョビン(Vo)ほか
ゲスト:小野リサ(Gt,Vo)
料金:8,500円

『My Way』
2014年4月6日(日)START 14:00
会場:東京都 渋谷 Bunkamuraオーチャードホール
出演:綾戸智恵 with 前田憲男スペシャル・ビッグバンド
ゲスト:原信夫
料金:7,000円

『80th Anniversary Concert』
2014年4月14日(月)、4月15日(火)START 19:00
出演:ウェイン・ショーター・カルテット feat.ジョン・パティトゥッチ(Ba)、ダニーロ・ペレス(Pf)、ブライアン・ブレイド(Dr)
料金:各公演 9,000円

プロフィール

菊地成孔(きくち なるよし)

ジャズメンとして活動 / 思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽 / 著述活動を旺盛に展開し、ラジオ / テレビ番組でのナビゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画 / テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。「一個人にその全仕事をフォローするのは不可能」と言われる程の驚異的な多作家でありながら、総ての仕事に一貫する高い実験性と大衆性、独特のエロティシズムと異形のインテリジェンスによって性別、年齢、国籍を越えた高い支持を集めつづけている、現代の東京を代表するディレッタント。2011年、ジャズの名門レーベルimpulse!からDCPRG名義で『Alter War In Tokyo』を発表。主著はエッセイ集『スペインの宇宙食』(小学館)、マイルス・デイヴィスの研究書『M/D~マイルス・デューイ・デイヴィス3世研究』(河出新書 / 大谷能生と共著)、レギュラーはTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』など。最新アルバムはJAZZDOMMUNISTERS『BIRTH OF DOMMUNIST~ドミュニストの誕生』(ビュロー菊地)。

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