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片桐はいり&小野寺修二 衝突を恐れない二人の挑戦の日々

片桐はいり&小野寺修二 衝突を恐れない二人の挑戦の日々

インタビュー・テキスト
小林英治
撮影:佐々木鋼平

2014年秋、東京・青山を舞台に2002年から開催してきた『ダンストリエンナーレトーキョー』を引き継ぎ、新たなダンスフェスティバル『Dance New Air - ダンスの明日』が誕生する。国や言語、芸術領域などの境界を越え、新たな地平を切り開こうとする恊働クリエイションに焦点をあてる第1回のオープニングを飾るのは、パントマイムの動きをベースに台詞を取り入れた独自の演出で注目を集める、カンパニーデラシネラ主宰の小野寺修二が演出・出演する『赤い靴』。

アンデルセンの童話を題材にしたこの新作で、小野寺はこれまでにもたびたびクリエイションを共にしてきた女優・片桐はいりを起用し、ダンスでもマイムでも演劇でもない、オリジナルな表現を探求する。小野寺が今、「一番信頼している女優」という片桐が、彼の作品に何をもたらし、また小野寺が彼女から何を引き出そうとするのか。その出会いから、過去3度のコラボレーションを通して築きつつある独自のメソッドまで、現在進行形の関係性を二人に聞いた。

すごく覚えているのは、「小難しいと思われているダンスの世界をバカバカしいものにしてほしい」と言われたこと。「あ、それは私の仕事だ」と思いました。(片桐)

―小野寺さんは、先日の記者会見で片桐さんのことを「一番信頼している女優」とおっしゃっていましたが、お二人が一緒にお仕事されるようになったきっかけは?

小野寺:僕の完全なラブコールからです(笑)。「水と油」(1995年~2006年に活動していたパフォーマンスシアター)を休止して1年間パリに行って帰ってきた後、バレエの首藤康之さんや俳優の浅野和之さんといった方たちとコラボレーションをする形でカンパニーデラシネラをスタートさせたんですが、もし女優さんとコラボレーションするなら、はいりさんに出ていただきたいと思っていました。浅野さんとはいりさんがお知り合いだったこともあって、僕が浅野さんとご一緒した作品(『ある女の家』2008年)を観に来てくれたことは知っていて。それでお電話を差し上げて、事務所まで伺って、なぜ一緒にやりたいのか? っていう話を直談判で熱く語ったんです。

小野寺修二
小野寺修二

―初めて片桐さんとコラボレーションした『異邦人』(2010年)のときですね。

小野寺:はい。ただ、時期的にもかなりギリギリのお願いだったので、正直ダメもとと言うか。でも、もしかしたら興味を持っていただけるかもしれないので、できるだけ思いの丈はお伝えしたいなと思って。カンパニーデラシネラの作品は、いわゆる演劇のように台本がきっちりあって、それを憶えて稽古というものではないので、今考えると少し無茶なお願いだったなと思うんですけど(苦笑)。

―片桐さんが初めて小野寺さんの作品をご覧になったのは?

片桐:お名前はもちろん知っていましたが、作品を拝見したのは『ある女の家』が最初で、「うわー、何だこれ? 動きが人間じゃない! 面白い!」ってすぐ好きになりました。ただ、お話をいただいたときは、自分にはマイムやダンスの動きは絶対できないと思ったので、無理だと言ったんです。そうしたら、「べつにはいりさんにダンスしてもらおうとは思ってないので」って(笑)。

小野寺:そんな高飛車な言い方してないですよ!(笑)

片桐:すごく覚えているのは、「小難しいと思われているマイムやダンスの世界を、バカバカしいものにしてほしい」と言われたこと。それを聞いて、「あ、それは私の仕事だ。何か役に立てることがあるかもしれない」と思いました。もちろん小野寺さんの作り出す世界に対する興味もありました。そうしてお引き受けしたら、稽古と言うより、いきなりワークショップみたいな形で始まって、最初はわけがわからず戸惑いましたね(苦笑)。演劇の場合は台本があって、自分がやるべきことが台詞と同時にわかるんですけどね。

これまではいりさんがやってきたことと自分のやってきたことをぶつけ合うと、何らかの新しい形に融合するかもしれない、っていう期待感はすごくありました。(小野寺)

―ということは、片桐さんにとって今までにはない経験だったんですね。

片桐:そうですね。過去にダンスの人と絡んで語り部をやるみたいなことはあったんですけど、全くゼロから作品を一緒に作るというのは初めてでした。たとえば「机を使ってなんか動きを作ってください」っていきなり言われて、「えぇー!?」みたいな。しかもそのとき私以外の出演者はダンサーの方たちばかりだったので、みんなすごい動きをするんですよ。私、体育「2」だったのに(笑)。

片桐はいり
片桐はいり

小野寺:でも、僕はダンサーにとてつもない身体能力を求めているわけではなくて。そういう意味では、ダンサーさんも俳優さんも同じ地平のスタートなんです。じゃあ、そこで何を見ているかと言うと、お題に対してどういうアプローチするか? とか、それを面白いと思うか、興味を持続できるかというところです。その点はいりさんはすごくセンスがいいなぁと思いました。

片桐:それでもダンサーさんと一緒に動くシーンがあって、やっぱりそのレベルに合わせるためには大変でした。最年長でキャリアも一番長いのに、いきなり一番下っ端みたいな状況になっちゃったんですよ。それなりに演劇を30年近くやっていて、どの現場でも大体のルールはわかった気になっていたところに、全く新しいルールが来たというか、逆に新鮮で面白かったですね。

―それは具体的に言うと、どういうことですか?

片桐:やっぱり動きの具合であったりとか、単純にまっすぐ立つだけでも、ものすごく大変だったり。マイムの間の取り方と演劇の間の取り方、あと表現の仕方も全然違うので、私が良いと思ってやっていることに「そこは一歩前で止めなかったら表現にならない!」とか言われたりして、理解できないことも多かったんです。最初は本当にケンカばっかりでしたね。二人で涙目になりながら「言ってることがわかんないんだよぉ!」って(笑)。

―(笑)。でも、そういうやりとりができること自体が、いい関係ですね。

小野寺:それは本当にクリエイションする上での相性だと思うんです。僕の勝手なラブコールから始まったんですけど、相性的に僕はすごくいいというか、これまではいりさんがやってきたことと自分のやってきたことをぶつけ合って、もしかすると何らかの新しい形に融合するかもしれないな、っていう期待感はすごくありました。

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イベント情報

『Dance New Air - ダンスの明日』

2014年9月12日(金)~10月5日(日)
会場:東京都 青山 青山円形劇場、スパイラルホール、シアター・イメージフォーラム、青山ブックセンター本店ほか

『赤い靴』
2014年9月12日(金)~9月15日(月)
会場:東京都 青山円形劇場
演出:小野寺修二
美術:ニコラ・ビュフ
出演:
片桐はいり
ソフィー・ブレック
藤田桃子
小野寺修二

『ASOBI』
2014年9月13日(土)~9月15日(月)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
演出・振付:伊藤郁女
出演:
チャバ・ベルガ
ジャン・ギャロワ
伊藤郁女
ピーター・ユハス

『Project Pinwheel』
2014年9月18日(木)~9月19日(金)
会場:東京都 青山円形劇場
ディレクター:佐幸加奈子
振付・出演:
エスター・バルフェ
チョン・ヨンドゥ
北村成美

『そこに書いてある』
2014年9月22日(月)~9月23日(火)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
構成・演出・振付:山下残
出演:
山下残
ハン・サンリュル
ホ・ヒョソン
ユン・ボエ
ほか

『談ス』
2014年9月22日(月)~9月23日(火)
会場:東京都 青山円形劇場
振付・出演:
大植真太郎
森山未來
平原慎太郎

『Les Oiseaux』『La Traversée』
2014年9月27日(土)~9月28日(日)
会場:東京都 青山円形劇場
振付:ナセラ・ベラザ
出演:
ナセラ・ベラザ、ダリラ・ベラザ(『Les Oiseaux』)
ダリラ・ベラザ、オーレリー・ベルラン、モハメド・エシュ=シャルカウイ(『La Traversée』)

『To Belong / Suwung』
2014年10月3日(金)~10月5日(日)
会場:東京都 青山円形劇場
振付・演出:北村明子
ドラマトゥルク・演出:ユディ・アフマッド・タジュディン
出演:
ユディ・アフマッド・タジュディン
エンダ・ララス
リアント
ルルク・アリ
大手可奈
西山友貴
川合ロン
北村明子

『altered natives’ Say Yes To Another Excess -TWERK ダンス・イン・クラブナイト』
2014年10月4日(土)~10月5日(日)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
構想:
フランソワ・シェニョー
セシリア・ベンゴレア
出演:
エリザ・イヴラン
アナ・ピ
アレックス・マグラー
フランソワ・シェニョー
セシリア・ベンゴレア
DJ:イライジャ&スキリヤム

『イースタン・コネクション』
2014年9月16日(火)、9月17日(水)
会場:東京都 森下スタジオ
参加アーティスト:
コスミン・マノレスク(振付家)
山下残(振付家)
ミハエラ・ドンチ(ダンサー)
乗越たかお(評論家)

『ドミノ・プロジェクト』
2014年9月12日(金)
会場:東京都 CAY(スパイラルB1F)
参加アーティスト:
アレン・シンカウズ(音楽)
ネナド・シンカウズ(音楽)
イヴァン・マルシュッチ-クリフ(マルチメディア・インスタレーション)
川村美紀子(振付家)
ズヴォニミール・ドブロヴィッチ(キュレーター)

『15 × AT NIGHT』(屋外パフォーマンス)
2014年9月20日(土)~10月4日(土)
会場:東京都 こどもの城ピロティ
コンセプト:ポール=アンドレ・フォルティエ、 ディアンヌ・ブッシェ
振付:ポール=アンドレ・フォルティエ
出演:マニュエル・ロック

プロフィール

片桐はいり(かたぎり はいり)

東京都出身。大学在学中から劇団で活動、舞台CMでデビュー。その後映画、テレビドラマ等でも異彩を放つ。主な出演舞台、『片桐はいりひとり芝居・ベンチャーズの夜』(1994~1996年)、『マシーン日記』(1996、2001年)、『花子について』(2013年)。カンパニーデラシネラには、2010年の『異邦人』初演以降、『カルメン』(2013年)、『異邦人』再演(2013年)、『ゲーム』パリ公演(2013年)、『サイコ』佐渡薪能公演(2014年)等に参加。主な出演テレビ『時々迷々』(2009年~)、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)など。映画『かもめ食堂』(2006年)、『R100』(2013年)、今秋公開の『小野寺の弟・小野寺の姉』では向井理とともに主演。著書『もぎりよ今夜も有難う』など。

小野寺修二(おのでら しゅうじ)

演出家。カンパニーデラシネラ主宰。日本マイム研究所にてマイムを学ぶ。1995年〜2006年、パフォーマンスシアター水と油にて活動。その後文化庁新進芸術家海外留学制度研修員として1年間フランスに滞在。帰国後カンパニーデラシネラを立ち上げる。主な作品として、『あらかじめ』(2011年、青山円形劇場)、『オイディプス』(2011年、静岡芸術劇場)等。また、『ダンストリエンナーレトーキョー2012』にて『ロミオとジュリエット』、『瀬戸内国際芸術祭2013』にて屋外劇『人魚姫』を発表するなど、劇場内にとどまらないパフォーマンスにも積極的に取組んでいる。近年は、音楽劇や演劇などで振付の担当もしている。『第18回読売演劇大賞』最優秀スタッフ賞受賞。

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