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時代を捉える秦 基博の眼差し ヒットを生む「深さ」はどこから?

時代を捉える秦 基博の眼差し ヒットを生む「深さ」はどこから?

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:西田香織

間もなくデビュー10年目を迎える今、「求められる声」としてさらに頭角を現しつつあるシンガーソングライター、秦 基博。彼がリリースするニューシングル『Q & A』は、堤幸彦監督作『天空の蜂』の主題歌だ。

昨年に映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌として発表され今なおロングヒットを記録ている“ひまわりの約束”、『カンヌ国際映画祭』にも出品された河瀬直美監督の映画『あん』主題歌“水彩の月”と、映画の主題歌を手掛けることが続いてきた彼。情感のこもったバラードであるこの二曲に対し、“Q & A”はアグレッシブな曲調と強い口調で歌われる歌詞の言葉が印象的なナンバーだ。

単なるタイアップとしてではなく、その作品のテーマやメッセージを深く感じることから主題歌を作っていくという彼。映画と音楽の幸福な関係について、そして自身の表現者としての矜持について、語ってもらった。

自分たちが人に手を差し出す時というのは、傷付けるためじゃなく守るためだと思うんです。誰しもがきっと根っこではそう思っている。だけどそうなっていない現状がある。

―“Q & A”は映画『天空の蜂』の主題歌ですが、映画からどういうインスピレーションを受けて書いたのでしょう?

:やはり重要なのはストーリーと、そこにあるメッセージですね。映画が伝えようとしていることの中で、自分はどんなものをすくいとって歌にできるのかを考えました。この映画は、原発の開発に携わる男と、「ビッグB」という超巨大ヘリを設計した男の二人を中心に展開していくんですけど、原発もヘリも、使いようによって人間を助けるものにもなるし、凶器にもなってしまう。その点では表裏一体だし、二人も境遇は似ているんですが、その運命が180度違っていくんですね。そういうところに、人間の抱えている矛盾とか業のようなものが描かれていると思った。それを自分なりにどう言葉にしていこうかなっていうのが、歌詞を書く出発点でした。


―映画は原発とテロをテーマにしたとても社会性のある作品になっています。そういったところも刺激になりましたか?

:もちろんそうですね。ただ、自分としては、社会的なメッセージを込めた曲を歌おうというつもりはなくて。映画が伝えようとしていること、それを自分がどう感じてどう言葉にできるかということを意識していました。

―つまり、矛盾や業についてということですね。

:善とか悪とか、幸せか不幸せかとか、そういったものの境界って、非常に曖昧で、あやふやだと思うんです。そういうことは映画を見て強く感じた部分でした。歌詞の冒頭でも<傷付けるため それとも守るため この手はあるの?って 簡単なQ&A わかってるはずだって>と歌っている。自分たちが手を差し出す時というのは、大前提として、傷付けるためじゃなく守るためだと思うんです。誰しもがきっと根っこではそう思っている。だけどそうなっていない現状がある。そこにある矛盾が歌になる部分だと思ったんですよ。なんでわかってるのにできないんだろう、という。

秦 基博
秦 基博

―そうですよね。わかっているはずのことが、なかなかできないことがある。

:だから“Q & A”というタイトルにしたんです。答えはわかっているはずなのにそうならない。そういう気持ちにならない。

―そこに葛藤があるわけですね。

:なんというか、言葉にならない、ぐちゃっとした感情があると思うんですよね。だから自分としては「あなたはどうしますか、僕たちはどうしますか」っていう問いかけで終わりかったんです。

楽曲を作るということは、気にしなければ過ぎ去ってしまうようなことに目を向けるチャンスを得ることでもあると思う。

―なるほど。最後の歌詞は<迷うことなく 人は手を差し出せるか?>となっている。

:普段は、曲の中で「こうであるべきだ」っていう答えを歌って終わることが多いんです。でも、この楽曲においてはそうじゃなく、問いかけで終わろうと思いました。矛盾や相反する物事の中で揺れ動く気持ちがあって、その中で最終的に自分たちは何を決断して選択して、生きていくのかという。それが『天空の蜂』の中でも描かれている部分だと思うし、曲の中でも大事な部分でもある。

―サビの部分では<憎しみも裏を返せばつまり同じだ 愛だ>と歌っています。愛と憎しみというものは、歌の中で相反するものとして描かれている。

:そうですね。結局憎しみを抱くこと、人を傷付けてしまうことの根っこは、人は1人で生きてないからっていうところにあると思うんですよ。他者との関わりあいの中で生まれてくるものだと思うし、それは人間社会の中で暮らしている人の営みとしてごく自然なことだと思うんですけど。

―他にもこの曲の中で相反するもののモチーフに選んだものはありますか。

:「幸せ」と「不幸せ」ですね。自分にとっての幸せが誰しもにとって幸せとは限らないっていうことも書いている。それからやっぱり「傷付けること」と「守ること」ですね。原発でもヘリでも結局扱う人によって結果がどう転ぶのかはわからないので。

秦 基博

―こういったテーマは、映画が1つのきっかけになったとはいえ、普段から生活をしていて感じるものでもあったりするのでしょうか。

:きっとそうだと思いますね。で、普段から無意識に抱えている疑問だったり、モヤモヤ晴れない気持ちだったり、「実際のところどうなってるのかな」という思いだったり……でも普段はそういうことを見過ごして暮らしているんですよね。楽曲を作るということは、そういう気にしなければ過ぎ去ってしまうようなことに目を向けるチャンスを得ることでもあると思うんです。

―見過ごしがちなことって、たとえばどういうものがありますか?

:いろんな疑問や憤りもありますし、政治的なことも考えますし、あとは、日常の些細なことでも「もっとこうできたはずだな」って思うこともある。なんとなく毎日が過ぎていくことへの「本当にそれでいいのかな」という不安もある。そういう澱みみたいなものが自分の中に溜まっていってるんですよね。

―そういうものが表現につながる。

:それによって何を変えようとしているか、どんな行動をしたかというのは、また別のことだとは思うんです。でも、自分は何に対して怒ってたのか、何に不安を感じていたのか、それは何のせいなのか、何のためなのかということを、とにかく考える。それは曲を書くことにすごくつながります。喜怒哀楽、いろんな感情があると思うんですけど「なんでこんなに優しい気持ちになれたのか」と考えることもそうだし、「なんとなく楽しかったな」って感じて過ぎ去ったことを、「どうして楽しく感じたんだろう」とか「でもあの時ちょっとだけ寂しかった気がするな」と考えて、掘り下げていく。そうやって感情をすくいとることが自分にとって曲を書くってことなんじゃないかと思うんです。

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リリース情報

秦 基博 
『Q & A』初回生産限定盤(CD)
秦 基博
『Q & A』初回生産限定盤(CD)

2015年9月9日(水)発売
価格:1,700円(税込)
オーガスタレコード / アリオラジャパン / AUCL-185

1. Q & A
2. 恋はやさし野辺の花よ
3. Dear Mr.Tomorrow(with String Quartet)
4.Q & A(backing track)
※44ページの「スペシャルブックレット」付属(寄稿者:KAN、笹原清明、塩川いづみ、渋谷直角、清水浩司、花沢健吾、万城目学、松任谷由実、本秀康)

秦 基博
『Q & A』通常盤(CD)
秦 基博
『Q & A』通常盤(CD)

2015年9月9日(水)発売
価格:1,300円(税込)
オーガスタレコード / アリオラジャパン / AUCL-186

1. Q & A
2. 恋はやさし野辺の花よ
3. Dear Mr.Tomorrow(with String Quartet)
4. Q & A(backing track)

作品情報

『天空の蜂』

2015年9月12日(土)から全国公開
監督:堤幸彦
原作:東野圭吾『天空の蜂』(講談社文庫)
脚本:楠野一郎
主題歌:秦基博“Q & A”
音楽:リチャード・プリン
出演:
江口洋介
本木雅弘
仲間由紀恵
綾野剛
柄本明
國村隼
石橋蓮司
竹中直人
向井理
佐藤二朗
光石研
落合モトキ
やべきょうすけ
手塚とおる
永瀬匡
石橋けい
カゴシマジロー
松島花
前川泰之
松田悟志
森岡豊
配給:松竹

プロフィール

秦 基博(はた もとひろ)

2006年11月にシングル「シンクロ」でデビュー。強さを秘めた柔らかな歌声と叙情的な詞世界、そして耳に残るポップなメロディで大きな注目を浴びる。「鱗(うろこ)」や「アイ」のロングヒットで幅広い層から支持を集める一方、日本武道館での全編弾き語りライブ(2011年)、独創的な映像演出を取り入れた『Visionary live-historia』(2013年)を成功させるなど、ライブ・アーティストとしての評価も高い。2013年にアルバム『Signed POP』収録の「Girl」がUSEN HITランキングで年間1位を獲得。2014年に映画『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌として書き下ろした「ひまわりの約束」が各種年間チャートを席巻する大ヒットを記録し、弾き語りによる初のベストアルバム『evergreen』が第56回日本レコード大賞企画賞を受賞。2015年6月にリリースされたシングル「水彩の月」は第68回カンヌ国際映画祭正式出品映画『あん』の主題歌としても話題を呼んだ。

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