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生きることは、動くこと。大きく変わったASA-CHANG&巡礼の7年

生きることは、動くこと。大きく変わったASA-CHANG&巡礼の7年

ASA-CHANG&巡礼『まほう』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:矢島由佳子

「聖者」ではなく「生者」の音楽。ASA-CHANG&巡礼の音楽とは、そういうものだ。

権威的な西洋音楽に背を向け、非西洋の打楽器に可能性を求めること。言葉を切り刻むことで感情の商品化を否定し、詩や歌を再定義すること。そうやって彼らが奏で続けてきた音楽は、常に「音楽とは、表現とは、それ自体が生き物であり、それを産み出す我々もまた生き物なのだ」というメッセージを内包していた。表現とは、高尚なステージの上から見下ろすように産み出されるものではなく、人々の生活や思考の狭間から立ち昇るものなのだと、ASA-CHANG&巡礼は伝え続けてきた。

7年ぶりのフルアルバム『まほう』。ここには、未曽有の災害、去っていった友人たち――7年という歳月の中で、はっきりとした輪郭を持って忍び寄ってきた「死」に対し、高い明度で「生」と「人」を描くことで対峙しようとしたASA-CHANGの表現者としての……いや、生き残った者としての業が強く刻まれている。

生きることは、ときに歪なことかもしれない。でも生きる。でも動く。そうやって表現を、生命を前進させてきたASA-CHANG&巡礼が、今までになかった思春期性、ロックンロール的な側面すら開陳した本作。そこに込めた「生者」としての想いをじっくり聞いてきた。

お誘いを頂いたとき、「え、ASA-CHANG&巡礼にバイオリンが入るの?」と思って(笑)。もう一人はサックスが入るっていうし、今までのASA-CANG&巡礼のイメージと違い過ぎるから。(須原)

―今作『まほう』は、前作『影の無いヒト』から7年という長いスパンをあけてのフルアルバムですが、この7年の間に、とても抜本的な変化があったんじゃないかと作品を聴いて思いました。実際、いかがですか?

ASA-CHANG(Per):前の作品が2009年ですか? あれ以降でメンバーチェンジもあったので、過去に作った法律やルールをもう1回見直さなければいけなくて。この7年間は、三人で名前のないスポーツをやっていたようなものでしたね。

―前作以降で、何かしらの変化が必要だった?

ASA-CHANG:そうですね……「インタラクティブアートはこうでなければいけない」とか、「コンテンポラリーダンスはこうでなければいけない」とか、なんでそういうことを止めないんだろう? という疑問は常々あったんですよ。いろんな表現に対する自分の座りの悪さというか。

ASA-CHANG
ASA-CHANG

―表現は本来自由であるべきところが、その自由さがもはや失われているということですか?

ASA-CHANG:いや、自由でなくてもいいんだけど、全部が全部、同じ作法でものを作っているなと思ったんです。ひらがなから作っていいはずなのに、みんな文字は同じで、フォントだけ変えるような仕事をしている。僕らは本来、そうじゃないことをするべきだと思うんですよ。たとえばこの7年の間に、劇団ポツドール(2006年に『愛の渦』で『岸田國士戯曲賞』を受賞した三浦大輔が主催する劇団)にはすごくシンパシーを感じたんです。彼らは「そこまでしなくていいじゃん」というところまでやりますよね(笑)。枠にはまらないし、上から目線で表現をしていないなって感じる。

―ASA-CHANGさんの場合は、ご自身の音楽がどこか凝り固まったものになってしまっていて、それを解きほぐしたいという思いがあったんですかね?

ASA-CHANG:そうですね……漠然としていたんですけどね。新メンバー募集の公開オーディションもやっているんですよ。

須原(Violin):あぁ~、やったみたいですね。

左から:須原杏、ASA-CHANG
左:須原杏

ASA-CHANG:でも、「私は“花”(2001年発表。映画『けものがれ、俺らの猿と』の主題歌として話題を集めた)とまったく同じように叩けます」なんていうタブラの名手みたいな人が来ると、「おいおい、ちょっと待ってくれよ」ってなるんですよね。「もうそれを必要としていないことが、空気でわからないのか?」と。来てくれるのはありがたいけど、オーディションで目の当たりにしたのは、僕の思う巡礼と相当違うものだったんです。そこから自力で探して辿り着いたのが、新しく入った二人で。でも、そのときに何を求めていたのかっていうのは、わからない。強烈な何かはあったと思うんですけどね。なんだろう……馬鹿みたいなこと、明るいことや楽しいことをやりたいっていう気持ちはあったかもしれない。

―後関さんと須原さんは、お二人が加入する前と後の巡礼の変化について、どう思いますか?

後関(Sax):前の巡礼は、言葉のリズムに合わせて太鼓を叩いているイメージなんだけど、僕らはリズム楽器ではなくメロディー楽器だし、それもギターとは違う単音を出す楽器なんですよね。だから、今までの「リズムと言葉」にプラスして、メロディーとハーモニーを作ろうっていう実験は少なからずあったんですよ。

後関好宏
後関好宏

須原:私は、そこに驚きました。お誘いを頂いたとき、「え、ASA-CHANG&巡礼にバイオリンが入るの?」と思って(笑)。もうひとりはサックスが入るっていうし、今までのASA-CANG&巡礼のイメージと違い過ぎるから。

ASA-CHANG:そうだよね(笑)。オーディションを経た自問自答の中で、「バイオリンとか、鳴っていてもいいんじゃないか?」って思ったのかもしれない。ただ、バイオリンとサックスがずっとほしかったわけではないんですよね。音主義ではないというか。巡礼って、もっと抽象表現だから。

―僕は、先ほどASA-CHANGさんがおっしゃった、「もっと楽しいことや明るいことがやりたい」という言葉がポイントのような気がするんですけど、どうですかね?

ASA-CHANG:今までの巡礼って、暗かったと思います?

―そうですね。僕は、『まほう』は以前の作品よりも明るくなっていると思います。今までの作品は、表面的には消し去られていたり、なかったことにされている現実を音楽で浮き彫りにしていた感覚がある。『まほう』は、もっと穏やかで寄り添うような音楽になっていると思いました。

ASA-CHANG:でも、『まほう』の方が「人」っぽくないですか? 今までは夢っぽいというか、悪夢っぽいと思う。

―『まほう』が「人」っぽいとは僕も思います。でも、前の巡礼にあった「悪夢っぽさ」も、人々が目を背けている現実のような気がしたんです。

ASA-CHANG:あぁ、なるほど。たしかにそうかも……ゴミ箱の中に、もっとゴミみたいなものを見る感じというかね(苦笑)。でも、僕はそれを重いとはあまり思えないんですよね。だって、泣かせるだけが感動ではないでしょう? 聴いたらすぐに忘れ去られてしまう音楽もあるけど、僕の音楽は、どうしようもなく人が変わっちゃうような、日常ではありえない空気が作用してほしいという思いがあるんですよ。喜怒哀楽のどこかを刺激するような、「動く音楽」をやりたい。

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リリース情報

ASA-CHANG&巡礼『まほう』
ASA-CHANG&巡礼
『まほう』(CD)

2016年3月2日(水)発売
価格:3,024円(税込)
P-VINE

1. アオイロ賛歌
2. まほう
3. ビンロウと女の子
4. 告白 -Prelude-
5. 告白
6. 2月(まほう ver.)
7. 行間に花ひとつ feat.椎名もた
8. 木琴の唄 -Xylophone-
9. ANIの「エンドレスダンス」体操
10. エンディング(映画『合葬』より)
11. 告白(Cornelius ver.)

イベント情報

『ASA-CHANG&巡礼ワンマンライブ「まほう」』

2016年3月23日(水)OEPN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 ROPPONGI VARIT

『ASA-CHANG&巡礼「まほう」発売記念インストアイベント』

2016年4月16日(土)START 12:00
会場:東京都 タワーレコード新宿店7Fイベントスペース

プロフィール

ASA-CHANG&巡礼
ASA-CHANG&巡礼(あさちゃん あんど じゅんれい)

1997年、ASA-CHANGソロユニットとして始動。そのトライバルかつアブストラクトな独自の波動に満ちた音楽が国内外で評価されると共に、世界各国のメディアにも取り上げられる。また、ミュージックビデオにおけるコンテンポラリーダンサーとの共演が世界的な話題となり、09年に音楽×ダンス公演『JUNRAY DANCE CHANG』を世田谷パブリックシアターにて開催。12年に後関好宏、須原杏をメンバーに迎え、国際的な舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 2012」への参加、アニメ『惡の華』のEDテーマ曲の提供など、既存の音楽の枠に捕らわれない活動を展開している。また、14年9月からライブシリーズ「アウフヘーベン!」を始動、世界的な舞踏家・室伏鴻や映像作家・勅使河原一雅、漫画家・押見修造といったジャンルを横断した作家とのコラボレーションを行い、さらにその活動を進化・深化させている。

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