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自分の想いを吐露するようになったavengers in sci-fiの率直な怒り

自分の想いを吐露するようになったavengers in sci-fiの率直な怒り

avengers in sci-fi『Dune』
インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
撮影:永峰拓也
2016/04/20
  • 83

無数のエフェクターを駆使したサウンドで「ロックの宇宙船」と称され、かつては「西暦3000年の宇宙を舞台にした歌詞」を書いていたavengers in sci-fiだが、約2年ぶりのリリースとなったニューアルバム『Dune』は、1990年代のグランジ要素をサウンドに取り入れ、2016年現在の社会に対する歌詞を書いた作品だ。誰よりも音楽で未来を感じさせてきた彼らは、現代社会をどのように音楽で表現するのか? すべての作詞・作曲を手がけ、バンドの核である木幡太郎に話を聞いた。文明が発展する一方で様々な問題を抱えた現代社会についてから、画一的になってしまった現在の音楽シーンについてまで話は及んだが、「現代なんて昔の小説に書かれたディストピアみたいなもの」と言う彼の視点は、実に正直で興味深いものだった。

世界をハッピーに見せかけようとする言葉にあふれているじゃないですか。

―アルバムのリリースは2年ぶりになりますけど、その間に作品制作に影響を与えた出来事はありました?

木幡:そうですねぇ、ネットサーフィンをするかたわら、リハに入るような生活を送っていたんですけど、やっぱりネットでニュースを読んで反吐が出たり(笑)。

―反吐が出るっていうのは?

木幡:世界をハッピーに見せかけようとする言葉にあふれているじゃないですか。たとえば戦争を紛争と言い換える感じとか。戦争と紛争の違いにはしっかりした定義があるらしいんですけど、紛争という言葉の背景には世界が一応は平和な状態なんだという前提があるというか、世界は戦争状態ではないんだというイメージを植え付けようという意図にも思えますよね。ネット社会の発展やSNSの拡大も、海の向こうと瞬時につながれるみたいなもっともらしい言葉で飾り立てられてますけど、そういうのを見ると反吐が出るというか。

木幡太郎
木幡太郎

―そういう気持ちは曲にも反映されたんでしょうか?

木幡:そうですね。本当に気持ちをそのまま音にするんだったら、これでもヌルいくらいというか。反吐ですからね。さわやかな音楽にはならないと思います。歌詞の面では、もう少しダイレクトに反映されているのかなと思うんですけど。

―いままでもそういう傾向はあったんですか?

木幡:前作の『Unknown Tokyo Blues』とかは、わりとそういう部分が出ていたけど、もうちょっとウォームだったかな。そういう社会に対する反吐みたいなものも踏まえつつ、現代に生きている自分にフォーカスしていた気がします。社会とか海の向こうとかよりは、身近な友人だとか、古い友人だとか、そういうものに対する感情だったというか。今作のほうがポリティカルな要素は増していると思いますね。

―でも、そこまでダイレクトな歌詞ではないですよね。匂わせる言葉はところどころに散りばめられてますけど。

木幡:直接的に伝えるならブログに書けばいいだけなので、それを音楽に落とし込むのは、また違うことというか。

―そういう気持ちで言葉を書いているけど、そのまま伝わらなくてもいい?

木幡:直接的に言ったところで、結局誤解はされるわけじゃないですか。感じ方は人それぞれなので。むしろ少し曖昧で、グレーな部分があるほうが、受け手が判断できる余地が多いと思うし。

―たしかにそうですね。

木幡:気持ちって、そんなに簡単なものじゃなくて、たとえば辛辣な言葉を吐いたとしても、それが愛に基づいて発せられたのか、憎しみに基づいて発せられたのかは、発した本人すらわからないときもあると思うんです。そういう、自分でも名前をつけられないもやもやしたものを吐き出すときは、音楽とか芸術に落とし込んだほうが、当初のフィーリングに近いものになるのかなって。

人間が文明と呼んでいるものは、殺しのために発展してきた。そう考えると恐ろしいですよね。

―「反吐が出る」ほどに強い気持ちがあるなかで、アルバム全体のストーリーとして、何かイメージしていたものはあったんですか?

木幡:いちおう『Dune』というタイトルは、デヴィッド・リンチの黒歴史と言われている映画から来ていて。

―『デューン/砂の惑星』(フランク・ハーバートの小説を原作にした1984年公開の映画)ですか?

木幡:そうですね。でも、特にその物語性が反映されているとかではなくて、単純に「砂の惑星」というイメージが、現代の殺伐としたイメージと重なるという意味で『Dune』という言葉を使っているんです。

―1曲目の“Departure”に「ユーリ聴かせてよ」という歌詞もあったので、僕は勝手に「ユーリ・ガガーリン(世界初の宇宙飛行士)に憧れている若者が人生の葛藤と闘う物語」を想像して、そのサントラみたいに聴いていました。

木幡:ガガーリンのエピソードから拝借していて、「未来はこんなはずじゃなかった」みたいな感覚はあるかもしれないですね。ガガーリンが宇宙に飛び立ったときに、後々そのロケットが核ミサイルに転用されるとか、誰がそこまで考えていたかっていう。

木幡太郎

―歌詞に「核ミサイル」という言葉が入っているのには、そういう理由があったんですね。

木幡:『2001年宇宙の旅』(スタンリー・キューブリック監督による1968年公開の映画)のなかで、人類が道具を発明する瞬間が描かれているんですけど、人が発明したのは最初から殺しの道具だったんですよね。人といっても猿人で、群れ同士の争いのなかで、相手を殺すために動物の骨を利用する。そしてその骨が、後々宇宙船に変わっていくという演出がなされるんです。

―殺しのために道具が生まれて、それが宇宙船に繋がっていく。

木幡:その皮肉というか、絶望感がすごいじゃないですか。人間が文明と呼んでいるものは、殺しのために発展してきた。そう考えると恐ろしいですよね。“Departure”は、そういうことをテーマに書いた曲です。

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リリース情報

avengers in sci-fi『Dune』
avengers in sci-fi
『Dune』(CD)

2016年4月20日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VICL-64565

1. Departure
2. Dune
3. Vapor Trail
4. New Century
5. No Pain, No Youth
6. Still In A Dream (feat. Mai Takahashi)
7. E Z Funk
8. 1994
9. The World Is Mine
10. Stranger

avengers in sci-fi『Dune』
avengers in sci-fi
『Dune』

2016年4月20日(水)発売
価格:3,024円(税込)
VICL-64565

1. Departure
2. Dune
3. Vapor Trail
4. New Century
5. No Pain, No Youth
6. Still In A Dream (feat. Mai Takahashi)
7. E Z Funk
8. 1994
9. The World Is Mine
10. Stranger

イベント情報

『avengers in sci-fi “Dune Walk Tour”』

2016年6月4日(土)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole

2016年6月11日(土)
会場:宮城県 仙台 enn 2nd

2016年6月12日(日)
会場:新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE

2016年6月19日(日)
会場:香川県 高松 MONSTER

2016年6月24日(金)
会場:福岡県 Queblick

2016年6月26日(日)
会場:広島県 4.14

2016年7月2日(土)
会場:愛知県 名古屋 APOLLO BASE

2016年7月3日(日)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2016年7月10日(日)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

『ツタロックスペシャルライブ“3MAN!!”Vol.2』
2016年5月19日(木)

会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST
出演:
avengers in sci-fi
04 Limited Sazabys
9mm Parabellum Bullet

『Shimokitazawa SOUND CRUISING 2016』

2016年5月28日(土)
会場:東京都 下北沢 GARDEN、SHELTER、ERA、THREE、BASEMENT BAR、ReG、ReG Cafe、MOSAiC、CAVE-BE、WAVER、Daisy Bar、Laguna、風知空知、Mona Records、新代田 FEVER

『FUJI ROCK FESTIVAL '16』
2016年7月23日(土)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場

プロフィール

avengers in sci-fi
avengers in sci-fi(あゔぇんじゃーず いん さいふぁい)

ギター、ベース、ドラムスという最小限の3ピース編成でありながら、シンセサイザー/エフェクト類を駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせるavengers in sci-fi。“ロックの宇宙船”とも称されるこのバンドは、高校の同級生であった木幡と稲見によって02年にスタート、大学で長谷川と出会い現在の編成に。メロディック・パンクのカヴァーに始まりテクノ/ダンス・ミュージックへの傾倒を経て、数々のエフェクターを導入し独自の近未来的ロック・サウンドを展開。09年12月にメジャー・デビュー。それまでのロック、パンク、テクノ、エレクトロに加え、クラシック、オペラ、ゴスペルの要素も自由に操り更にパワーアップ。その高い音楽的IQが評価され、同年には木村カエラのシングル『BANZAI』をプロデュースや、CM曲の書き下ろしも手掛けている。2014年6月に5枚目のフルアルバム「Unknown Tokyo Blues」をリリース。2015年2月より新たな主催イベント”Unknown Tokyo”をスタートさせた。2016年4月20日に6枚目のフルアルバム「Dune」をリリースする。

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