インタビュー

向井秀徳が語る、音楽に向かう原動力「私は自意識恥野郎ですよ」

向井秀徳が語る、音楽に向かう原動力「私は自意識恥野郎ですよ」

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人 編集:山元翔一

いい季節に野音でやるっていうのは、すごく気持ちいいですし、観る側でも楽しいわけです。

―たしかに、校歌を作る機会はそうそうないですよね(笑)。

向井:結局歌詞も含めて完全にイメージで作ったんですけど、最終的にはすごく校歌っぽくなりました。レコーディングも、男声コーラス隊の人たちに来てもらって、みんなで合唱してもらいましたし、ピアノもまさに音楽の先生みたいな、律儀なピアノを弾いていただいて、「まさに校歌だな」と。そういうのは楽しいですね。

―そういった新鮮な経験が、自身のプロジェクトに還元されることもあるでしょうしね。校歌はなかなか難しいかもしれないですけど(笑)。

向井:ただその分、映画音楽は付きっきりで集中しないといけないんですよね。合間を縫ってZAZEN BOYSの作品制作もやれればいいんだけど、制作するときは、脳の普段使わないところを使わないといけないので、他のことができなくなるんです。そうなると、ZAZEN BOYSの作品制作に向き合う時間がなくなっていく。

向井秀徳

―スタジオでの「MATSURI SESSON」がご無沙汰な背景にはそういったこともあると。5月6日には、日比谷野外音楽堂(以下、野音)で『THE MATSURI SESSION』が開催されますが、「MATSURI STUDIOファミリー総出演」といった感じのラインナップになっていますね。

ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS

向井:6年前の10月にも野音で『THE MATSURI SESSION』をやっていて、そのときはZAZEN BOYS、KIMONOS、向井秀徳アコースティック&エレクトリックの3組だったんです。「MATSURI STUDIO」の地下室から、野外のステージに飛び出していくというイメージでした。

野音はワンマン、イベント含め、何度も演奏を行っているんですけど、やはりすごく特別な場所なんです。都心の官庁街のど真ん中に、コンサート会場があるという、すごく特殊なシチュエーションであり、そこでは数々の伝説といわれるライブが行われてきた。そういった意味でも、スペシャルな場所だと思っています。それに、いい季節に野音でやるっていうのは、すごく気持ちいいですし、観る側でも楽しいわけです。

―よくわかります。

向井:なので、毎年いい季節に行えればいいなって思うんですけど、みんな野音でやりたがるから、ブッキングするのは困難なわけです。野音は抽選制なので、応募して、くじ引きをするわけですけど、そのくじがなかなか当たらない。そういったなかで、ときどきまぐれ当たりをするときがあって、2011年もそうだったし、今年の5月もそう。「まぐれ当たりきたか」と。

売店のおばちゃんにはビールを100ケースくらい追加しておいてほしいね(笑)。

―そこでZAZEN BOYSのワンマンをやろうとはならなかったんですね。

向井:当然それも考えられるんですけど、せっかくの野音なので、みんな集まろうという気持ちになりまして。「MATSURI STUDIO」の地下室でずっとうごめいているよりは、「ときにはいい季節に公園に遊びに行こうよ」「みんなで宴会だ」ということになったわけです。

しかも、前回は3組でしたけど、仲間たちがちょっと増えまして……といっても、人数は変わらないんだけど(笑)、それぞれ活動の幅がジワジワ広がって、吉田一郎はソロユニットで初参加すると。

吉田一郎のソロユニット・吉田一郎不可触世界のライブ映像

向井:まさに10年前、吉田一郎がZAZEN BOYSに加入して、初めてのライブが野音のワンマンだったんです。そして、今回が吉田一郎不可触世界としての野音での初ライブになるという。

―歴史を感じさせますね。

向井:あとLEO今井は前回KIMONOSで出演していますけど、今回は彼のソロバンドにも参加してもらうと。で、すでに出演順も発表されているんですけど、前回からコンセプトのようになっているのが、イベントが終わりに向かうに連れて、ステージ上からだんだんと人が減っていくっていうね。

―吉田一郎不可触世界、ZAZEN BOYS、LEO IMAI、KIMONOS、向井秀徳アコースティック&エレクトリックの出演で、最後は向井さん一人がステージに残る。

向井:前回も最後は私のソロだったんですけど、夕暮れが近づくとともに、だんだんステージ上が物悲しくなっていくんです。「夕暮れ感」といいますか、それを演出したかった。

―あのだんだんと日が落ちていく感じも野音ならではですもんね。

向井:趣がありますよね。今回最初に出る吉田一郎不可触世界も一人なんですけど、彼はなんと言いましょうか……一言で言うと、前座ですね。最終的に私のソロになるっていうのは変わらないわけです。まあ、ステージ上から人が減っていくに連れて、観客席も人が減っていくと、本気で寂しい状況になるので、それはやめていただきたいですね。

向井秀徳

―観客席はだんだん酔っ払って、いい感じになってるでしょうね。

向井:野音にはおばちゃんが一人でやっている売店があって、いつも「ビールや缶チューハイを多めに補充しておいてください」とリクエストしているんです。会場の雰囲気も、お酒を飲みたくなる雰囲気なんだと思いますね。

6年前とほぼ同じ顔ぶれですけど、これだけ一斉に並んでみると、「MATSURI STUDIOでなにやってんの?」って、よくわかると思います。それぞれバラバラのスタイルではありますけど、みんなの奥底に共通している、ある種のつながりが感じられるんではないかな。

―先ほどの「毒個性」のお話もありましたけど、それぞれの自意識が、それぞれの形で野音という場に飛び出してくるというか。

向井:そうね。野音というシチュエーションで、季節的にも最高だし、売店のおばちゃんにはビールを100ケースくらい追加しておいてほしいね(笑)。

向井秀徳

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イベント情報

『THE MATSURI SESSION』

2017年5月6日(土)
会場:東京都 日比谷野外大音楽堂
出演:
吉田一郎不可触世界
ZAZEN BOYS
LEO IMAI(LEO今井、岡村夏彦、シゲクニ、白根賢一)
KIMONOS
向井秀徳アコースティック&エレクトリック
料金:前売4,800円 当日5,300円

プロフィール

向井秀徳(むかい しゅうとく)

1973年生まれ、佐賀県出身。1995年、NUMBER GIRLを結成。1999年、『透明少女』でメジャー・デビュー。2002年、NUMBER GIRL解散後にZAZEN BOYSを結成。自身の持つスタジオ「MATSURI STUDIO」を拠点に、国内外で精力的にライブを行い、現在まで5枚のアルバムをリリースしている。また、向井秀徳アコースティック&エレクトリックとしても活動中。2009年、映画『少年メリケンサック』の音楽制作を手がけ、第33回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。2010年、LEO今井と共にKIMONOSを結成。2012年、ZAZEN BOYSとして、5thアルバム『すとーりーず』リリース。今作品は、ミュージック・マガジン『ベストアルバム2012 ロック(日本)部門』にて1位に選ばれた。 著書に『厚岸のおかず』がある。

関連チケット情報

2017年5月6日(土)
THE MATSURI SESSION
会場:日比谷野外大音楽堂(東京都)

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