「キメ」をエンターテイメント化した唯一無二のライブバンド

「日本一のロックバンドは?」と聞かれると返事に困るが、「日本一のライブバンドは?」と聞かれて、僕の頭に真っ先に浮かぶのはZAZEN BOYSの名前だ。四人のメンバーの卓越したスキルと、息の合った呼吸によって生み出されるバンドサウンドは非常に高い次元の音楽的興奮を与えてくれると同時に、それを独自のエンターテイメントにまで昇華しているという点において、間違いなく彼らはライブバンドとして唯一無二である。中でも、「キメ」をエンターテイメント化したバンドというのは、世界中を見渡しても彼らぐらいだろう。

撮影:菊池茂夫
撮影:菊池茂夫

思えば、NUMBER GIRLというバンドは日本のロックにキメのかっこよさを知らしめたバンドだった。それまでのオルタナティブロックというのは歪んだギターが主役だったのに対し、ギターをあまり歪ませず、乾いたサウンドにすることでキメの鋭さを増し、単なる爆音以上のダイナミズムが生まれることを証明して見せたのだ。彼らのブレイク以降、日本のロックはキメが多用されることになるわけだが、徐々にそれは過剰になっていき、特に歌ものであるにもかかわらず無闇やたらとキメが入ってくるようなバンドの曲は、聴きにくさを感じることもしばしば。「日本のロックがガラパゴス化している」という言説は、こういった状況を指していることが多いように思う。

そこで、ZAZEN BOYSだ。屈強なプレイヤーたちによってNUMBER GIRL以上にキメの鋭さやバラエティーを増していったZAZEN BOYSは、ライブにおいては向井をコンダクターとして、インプロビゼーションで自由自在にキメを繰り出すようになっていった。さらには、そこに向井のコミカルな動きや、メンバーとのユーモラスな掛け合いが加わることによって、「キメ」はエンターテイメント化していったのだ。言うまでもなく、音楽的に見てものすごくレベルの高いことをやっているわけだが、彼らのライブにおいてそれはもはや前提になっている。これは落語好きの向井らしい部分とも言え(『すとーりーず』のジャケットは、向井の手による立川志らくの高座の姿のイラスト)、その楽曲(落語で言えば「噺」)を、ただ演奏する(話す)のではなく、どう演奏すればその楽曲の魅力が一番際立つのかということを、しっかり考えているということだろう。派手なステージングをするでもなく、コール&レスポンスを求めるでもなく、それでも十分に音楽的でありエンターテイメントでもあるZAZEN BOYSのライブというのは、どこまでも「粋」である。

撮影:菊池茂夫
撮影:菊池茂夫

この日は『すとーりーず』のリリースに伴うツアーの2本目で、新作からの曲はシンプルに演奏されることが多かったが、おそらくツアーの後半、12月の渋谷AXや、ファイナルの名古屋CLUB QUATTROでは、演奏のされ方も変わっていることだろう。これまでの楽曲以上に構築的で、遊びを入れるのが難しそうな新作からの楽曲をどう料理していくのか、お手並み拝見と言ったところだ。

リリース情報
ZAZEN BOYS
『すとーりーず』(アナログ12inch)

2012年9月28日発売
価格:2,500円(税込)

[SIDE-A]
1. サイボーグのオバケ
2. ポテトサラダ
3. はあとぶれいく
4. 破裂音の朝
5. 電球
6. 気がつけばミッドナイト
[SIDE-B]
1. 暗黒屋
2. サンドペーパーざらざら
3. 泥沼
4. すとーりーず
5. 天狗
[MP3 Download]
1. 無口なガール

『すとーりーず』の配信版(MP3)は

プロフィール
ZAZEN BOYS

メンバーは、向井秀徳(Vo,G,Key)、松下敦(Dr)、吉田一郎(B)、吉兼聡(G)。元NUMBER GIRLの向井が中心となり、2003年結成。MATSURI STUDIOを拠点に音源を発表、国内外で精力的にライブを行っている。



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