世界が驚いた。テイラー・スウィフト、優等生の自分との決別

優等生テイラー・スウィフトが、メディアから姿を消した。

2016年夏以降、テイラー・スウィフトのメディア露出がほぼ皆無となっていたことを、気づいていただろうか? プライベートはほとんど明かされず、ソーシャルメディアからの発信も最小限。

豪華な顔ぶれのセレブたちが集う、彼女主催の恒例となった独立記念日(7月4日)のパーティーも2017年は合同写真が公表されなかったし、新恋人と噂される英国人俳優ジョー・アルウィンとの交際も一切報告なし。「トランプ政権に対する批判すらないのはオカシイのでは?」と逆に批判を受けてしまったほどだ。

そんなテイラー・スウィフトが通算6作目となるニューアルバム『reputation』を発表した。約3年ぶりとなるこのアルバムが『reputation』=「評判」と冠されたのには、カニエ・ウェストやケイティ・ペリーとの確執や衝突など、彼女を取り巻く状況が深く関わっていると考えるのは短絡的すぎる見方ではないだろう。

ここでは詳しく触れないが、カニエからは彼の楽曲“Famous”中で<俺があのビッチを有名にしてやった>とラップで揶揄され、ケイティとはバックダンサーを巡って衝突。さらにリアーナがボーカル担当した元恋人カルヴィン・ハリスの楽曲“This Is What You Came For”でゴーストライターを務めていたことを、別離後に暴露したのも「評判」をさらに悪化させた。

自らのイメージを覆す。なぜテイラーは過去と決別した?

わずか数年前までは誰からも愛される優等生だったテイラー。ところが、それらの事件によって「評判はすっかり地に落ちて」……というのは“Delicate”という本作収録曲の一節だが、いまやバッシングの対象となり「評判」も乱調気味。そんな彼女が久々に舞い戻り沈黙を破ったのが、このアルバムだ。

テイラー・スウィフト『reputation』ジャケット
テイラー・スウィフト『reputation』ジャケット(Amazonで見る

しかし「まさか、ここまで?!」と、驚いたリスナーは多いに違いない。挑発的な態度を取って優等生の自分と決別、これまでのイメージをことごとく覆す。オープニングナンバーの“…Ready For It?”からして挑戦的だが、エド・シーランやFUTUREをゲストに迎えた2曲目の“End Game”で早速<Big reputation>と繰り返し、アルバムのテーマを掲示。

先行シングルの“Look What You Made Me Do”に至っては<昔のテイラーはいま電話に出られません なぜなら彼女は死んだから>というショッキングな一節でトドメを刺している。MVでは、SNSで「蛇」呼ばわりされたのを逆手に取って、これでもかというほど大量の蛇をはべらせ復讐劇を演じきる。

そんな彼女の思いは、アルバムのブックレットの冒頭に「私が人々について学んだこと」と題された、以下のような序文(一部抜粋)に託されている。

誰かのことを分かっていると思っていても、実際それは、その人がこちらに見せようと思っている姿だということ。自分の友達のことは、一定の観点からは理解しているけれど、その人の恋人が知っているようには知らない。それはちょうど恋人が、友達とは同じようにはその人を知ることがないのと同じ。(中略)ある人に関する噂を聞いて、それを本当だと信じてしまうことがあるかもしれない。いつかその人に直接会ったりしたら、根拠のないゴシップを信じていた自分が愚かだったと感じるかもしれない。

さらに彼女はこう続ける。

人が写真をネットに投稿するのは、自分のことを見知らぬ人にどう思ってもらいたいか、キュレーションするため、とはいうものの、目が覚めて鏡を覗けば、そこに写っているのはシワや傷跡やシミのある顔で、嫌気が差してしまう。(中略)問題なのは、この世の全ての人や物を、私たちは単純化・一般化せずにはいられないにもかかわらず、人間は本来、単純化するのが不可能な存在だということ。私たちは、単なる善人でもなければ、単なる悪人でもない。

SNS時代の送り手と受け手の間で歪曲される、イメージや人物像。その危うさや脆さを浮き彫りにするためにも、さまざまなテイラー・スウィフトを演じ分けたのが、このアルバムだろう。これまでの「優等生テイラー」の殻を脱ぎ捨て、あえて、ありのままの自分、人間臭いイメージを前面に押し出したのは、身を以てそれを体現しようという思いからかもしれない。

勿論これまで通り、恋に恋する乙女なテイラーや、終わった恋を虚しく回想するテイラー節も健在だ。「このアルバムが世に出たら、ゴシップ系ブログが歌詞をくまなく調べ、それぞれの曲に当てはめられると思う男性を探し回ることでしょう。まるで音楽を生み出すインスピレーションが、親子鑑定検査と同じくらい、簡潔明瞭なものであるかのように」とも予言。

実際、早くも“Getaway Car”がカルヴィン・ハリスとの破局についてじゃないかと噂になっているが、そんな詮索よりも、完成した作品をしっかり聴いて欲しいというのが彼女の本望だろう。

ネットで拡散した「評判」が、ネットで潰される。そんな彼女の体験は、セレブゆえの有名税であるのは確かだが、意外にも誰もが直面している社会問題であるのも事実。SNSで陰口を叩かれたり、匿名で批判されたりと、イジメと変わらないのが現状だ。『reputation』でテイラーは自身の「評判」をテーマに採りながら、実は多くの人が共感できる普遍的なテーマを描いているのだ。

リリース情報
テイラー・スウィフト
『reputation ジャパン・スペシャル・エディション』(CD+DVD)

2017年11月10日(金)発売
価格:3,456円(税込)
品番:POCS-24906

[CD]
1. …Ready For It?
2. End Game[ft. Ed Sheeran and Future]
3. I Did Something Bad
4. Don't Blame Me
5. Delicate
6. Look What You Made Me Do
7. So It Goes…
8. Gorgeous
9. Getaway Car
10. King of My Heart
11. Dancing With Our Hands Tied
12. Dress
13. This Is Why We Can't Have Nice Things
14. Call It What You Want
15. New Year's Day
[DVD]
“Look What You Made Me Do”MV
“Look What You Made Me Do”リリック・ビデオ
ミュージック・ビデオのメイキング

テイラー・スウィフト
『reputation』(CD)

2017年11月10日(金)発売
価格:2,700円(税込)
品番:POCS-24013

1. …Ready For It?
2. End Game[ft. Ed Sheeran and Future]
3. I Did Something Bad
4. Don't Blame Me
5. Delicate
6. Look What You Made Me Do
7. So It Goes…
8. Gorgeous
9. Getaway Car
10. King of My Heart
11. Dancing With Our Hands Tied
12. Dress
13. This Is Why We Can't Have Nice Things
14. Call It What You Want
15. New Year's Day

プロフィール
テイラー・スウィフト
テイラー・スウィフト

1989年12月13日生まれ、27歳。グラミー賞を7度受賞、また、グラミー賞史上グラミー賞で最も栄誉のある「年間最優秀アルバム賞」を最年少で受賞し、「年間最優秀アルバム賞」を2度受賞歴のあるテイラーは、女性ソロアーティストとしては史上初。過去の作品の総売上枚数は4,000万枚以上、そして楽曲ダウンロード数は1.3億を超えている。2014年に発表された5作目の『1989』は、アメリカで初週130万枚を売り上げ、2002年以来の初週最多売上枚数を記録し、2010年リリースの『スピーク・ナウ』、2012年リリースの『レッド』に続いて3作連続で初週売上100万枚を超えるという、アーティストとして史上初の快挙を成し遂げている。更に、過去作『フィアレス』、『スピーク・ナウ』、『レッド』と『1989』の4作連続で6週以上全米1位に送り込むという、ビートルズ以来の偉業も達成している(女性アーティストとしては初)。その他、米誌『Time』は「最も影響のある世界の100人」の一人にテイラーの名前を挙げ、また、「2014年のパーソン・オブ・ザ・イヤー」の8名の中にも選出している。2017年8月に急遽リリースされた「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ~私にこんなマネ、させるなんて」は、全米ビルボード3週連続、全英2週連続1位を獲得。6作目となる最新アルバム『レピュテーション』は111の国と地域においてiTunesで1位を獲得し、全英では3作品連続1位、そして全米においては、5作品連続初登場1位を獲得。しかも、全米において発売からたった4日間での売上枚数105万枚にて、今年最も売れたアルバムに。また、同作は初週で122万売上げ、テイラーにとってアルバム発売初週に100万枚を超えるのは4作目となり、ニールセン・ミュージック史上初の快挙となった。



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