障がい者プロレス団体の記録映画、NZ出身監督が5年間かけて制作

ドキュメンタリー映画『Doglegs』が、2016年1月9日から東京・ポレポレ東中野、下北沢トリウッドで公開される。

『Doglegs』は、約25年の歴史を持つ障がい者プロレス団体「ドッグレッグス」と、同団体の選手たちを捉えたドキュメンタリー映画。ドッグレッグスでは、障がい者と健常者の試合をはじめ、知的障がい者と身体障がい者、女装癖のあるアルコール中毒者とその息子など、様々な組み合わせによる試合が行われている。

出演者は、脳性麻痺を抱えながら約20年間にわたって選手として活動してきたサンボ慎太郎をはじめ、「20年間障がい者を打ちのめし続けてきた健常者」と称される同団体代表のアンチテーゼ北島、アルコール中毒で肉体にほぼ全面的な麻痺を持つ女装癖のレスラー「愛人」とその妻、鬱病の介護者・中嶋有木らが名を連ねている。らが名を連ねている。

約5年間をかけて同作を完成させたのは、ニュージーランドで生まれ育ち、その後18年間を日本で過ごしたヒース・カズンズ。同作が初の長編ドキュメンタリー映画作品となるカズンズは、「『障害』とは?それを決めるのは誰なのか?生きること、愛すること、真の自由であることの意味とは?これらの問いが、ご覧になった皆さんに残ることを願っています」とコメントしている。

※記事掲載時から一部表現を変更しました。(2015/11/12)

ヒース・カズンズのコメント

私が日本にいた頃、海外からの仕事の依頼といえば「Crazy Japan(風変わりな日本)」を描くものばかりでした。
秋葉原のコスプレ・耳かきや添い寝のサービス・メイドカフェや、古式泳法など、日本のいわゆる“変わったところ”だけを取り上げ、これが日本だと伝える海外メディアにうんざりしていました。
そんな時に、ジャーナリストの友人の紹介で、障害者プロレス団体「ドッグレッグス」の存在を知りました。
“障害者”が“プロレス”をやる?
話を聞きながらも、「ドッグレッグス」とはどういうものなのか、それを見て何を感じるのか、想像がつきませんでした。
しかし同時に、この障害者プロレスだけは、これまでのように部分的・表面的に扱われてはいけない。もし扱うのであれば長編ドキュメンタリーでしか表現できないものになるだろうと感じていました。
そして、私は2010年5月に初めて「ドッグレッグス」を観戦し、以降通い続けることになります。
そこには、重度障害者で自分の力でリングに入れず、転がされてリングインする選手がいたり、聾唖vs盲目、身体障害者vs精神障害者、障害者vs介護士といった対戦があり、重度障害を持ち、女装癖のあるアル中患者の父と、頑健な妻と若い息子との試合さえありました。
ショックを受けました。
自分の中に次から次へと沸き起こるさまざまな気持ちをどう受け止めればいいのか、どう捉えればいいのか、ただ混乱しました。
しかし会場は、サポーターや選手の家族たちで満員で、障害のあるなしに関わらず、共に笑い、熱い声援を送っていました。
そこは、温かみやユーモアがあふれる、「障害」も含んだ「違い」や「個性」を称える祝祭のようでした。
私は、興奮・混乱・喜び・励ましたい気持ち・批判など、永遠と続く思考と感情の迷路をさまよい、脳がフル稼働し心が動かされ、時に頭をレンガで殴られたような衝撃を受けました。
その過程は、自分の偏見を鏡で見せられ、自分がそれまでに知らなかった先入観に出会う機会でもあり、それが試合を見ている間だけでなく、その後もずっと続いていくのです。
「ドッグレッグス」の試合は、障害者を“食い物にしている”ようにもとれるでしょう。でもそれは、「彼らのような人々は守られるべきだ」という我々の“見せかけの優しさ”から生まれているのかもしれません。
私にはレスラーが、「自分たちを見ろ!」と叫んでいるようにも見えました。
そして、「お前自身を見ろ!」とも。
障害者のファイター達が、戦いを通して、問いかけます。
「障害」とは?それを決めるのは誰なのか?
生きること、愛すること、真の自由であることの意味とは?
これらの問いが、ご覧になった皆さんに残ることを願っています。

作品情報

『Doglegs』

2016年1月9日(土)からポレポレ東中野、下北沢トリウッドで公開
監督・撮影・編集:ヒース・カズンズ
出演:
サンボ慎太郎
アンチテーゼ北島
愛人
ミセス愛人
中嶋有木
「ドッグレッグス」レスラー
ほか
配給:トリウッド、ポレポレ東中野

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